ぼちぼち スウェーデン

スウェーデンで見たこと、聞いたこと、考えたことを、同時代に生きるみなさまとシェアーを!

森で「マツタケ」を採る

2010-10-11 | 人々のくらし

キノコのシーズンは、年によって異なるが、だいたい7月から始まる。週末をまって人々はゴム長を履き、かごをかかえて森に出かける。スウェーデンでは古くから「アレマンスレッテン」(allemansrätten. 自然享受権)という慣習法があるので、誰でも自由に森に入り、キノコや木の実を採集できる。 

この慣習法は、土地の所有者に損害を与えないという前提のうえで、だれもが他人の土地への 立ち入りや、自然環境の享受を認める権利を認めるという素晴らしい法だ。もともと、土地はみんなのものという考えが根底にある。

なにしろ、スウェーデンは森と湖の国なので、遠くに出かけなくても、いとも簡単にキノコ狩りができる。

 

  スウェーデン人の「マツタケ」

なかでも、スウェーデン人が大好きなのはカンタレーレ(日本名
アンズタケ)。まず、日本のマツタケ並みである。

  
       (撮影 Wikidedista:Dezidor)


このキノコは特徴がはっきりして、ほかのとは間違えないので、キノコ狩りの人気NO. 1だ。おかげで都市近辺だと、このキノコを見付けるのはかなり難しい。

   

シーズンになると、市場でもヤマのように売られている。この写真はストックホルムのコンサートホール前、ヒョートリエット(干し草広場)で撮った。

 

  ヨーロッパの「マツタケ」はこれ

つぎの横綱級は、カールヨーワン(
ヤマドリタケ)。このキノコはイタリアではポルチーニと呼ばれ人気は絶大だ。イタリアだけかと思っていたら、フランスやポルトガルでもシーズンになると、レストランで特別メニューが出るのを知った。多分、他のヨーロッパ諸国でも同じかもしれない。

  撮影 Strobilomyces/Wikipedia


小さいうちはそのまま生で食する。香りがよく、美味なことこの上もない。日本式に炭火で焼いても美味しいだろう。しかし、ムシがつきやすいのが難点。このキノコは種類が沢山あるので、色々と見つけるのが楽しい(下の写真の緑色の楕円形のは蚊よけの塗り薬)。

   
  

アンズタケしか採らないスウェーデン人が多いので、人が通った後に行っても、このキノコを見付けるチャンスは大きい。いつか、近所の森でいやになるほど採れた話をローマでしたら、大いに羨ましがられた。

その時は、本当にいやになるほど沢山採れたので、それから何年も森に行かなかった。森に入り、 キノコがありそうな方向を定め、探しながら歩くのが楽しみのひとつなので、ヤマほどあると見付ける楽しみがなくなる。な~んて贅沢な、といわれそうだけど、ホントです。

 

   毒キノコもある

森に一歩入ると、色々なキノコが沢山あるので、外国からの移住民にとっても大きな楽しみとなる。

たいていのキノコは美味しそうだし、食用と類似の毒キノコも多い。毎年、間違って食べて死ぬ人がでる。いつだったか、ギリシャの家族が毒キノコをたべ、子ども2人が死亡したことがある。

毒は肝臓や腎臓などに回って症状が出るのに時間がかかるので、分かった段階では治療法がなく、手遅れになる。

かなり前だが、日本人のグループが「煮て紫色に変色しないのは大丈夫」とばかりに、すき焼きに入れたそうな。でも、食べているうちに舌がしびれだしたので、全員で病院に駆け込み、大事にいたることは なかったと聞いた。

かなり前のことなで、忘れてしまっていたが、じつはわたしも似たような経験をしている。ある日、何人かの
日本人の友人と、近所の森にキノコ採りに出かけた。数時間ほどで、2~3個の大きな紙袋がいっぱいになり、 
大満足で家に帰る途中、森の入口でひとりのスウェーデン人男性から声をかけられた。

「森で何をしていたの」「ふ~ん、キノコ採り?」「ちょっと見せなさい」と、彼はわたしたちの紙袋をひったくるように手に取った。そして、キノコをひとつづづ調べだしたのだ。

「これはよし」「これは駄目」。せっかく採ったキノコを次々に捨てられて、わたしたちは腹をたてて抗議したけど、彼は聞く耳持たずで、ぽいぽいと捨てていく。そして、最後に残ったのは僅かに数個のみとなった。
成り行きに唖然としているわたしたちに、彼はキノコは毒性のものもあることを教えてくれた。
もし、その彼に出会わなかったら、わたしたちも救急病院に駆け込むか、今頃お墓で眠っていることになっていた。

くわばら、くわばら。そんなことがあるので、用心深いスウェーデン人たちは安全なアンズタケだけをたべるのだろう。

   

このベニテングダケは、スウェーデンの作家エルサ・ベスコウの童話の挿絵に出てくる、よく知られている毒キノコの一種。毒性はそれほど強くなく、幻覚を求めてバイキングたちがこれを食べたという(?)。試してみる勇気はないが・・。

  幻のマツタケはどこに?

日本のキノコの横綱マツタケが、スウェーデンで発見されて大騒ぎになったことがある。北の方だったが、たくさん採れるので、日本から買い付けの人がやってきた。テレビで見たが、純京都弁を話す人で、なんとなしに京都の老舗料亭を連想してしまった。

キノコ分布図をみると、ストックホルムにもあることになっている。でも、もしあっても、こちとらにはマツタケとは分からないだろう。日本の店先でみるのと、森で見付けるのとは違うから。それに、独特のマツタケの匂いもうすいと聞いている。なんとも残念なことである。


  森で出会うキノコ

  何百種類とあるキノコの一部です。  
                       
  

    (撮影 キノ子さん)

    (撮影 キノ子さん)

  
 おまけの写真 これも市場で撮りました

真っ赤なのがスウェーデン人の食卓に欠かせない、コケモモ、リンゴンベリィで、これでジャムをつくります。ミートボールに添えたり、 ポリッジ(gröt)に牛乳と一緒にかけて食します。
これもふつうは森にいっぱいあるのですが、今年は不作だったようです。


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