負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

開放された奴隷は自由を捨ててふたたび農園に帰ることがある

2004年12月18日 | 詞花日暦
女性は男性へ向けて性急な異議を唱え、
自分達は自由で男性と平等だと主張する
――P・レアージュ(作家)

 ポーリーヌ・レアージュという女性名は、フランスのエロチシズム文学『O嬢の物語』の作者として有名。実際はフランスの高名な男性批評家の仮名である。わざわざ女性名を選んだのには、それなりの理由があった。
 レアージュの本の序文にこんな逸話がある。さる農園主が奴隷達を開放した。が、やがて彼らは農園に戻り、奴隷の方がいいと告げる。平等と不平等はけっして単純に割り切れない相関関係にある、そうレアージュは語ろうとした。とりわけ男女関係の場合において。
 一般的に愚かな男は力を誇示して、女性を支配しがち。たしかに肉体的には主人であるが、それは同伴者たる女が望むかぎりという条件付である。実際は、ひざまずき、哀願する女が命令を与え、「女の支配力は表向きの力の失墜と関数関係をなして増大する」とレアージュはいう。いずれ女が支配者なんだから、平等などと主張しないでおきましょうよというのだ。さて女性名の影に隠れた男の作者は、ふたたび舞いもどってきた奴隷のように、女が男に隷属するのも悪くないんだよといいたいのだろうか。ジェンダーの平等はそれほど単純に割り切れない。