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バイオ・微生物実験好きな管理人による、研究仕事、日常、実験技術や理科系ネタのブログ

菌と人間のいたちごっこ。

2006-06-23 21:32:35 | 様々な微生物
いつのまにかこんなに日にちが経ってます(汗
毎日忙しくてブラジル戦も睡魔に負けて見ていない非サムライspirillumです。こんばんは。

今日は気になるニュースを見かけたのでその話を。
埼玉医大で院内感染?入院患者から多剤耐性緑膿菌検出 (読売新聞) - goo ニュース


薬剤耐性菌は、抗生物質や殺菌剤などがある環境条件でも生きていられる細菌です。
生きていられるというのは、それらの物質を積極的に排出したり分解したりする能力を持っているからこそです。

もともとそういう能力を持っていない、人体に影響を及ぼす細菌が耐性を持つことがあります。

一つ例をあげると・・・・・

一種類の菌の中で、少し環境に強い、身体の丈夫な生まれたとします。
身体の丈夫な菌は、低濃度の薬剤中でも生きながらえることが出来ました。

長時間同じ薬剤に浸っているうち、その菌はその薬剤を異物として排出する器官を備えるようになりました。
積極的に特定の薬剤を排出できるようになったので、もう少し濃度が高くなってもその薬剤では死ななくなってしまうのです。
これが薬剤耐性菌が生まれる過程(大雑把)です。
これまでに問題視されてきた薬剤耐性菌のうち、有名なものはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA;Methicillin-Resistannt Staphylococcus Aureus)があります。
MRSAでは、耐性を獲得した菌には、その耐性をつかさどる遺伝子情報があり、その遺伝子情報は通常の菌にも伝播することがわかっています。

薬剤耐性菌は、健康な人には特に悪さもせず、感染(保菌)していることには気付かないのですが、免疫力のない人にこの菌が感染すると、たちまち髄膜炎などを起こしてしまうというものです。
病院は消毒薬や抗生物質を日常的に使っています。
耐性菌の出現がまだ広く知られていなかったころ、病院では毎日毎日同じ消毒薬を使い、同じ抗生物質を投与し、そのため薬剤に慣れてしまった菌が出現しました。
健康な看護士や医師や回復力のある患者からは、耐性菌を保持していると気付かず、抵抗力の少ない患者にそれが感染してしまいます。
これを院内感染といいます。


今回は多型耐性緑膿菌の院内感染もありうるが、抗生物質投与による人体内での耐性化が原因かもしれないとのこと。


菌と人間のいたちごっこ。
最後に勝利するのはどちらだと思いますか?
細菌はその構造がシンプルなので、進化に要する時間は短いですよ