聖マリアンナ医科大学病院臨床研修Blog

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医学教育今昔物語 その2 正しく測るということ

2013-02-11 19:04:50 | 医学教育

医学教育で正しく測るために、目標を分解して、それが知識・技術・態度のどの領域に当てはまるのか考えて、それに合わせた適切な測定法(長さは物差し、重さは秤といった具合)で測るように教えられます。この分解する手法が今日問題となってきたわけです。

教える段階では分解してますが、実際の臨床で分解できる診療行為などないからです。だから本当は正しくなんか測ってないんです。

 

余談ですが、この教育分類タキソノミーを提唱したブルームは、教育目標を学生のとる行動とその内容からとらえるために考えました。目標として、教育の方向性を示しそのために必要な授業内容や用いる教材を考えようとするためのものでした。目標の示す方向性とは『目標に近づくため』ということだったはずなのですが、なぜか、教育工学的な『行動目標』と混同して受け止められるようになってしまいました。

教育工学的な『行動目標』とは何か。これこそが前述した目標を細かく分類されたもので、『これとこれをクリアしなさい』ってことです。これは学生をパターン認識で学習させていくものです。まさに刺激ー反応理論によるプログラムされた教育です。ここに学習者個人の考えや心はありません。必ず学生はこのように変化するはずという発想での教育です。

これはブルームの教育分類タキソノミーのそれとは明らかに違うのです。

 

このような『行動目標』を掲げてクリアさせていくには『刺激ー反応理論』がとても有効で結果もすぐにわかります。だから効果が出たと勘違いしやすいのです。 

『先生、試験に出るところはどこですか?』的な発言には、まさにそのような即効性の成果が出ているわけです。

このような学生はただ反応したに過ぎません。

でも、この学生は考えて行動しているのです。なぜなら試験に落ちれば自分が困る。だから勉強したい。だから先生教えてください。という葛藤があったはずなのです。もちろん、それでも多くの教員は『何も考えてないからそういう発言なのだ』と言われるかも知れません。本当に気にしない学生なら質問もしませんし、留年も気にしないと思うのですがどうでしょう。

 

目標を細かく分解することは一見測定しやすくなります。でも本当に測りたい総合的な能力を測ることにはならないのです。

 

最近注目のアウトカム基盤型学習(逆向き設計のカリキュラム)において、同じように『到達目標』を細かく列挙してしまうと、医学生はたちまち反応してしまい、実は肝心な教育目標の本当の意義を理解しないままに内なる変化を来さないお勉強にとどまってしまう可能性があります。

アウトカム基盤型学習では目標の方向性は示しますが、クリアすべき行動目標を個別に列挙するものではないととらえた方がいいと思うのです。なぜかというと、タイラーやブルームが唱えた『行動目標』という考え方をもとに『到達度評価』さらには『目標に準拠した評価』になってきた教育学の流れがあるからです。

 

つまり、『~できる』ことをできるだけ多くの評価方法を使い測ることで、医学生に現時点の『~できる』をフィードバックし自己学習を促すことで『内なる変化』を起こさせることが現代の医学教育の流れだととらえています。

 

なんだか難しいかも知れませんが、臨床研修が必修化され、卒前教育も大きく変わろうとしている今日の医学教育では普通の臨床医でも『教育における理論』を踏まえておく必要性があるかなと思います。

医学教育の諸先生方が見て解釈が異なっているようであればご教示ください。お待ちしています。