今、出版準備を進めている高校介護要員養成過程の教科書の中に、1週間に3~4回、30分ほどの散歩をすると、体の骨が鍛えられ、骨粗鬆症が防げるとある。つまり、体は使わないと衰えるのだ。
また、カロリンスカ医学研究所実施の調査によると、スウェーデンでずっと運動をしてきた70~80歳の人たちの平均体力値は、18~19歳並みであったとも書いてある(体力値は酸素吸入力を測ることにより測定される)。調査時、大多数のこれらの高齢者(?)はオリエンテーリングの競技に参加していたらしい。そんなこと、今更いわれても遅いよね、まったく。しかし、できる範囲で何とかしようと思うのも人情だろう。
ジムに通う
ふだん、机に向かっていることが多いので、週に2回はジムに通う。スウェーデンのジムには、機械や道具類をウンコラと押し上げたり引いたりするのがあり、それは通常、「ジム(gym)」とよばれている。多分日本でも、同じようなものだろう。それと、もう一つ「ユンパ(jympa)」という、体操とエアロビの中間のようなものがあり、参加者が多い。
体を動かすのは面倒だ。しかし、覚悟してやってしまうと、なかなか楽しい。スピーカーから流れる音楽に合わせて体を動かすのはとくに楽しい。ユンパを指導するインストラクターが若いと、流れる音楽もエネルギーに満ちており、ラップやパンク調が多い。ところが中年の男性インストラクターだと、「♫お尻をたたくぅ~♪、♫お尻をたたくぅ~♪」なんて歌詞に合わせて、本当にぽんぽんとお尻を叩く。常識ではそんなこと、あほらしくてやってられないと思うのがふつうであろうが、ユンパでは違う。誰もが子どもにかえって無邪気にお尻をぽんぽんやっている。
金曜日ユンパ:真ん中、右よりの赤い女性がインストラクター(撮影:Kjell Lindqvist)
スウェーデンと日本の”ジム仲間”
今のジムに通い始めて4~5年は経っている。しかし、そこで得た挨拶の ”hej” 以上の言葉を親しく交わす人は、わずか数人。その他、目があうとにっこりし合う人が10人くらいあるだろうか。その他の殆どは、お互いに知らん顔だ。ジムでも誰もがひとりで黙々とやっているので、とても静かだ。もうちょっと何かあってもいいじゃん、と時々思う。
日本では数回、ある区営のジムに誘われていったことがある。エアロビだったが、最初から顔を見て「こんにちわ~」と多くの方から親しく挨拶された。この次は何を聞かれるかが、ちょっと心配になるくらい親しげであった。練習場は狭く、多くの方がインストラクターに合わせて、寸分の違いなく動作を合わせられる。わたしは初めてで、手足を動かす順序も、もちろん初めて。おまけに前に膝を痛めて手術しているので、あまり無理ができない。全然ついていけないので、すごく目立つ。かなり窮屈に感じた。
一方、スウェーデンでは、各人かなりばらばらで、けっこう好きにやっている。疲れたらマット(これは腹筋運動に使用される)に寝そべったまま一息つく。足などが痛い人は適当に自分に合った動作をやっている。何をやっても誰も気にしないので、気楽だ。
とにかく、スウェーデンと日本のジム文化は両極端なので、同じジムに通う日本人のSさんと、「ちょうど、中間がいいのにね」と言い合ったことだ。
モロッコはどうか
かなり前、モロッコのアガジールという、海と砂漠以外になにもない観光地にいったことがある、観光地といっても、多くのヨーロッパからのツーリストは、水と太陽さえあればOKなのだ。
泊まったホテルの掲示板に、エアロビがあると書いてあったので、喜んで出かけていった。ホテルの地下にある広い場所だが、もう、静か。2分前になっても誰も来ない。なんだか悪い予感がすると思っていたら、果たして時間から1分過ぎに、黒い髪を豊かにたらし、大きな目を輝かせた女性がやってきた。インストラクターだ。黒いタイツを身に着けていて、格好良い。
そして、彼女とわたしの二人っきりの、「エアロビ」が始まった。部屋の壁は鏡張りで、壁際にバレーの練習場のように手すりというか、バーがついている。インストラクターはそのバーを握って、「ア~ン、ドゥ、トロワ~」の掛け声とともに、足を前後に振りはじめ、私にもやれという。えっ、これがエアロビ?といっても、そこから逃げだす勇気もなく、仕方なく30分間、彼女と共に「ア~ン、ドゥ、トロワ~」を何度も繰り返すはめとなった。
エアロビといっても、ご存知、イングリッド・バーグマンと、ハンフリー・ボガード主演の名画「カサブランカ」の時代そのもののようだ。映画は1942年に公開されたが、その時代のまま、ずっとストップしたままのようだった。フランス語を使うのもフランス領だった名残だろうか。ちなみに映画の舞台になったカサブランカは、わたしのいたアガジールからそんなに遠くはない。
とにかく、モロッコ流エアロビには一回でへきえきして、二度といかなかったが、ある日、プール際で本を読んでいたら、くだんの彼女がわたしを見つけて呼びに来るではないか!もちろん、行かなかったが、それからはホテルでは彼女に見つからないように、こそこそとしなければならなくなった。
という、わたしのジム文化の体験比較でした。
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