話題の問題。飽くまで現場でどこまで対応するか、という観点から解いてみたい。問題は既に公表されており、以下のとおり。
〔第11問〕(配点:3)
法の支配に関する次のアからウまでの各記述について、bの見解がaの見解の根拠となっている場合には1を、そうでない場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.21]から[No.23])
ア.
a.イギリスで20世紀までに成立した法の支配は、制定法とコモン・ローを中心とした「正規の法」による支配を意味しており、裁判所による法の適用を保障することを要求している。
b.イギリスでは、17世紀の国会と国王との抗争を経て、国会が主権を有するという観念が確立された。[No.21]
⇒国会主権の観念が確立されたとして、制定法(議会によって制定された法)だけでなく、コモンロー(慣習法)も正規の法として裁判所による法の適用を保障しているのだから、少なくとも慣習法が正規の法となる根拠は導けない。よって×(2を選択)
イ.
a.19世紀後半のドイツにおいて採用されていた法治国家概念は、今日では、形式的法治国家論であると批判されている。
b.19世紀後半のドイツにおいては、法律の留保の下、行政権が国民の権利を制限し、又は義務を課すには法律の根拠が必要とされたが、法律がどのような内容を伴っているかは問題とされなかった。[No.22]
⇒これは特に問題なく○(1を選択)。形式的な「法律」であれば、侵害留保説において侵害できる権利の制約が正当化されるから「形式的法治国家論」であるといえる(この選択肢は争いがない模様)。
ウ.
a.現在の立憲主義国家の多くは、統治原理として法治主義を掲げる場合であっても、その内実は、法の支配原理とほぼ同じ意味を持つようになっている。
b.現在の立憲主義国家の多くは、国民主権原理を採用している。
⇒法治主義は「法」であれば何でもよいとする立場。その内実は「法の支配原理」と同様であるというのは、法の支配、法内容の適正まで含意すること、法の支配は国民主権を前提とすること、からすれば、国民主権原理を採用する立憲主義国家における法治主義と法の支配原理はほぼ同義といえる。よって○(1)
なお、芦部信喜・高橋和之補訂『憲法〔第8版〕』15頁では「法治主義は英米法に言う「法の支配」の原理とほぼ同じ意味を持つよになっている」と正解そのものの記載がある。
結論は「211」かと考えました。
仮に現場で解いていたとしても、文献調べても個人的には同じ結論だったと思います。
難問ではないのではないかと思いますが、これが違うのであれば勉強し直したいところです(ダイシーの見解は木下先生のXの投稿による解説で知りました)。
特に話題のアは、やはりコモンローとの関係でaの記述をbで説明しきれていないと思うのです、(形式的な)論理としては。仮に正解(1)だとすると、aとbを結びつける憲法学上の知識が必要ということになり、その知識が不足したため誤答に至ったと分析しています。
※2024年8月1日追記
司法試験委員会の回答によると「212」とのこと。
ウを誤ったので部分点どまりということに。