実務修習の中身は語りません。
ただ、特許は終わりました。
そこで、実務から距離を置いている方が、研修を乗り切るにはどうしたらよいか、お勧めの参考書だけ書いておきますので、ご参考ください。
まず、前提として、本来は、テキストだけで足りる…とは思います。
テキストをきちんと読んで対応すればそれで済む気もしますが、実務との関係で言うと、クレームアップの思考方法みたいな途中経過は、きちんと取り組んだ方が、いいかと思います。
ただ、手元にコンパクトな書籍として置いておきたいということでまとめ買いしました。
そこで、10冊くらい購入した中から、お勧めを数冊。稀に古本屋にあったりします。
1.小川勝男ほか「技術者のための特許実践講座」(森北出版、2016)2200円
ちなみに、購入に当たり、弁理士(あるいは有資格者)が執筆者にいない書籍は除きました。「●●知財(特許)アドバイザ」とか。
品質担保が不明だから。
この本は、小川先生以外は弁理士資格はないようですが、日立製作所の知財部OBのようです。演習と答えがあるのが、非常によいです。
六角形鉛筆、掃除機など機械系の基本的な発明について、作用効果をきちんと考慮し、クレームアップすることの難しさ(表現力の必要性)が体験できます。
2.葛西泰二(泰は異体字)「特許出願のクレーム作成マニュアル」(オーム社、2012)2400円
急にレベルアップ。どちらかというと、表現方法の見直しなどに使っていました。マニュアルとあり、技術的アプローチの箇所は自分が起案しようとしている発明の明細書等の関係で参考になり得るかもしれません。私は、「クレーム記載の留意点」までを繰り返し読んでいて、あとは関係する部分を摘み読みしていた程度です。
おそらく、実務に出ても使えるのでは。
3.稲葉慶和「新・拒絶理由通知との対話」(エイバックズーム、2006)※改訂版あり
改訂版があるので、そちらを。中間対応についての定番。元審査官。Q&Aを主に参考にしていました。一応、最後の方に意見書の記載様式についての記載も。
4.渡邉大介「図解 特許用語事典」(三和書籍、2007)2500円
筆者は弁理士資格はないようですが、いくつかの用語辞典があるなかで、そもそも、用語の意味を調べる、だけでなく、起案の際に、「●●のとき、どの用語を使うべきか」という疑問があると思います。このときに、50音で検索する用語辞典ではあまり意味がありません。
ということで、特許素人の人間が購入した本がこちら。
もちろん、基本的な用語検索は使えます。それ以上に良かったのが、図形、構成部品の常用名称が、図解入りで掲載されているので、機械系で自分の起案したい発明に近いものを、あるいはその部品の構成に近いものを見つけて、用語を調べるというやり方ができます。
内容の割に値段が高めな印象でしたが、知識不足は金でフォローすることにしました。
5.高橋政治「進歩性欠如の拒絶理由通知への対応ノウハウ」(経済産業調査会、2016)3000円
実務上の大半を占める29条2項対応。中級編の途中までしか読めませんでしたが、意見書記載例や、考え方、つまり、「本願発明の認定」とか「引用発明の認定」などと抽象的に言われても、それを具体的にどう意見書に落とし込むか、という最後の部分まで書いてあるのは、なかなかありません。
ということで、これは手元にあってよい1冊。どちらかというと実務向き。
なお、分厚いだけで、実際は特許法と施行規則の解説と裁判例を詳述しているだけの書籍もありますが、そうした本は除外していますし、今回、購入もしていません。
実務修習は、実務で使えるようになるための研修だけでなく、登録後も自己研鑽が必要な業界ですから、その意味では、課題に対応できれば終わり、ではなく、これらをきちんと理解できる程度にじっくりと(修習の有無にかかわらず、)勉強しなければなりませんね…