ぼちぼち スウェーデン

スウェーデンで見たこと、聞いたこと、考えたことを、同時代に生きるみなさまとシェアーを!

ロンドンのクリスマス

2011-01-04 | 旅行・食べある記

 

クリスマス直前に、目の片方の白内障の手術をし、まわりがぼやっとしている世界で数日過ごした。いまでも、従来からの目で見る外界はグレーっぽくて、手術した方の目ではうすいブルーである(画家でなくてよかった)。アフターケアは3週間ほどかかることを知り、思ったより大層でちょっと意外だった。

   ロンドンへ
それからすぐに、ロンドンへ飛ぶ。Eやんのガールフレンドとその両親たちと一緒にクリスマスを過ごすためだ。 

彼女のアパートは、市内からバスで30分程南下したところにあり、アフリカやアジア系、東欧系の住民が多い地域だ。バスの乗客も、それらしい人以外はちらほらしか見かけなかった。しかし、かなりたくさんの車が駐車場にあったので、余裕のある人はバスは使わないのかもしれない。この街も、出身地と財布の厚みによる住宅地の住み分けは、かなり極端である。

 彼女の住む5階建てのアパートは、30年代に建築の見かけのよいレンガ造りだ。30年代といえば、西欧では恐慌の真っ只中だった。そんなときに、あまり経済的に恵まれない市民のために、都心から少し離れた所に、大量に建てられた公営住宅である。いまでも、生活保護を受けて暮らしている人が、このアパート群には多いと聞いた。ちなみにイギリスは、すでに1600年代初に、よく知られているエリザベス救貧法を制定している社会福祉の先進国である。その福祉政策は、のちにスウェーデンにも影響を与えている。

 しかし、あまり豊かに見えないこの地域でも、食に関するQOL(生活の質)は素晴らしく高い。もっともストックホルムに比べての話だが・・。スウェーデンではとっくの昔に淘汰されて、なくなってしまっている八百屋、肉屋などの食材の専門店が残っている。野菜は採りたてのように新鮮だし、肉だって目の前で好きなように切ってくれる。とても、とても羨ましかった。

スウェーデンの肉関連は、生肉工場ですべての工程がすまされて、カットされた部分がきちんとパックされて店頭に並ぶようになっている。消費者の健康が第一と考えられているので、細菌が入らない配慮が政策の基となっている。それ以前はイギリスのようだったのに・・。

 

  

  3代続く家族経営の肉屋さん。

 ハム肉の色々。ふつう3~4キロのを時間をかけてオーブンで焼く。

 

 クリスマス用の七面鳥。調理前。                          

奥にあるのが調理後。その左は、やはりオーブンで焼いたじゃがいも。手前の赤いのは赤キャベツの煮物。

 クリスマスプディング。ドライフルーツが色々と入っているボリュームのあるケーキ。

 
    無料公開の文化財

ロンドンって、とてつもなく大きくて、大げさではなく世界中から旅行者がやってくる。ものすごい人出で、静かな北欧のの地方都市(田舎町と言うべきか)に住んでいる者には刺激が強く、大変に疲れる所だ。 

 最近、英国貨幣のレートが下がっているので、人並みにクリスマス直後に始まるセールに出かけたが、どこもかしこもモノと人にあふれているので、もうそれだけで目が回ってしまい、ほとんで何も買えなかった。

博物館、美術館への入場料は特別展をのぞいては無料。しかも、収集されている絵画やその他は、莫大な量だ。さすが七つの海を航海しまくった大英帝国。世界からいろんなものをしっかり持ち帰っている。大英博物館に行ってみるとよい。その規模は半端じゃないのだから。とにかく、収蔵されているのは全部で700万点という。展示されてあるのは、その中の一部らしい。それでも、ルーブルほどではないが、あまりにも展示物が多く、一度行くとしばらくは見残しに挑戦する気にはなれない。 

大体において、この国は収集するのが好きなのだと思う。例えば、前に行ったロンドン郊外の植物園キューガーデンには、世界中から集められたサボテンの種類に圧倒された。見ていて、なぜこれまでに? と、へきえきする程あった。 

つぎに、ナショナル・ギャラリーで印象的だったのは、裕福な個人が所有の芸術品を寄贈していることだ。その質も量も半端じゃない。ケタの違う金持ちがいるところにはいると、いやはやびっくりの連続だった。この美術館はもともと、寄贈の絵画をもとに開設されたらしい。

かなり前、どこかの国で、個人で所有の世界的な名画を自分が死んだ時、一緒に棺に入れてほしいといった人がいたと記憶するが、それとは対照的だ。芸術品は人類の共有財産。いくらお金があっても、なんでも私有化できるわけではない。名画などは、一時期の所有を楽しみ、それがすんだら、また他に回して遺していくのが市民社会に住む人間のエチケットだろう?自分の好きな画家の絵が、個人の一存で燃やされたりしたら、だれでも怒り狂うだろう。

もうひとつ、イギリスの文化面で印象深かったのは、日刊紙の質である。ページ数も多いが、たいてい、記事一つひとつに内容紹介のほかに、掘り下げられた分析もされている。ガーディアン紙(1部1ポンド)の日曜版オブザーバー(2ポンド)など、下手したら日本の月刊誌並の量と内容である。これらをイギリス人全員が読んでいるわけではないが、厚い知識人層の存在と、その蓄積された知識の深さが推し量られる。

 (撮影: Michael Young)

トラファルガー広場のクリスマスツリー。高さは20メートル、50~60年の樹齢。1947年から毎年、ノルウェー市民からイギリス市民へのプレゼントとして送られる。詳細は忘れたが、第二次大戦時、ドイツに占領されたノルウェーをイギリスが援助したからだという。一方、占領されているノルウェーに向かうドイツ兵の乗った列車の国土内通過を、スウェーデンは目をつぶった。その恨みも忘れてはいないだろうな~。  

 

  公衆道徳  
今回のロンドン旅行で一番強かった印象は、バスでの市民の公衆マナーだった。街の中心地と郊外の住宅地をつなぐ交通機関は、たいてい沢山の利用客でいっぱいだ。しかし、私のようなシニアーが乗ってくると、座っている人が自分の席をゆずるのである。男性のCやんにまで、一回だけだったにしろ、若い女性が自分の席を譲った。道にはごみが落ちているけど、アカの他人にこれだけ個人的な配慮が出来る社会というのはすごいと思う。そういうイギリス社会に大いに感心した。そういえば、旅行鞄を抱えて、地下鉄の階段を上り下りの際、手伝ってくれる人がさっと現れるのは、ロンドンに多いことも思い出した。

 最後にもう一度、食べ物のこと。飛行場で簡単な昼食をとったが、そこで食べたハンバーガーの美味しかったことに、またまたびっくりした。イギリスは料理が不味いことで有名なのに、飛行場のバーガーが、どうしてストックホルムのより美味しいのか。ストックホルムの料理の方が、イギリスより不味いってことになるのかな~。冗談じゃないよ、まったく。

 他に、近隣国ではフィンランドとノルウェーも、個人的な体験も含め、料理の評判はあまり良くない。でも、しばらく行かないうちに風潮が変わり、スウェーデンが不味い国のトップになっているかも知れないと思い始めた。あせるな~。 

食べ物のランク付けはさておき、今回のロンドン行きで再確認したことは、イギリスは西欧文化のいう典型的な市民社会であるということであった。一口でいえば、社会は市民のためのものということだ。街つくりにしても、市民の生活上の機能を中心に考えられている。

例えば、歩道にしても車道と接触している部分は、ゆるやかなスロープをつけることにより、車道との段差をなくしてあるので、車いすででも、乳母車を押していても、スムーズに街を歩ける。車優先社会でのように、老いも若きも横断歩道橋を上がったり下がったりの繰返しをする必要がない。誰もが街へアクセス出来る、という考えかたが根底にあるのだ(しかし、地下鉄は例外。エスカレーターか、エレベーターがあればよいと、いつも荷物のある時は思ってしまう)。

   帰宅後のメール

元旦にロンドンから送られてきたのは、BBCが録画した大晦日の花火の様子。不景気なはずのイギリスなのに大丈夫かと余計な心配をするほどの豪華さだ。つぎをクリックしてご覧頂きたい。

 http://www.youtube.com/watch?v=Xy_9bx6U8_0 

(もし、うまくいかない場合は、youtube を開いてBBCを選選択し

London Fireworks on New Year's Day 2011 - New Year Live - BBC One をクリックしてください。一見の価値ありです)