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紙ポートフォリオの難題に取り組む

2013-02-04 22:02:40 | ポートフォリオ評価

紙ベースポートフォリオの良さは、どのような学生でも容易に取り組むことができることにある。

一方で、紙ベースのポートフォリオが抱えるやっかいな点は、量が多くなりかさばり、保管場所にや悩むことである

探したい証拠(エビデンス)もなかなか見つけられないということもあるだろう。

また、保管場所にわざわざ行って読み返したり、挟み込む作業があるために、研修医だけでなく、指導医も評価などが煩わしくなることも問題となる。

指導医ポートフォリオを見る機会が減るというのは実は致命的な課題となる。

つまり、研修医が必死に時間を作ってポートフォリオを整理しても、指導医が短時間でしか評価されないことになり、熱心な指導医とわりとそうでない指導医で、歴然たる指導の差が出てしまうことになる。

 

考えてみれば、ポートフォリオの導入当初から数年間は、臨床研修センターにほぼ毎晩出かけていき、書いてある評価表の1ページ1ページに1枚1枚『見ました』というつもりでサインをして、時間があれば付箋をつけて、コメントを残していた。当時の指導医同士にも声かけがあり、研修センターで夜中に顔を合わせることをしばしばだった。

思えば、この指導医たちのサインがメッセージとなり、行動主義的(刺激ー反応理論的)な効果として、研修医にポートフォリオを黙々と作らせていた可能性は高い。海外では、ポートフォリオを作成することが課題としている論文もあったことを踏まえ、非常に高い作成率は『研修修了できない』という刺激に対する研修医の素直な反応であったのだろう。

 

さて、そこで紙ベース・ポートフォリオを電子化すれば問題は解決するか?というと、答えはNOであろう。

 

電子ポートフォリオ(e-Portfolio)の利点は電子的に証拠(エビデンス)を集めて管理するので以下の点で優れている。

内容の再構築が紙ベースよりも容易にできる。

テキストデータだけでなく、画像・音声・動画などのマルチメディアデータを証拠(エビデンス)にできる。

HTML形式やPDF形式だけでなく、必要に応じてファイル形式を変換できる。

多量のデータが劣化せずに保管できる。

ネットワークを介してアクセスできるので、学内外で相互に活用できる。

自己評価や他者評価が容易にできるという点では優れているといえる。

 

ここで、いくつか現実的な課題をあげる。

実は画面入力をいう作業すら煩わしさがある。すでにEPOCだけでなく学会のデータ入力でも、パソコンでアクセス後わざわざ紙へ出力してチェックをして、これを医局秘書や事務員がかわりに入力している。

パソコンを使うことはあってもパソコンに詳しいわけではない。多くの研修医は何らかも形でパソコン操作には慣れているであろう。しかし、データ管理になった場合には、得意・不得意が出てために、証拠を残すことに一つのバイアスが生じてしまう可能性がある。

 

さらに大切なポイントは、ポートフォリオとしての仕組みは紙ベースポートフォリオだろうが電子ポートフォリオだろうがなんら変わらないのである。

つまり、研修医の知っているという『知識』の評価だけではなく、いろいろなスキルや思考力、態度、問題解決能力、経験などを総合的に評価するために、ゴール(アウトカム)を設定すること、そのための評価基準(ルーブリック)を決めること、ポートフォリオをもとに自己評価を行い記録しておくこと、指導医や同僚の研修医による相互評価を行い記録しておくこと、これらを見直し再構築することは、どちらにおいても必要とされることである。

 

もし、電子化することが『簡素化』という発想になるのであれば、大きな誤解である。

目の前の膨大な証拠の山をいかに整理して提出するか?ここに最も効果的な自己評価の学習効果が隠れている。

 

もし診療科ごとの評価表が紙の無駄と考えるのであれば、EPOCを部分的に活用するのは妙案である。

履歴として残り、劣化しない。

ただし、これまでに書いたように『~できる』という証拠には物足りない。別に証拠を残す必要があるのが、ポートフォリオ(紙ベースだろうが電子化されていようがである)に他ならない。