くもり硝子の向うは風の街
問わず語りの心が切ないね
枯葉ひとつの重さもない命
貴女を失ってから・・・・・・
背中を丸めながら
指のリング抜き取ったね
俺に返すつもりならば
捨ててくれ
そうね 誕生石ならルビーなの
そんな言葉が頭に渦巻くよ
あれは八月 目映い陽の中で
誓った愛の幻
孤独が好きな俺さ
気にしないで行っていいよ
気が変わらぬうちに早く
消えてくれ
くもり硝子の向うは風の街
さめた紅茶が残ったテーブルで
衿を合わせて 日暮れの人波に
まぎれる貴女を見てた
そして二年の月日が流れ去り
街でベージュのコートを見かけると
指にルビーのリングを探すのさ
貴女を失ってから・・・・・・
青い海原 群れ飛ぶかもめ
心ひかれた 白いサンゴ礁青
いつか愛する人ができたら
きっと二人で訪れるだろう
+南の果ての 海のかなたに
ひそかに眠る 白いサンゴ礁
誠の愛を 見つけたときに
きっと二人で 訪れるだろう
たぶん われわれは
ある例外的な瞬間しか自分の年齢を意識していないし
たいていの場合は 無年齢者でいるのだ
60代とおぼしき女性がプールで 若い男性教師に水泳を習ってる。
レッスンが済んでプールを去る時 ふと ふり返り
彼に ”色とりどりに塗り分けた風船を 恋人めがけて投げる”かのような 合図を 送る。
ひとの存在も また 風船のよう。
歳など知らず気ままに漂う。
きゅんとなる。
亡命作家の小説”不惑”の冒頭場面