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2015年06月15日 21時10分09秒 | 日記
百田さんの時代小説「影法師」読了。

百田さん、三人称の文章、硬くて読み辛いんかな?
「永遠の0」も「モンスター」も、確か基本一人称小説だったし。

あ、でも「風の中のマリア」は、三人称だったっけ?

兎に角、今まで読んだ中で一番読み辛かったですわ。
面白かったけど。

江戸時代のとある藩が舞台の時代小説なんですけどね。

主人公は侍とはいえ、身分の低い、下士の男で。

上に中士、そして上士がいるわけですが。

基本、下士の身分の侍が上の身分、特に上士などに道で遭遇しようものなら。
脇で土下座して行過ぎるのを待たなければならない。

そのぐらいの身分差。

主人公がまだ少年のとき、どうしても耐えられないことがあり、彼の父は上士に対して刀を抜き。
返り討ちに遭って死んでしまうのですが。
その葬儀の席で出会った中士の家の男と、一生ものの友となる。
そんな友情の物語なんです。

まぁ、結末は途中で読めてしまうんですが、面白かったですよ。

色々な時代要素、知識もいつもどおりに沢山ですし。

例えばですな。

士道不覚悟、お家断絶って言葉あるじゃないですか。

その厳しさを示す一例みたいなのが作中であるんですわ。

とある侍が、いじめを受けていて。
あるとき、とうとう耐え切れず、刀を抜いてしまうのですが。

それに驚き、逃げた者、あっけにとられて刀を抜かなかった者は士道不覚悟でお家断絶。全員切腹。
で、応戦した方は確かいきなり斬りつけられたので死んでたような気がするのですが、それでもお家存続と。

だからま、理由を問わず、挑まれたのに逃げると家を潰されちゃうらしく。
厳しいっすね;(2回目)
代わりに、逃げさえしなければ、戦えばお家取り潰しは免れるみたいですが。
負けるのが恥なのでは無い。戦わぬことが恥なのだ。
覚悟のススメという山口センセの有名漫画の冒頭で出てくる言葉ですが、それを地でいってますね。

こういう知識部分の読み味は相変わらずでしたわ。
実に楽しい。

他にも、侍の家では次男以下の男子は基本家を継ぐためのスペアパーツ扱い(長男が死んだときの保険)で、侍の家なのに男児が生まれなかった家に婿入りすることが叶わなければ、一生部屋住みで、飼い殺しで一生を終えるという。

厳しいっすね;

作中、次男坊なので、焦る主人公の友の一人の語りが、その恐ろしさを表現してましたよ。

職について自分で食い扶持を稼ぐこともできず、家督を継いだ兄に小遣いを貰いながら、無為な一生を送る。
悲惨すぎる;;;

江戸時代はさ、町人が一番幸せな時代だったと、海外の学者で言う人が居るそうですが。
そのあたり、ガッツリ書かれてましたわ。

侍も辛いけど、農民も辛いのよね。

米の出来が悪くて、年貢の取立てに耐えられそうになければ一揆を起こすという手があるわけだけど。
一揆を起こすと首謀者は家族ともども磔だからさ。

一揆を起こされると、確か代官切腹なんでしたっけか。
命を賭けた労使交渉。

作中でも一揆のシーンあるんですが。読んでてそう感じました。


あともうひとつ。

色々あって、主人公。
下士の生まれなのに、藩の運命を左右できるような地位に駆け上がるんですが。
そうなると当然、それを快く思わない輩に、命を狙われるわけですよ。

で、主人公、後で知るんですが。

居合いの達人の刺客に命を狙われていて。
襲われそうになるんですが。

主人公が気づいていないところで、謎の凄腕剣士(読者には正体バレバレ)がそれを迎え撃つ。

刺客は言うわけですよ。
「俺を倒した凄腕剣士は、刀を横に倒し、腰元に構えて切っ先を後ろに回していた。奇妙な構えだった」

それ、脇構えやないけー!!

居合やってる身としては、意図が読めて超嬉しかった。
剣を隠すことで、間合いを分からなくする構え・脇構え。
間合いを気にする居合いの技に、それで対抗したんですな。
相手が自分の間合いばかり気にして、自分が相手の間合いに踏み込んでしまったことを悟らせず、敵が抜く前に斬る目的で。

この構え、どっかの流派の秘伝なんですよね。どこだったかは忘れましたが。(前も言ったような気もするな。この話)
だからま、刺客の男が知らなくて「奇妙な構えだった」っていうの、凄く分かるわけですよ。

今だと、居合道を学べば普通に教えてもらえますけどね。
この時代だと、秘伝だからなw

ここが一番面白かったです。


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