アジアフォーカス福岡映画祭のディレクター、佐藤忠男氏の退任の記事を、福岡滞在中の9月23日付けの朝日新聞朝刊で読みました。ちなみに全国版には載ってませんでした。かなりがっかりです。アジア映画ファンのひとりとしては、これはとても大きなニュースなのに、地方版だけの掲載だなんて。
今年で16回目だった同映画祭。最初の年から関わってこられた同氏ですが、記事によると高齢のため、1年に数回海外へ映画の選考のために行くのはたいへんになってきたとのこと。今後のアジアフォーカスにエールを送りたい、という内容でした。
佐藤忠男さんと言えば、いつの頃だろう、学生の頃に、NHK教育テレビでアジア映画劇場という枠があり、映画を放映する前に、映画のコメントをしていらしたのです。その頃はお名前を存じ上げず、アジア映画を分かり易い言葉で解説してくれる、“アジア映画のおじさん”という認識でした。やがて大学生になり、神田神保町の古本屋で偶然アジアフォーカス福岡映画祭のパンフレットを発見し、この映画祭にいつか行くんだ!と心に決めていた事を思い出します。そして最近、“アジアにはいい映画がたくさんある”という、少し黄ばんだ約10年前の新聞記事のインタビューを、部屋で見つけました。私がアジア映画を好きになるきっかけになった、大きな影響を受けた方のひとりでした。
そして個人的には、2000年から参加できた映画祭。今まで見てきたどの映画祭よりも、佐藤忠男さんが司会をするQ & Aは、内容が充実していて、何よりアジアに対する優しさと理解を感じます。そもそもプログラムディレクターが、ご自身が責任を持って選考された作品を自ら紹介される、そのお姿をとてもかっこいいと思っていました。ディレクターは、お客さんの質問を聞く前に、監督や俳優さんに、映画のいい所を引き出すような、簡単な質問をされていたのを見たことがあります。そうすると、会場の雰囲気がいい感じにあったまってきて、その後の福岡の観客の質問も、映画を通して、その国を知りたいという熱意に溢れたものが多いです。私はどこの映画祭よりも、アジアフォーカスのQ & Aが一番好きです。
タイ映画を多数見てきた私でさえ、ここで上映されたタイ映画数本を見て、また新たに違う視点でタイを見ることになり、慌てて何冊も本を探して読んだこともあります。
飛行機に乗る直前に今年最後にアジアフォーカスで見た映画は、「胡同の理髪師」でした。中国の北京の胡同(フートン)の街で、馴染み客相手に80年もの間、現役の理髪師を続けている実在の人物を、描いたドキュメンタリータッチの映画でした。過剰な演出は何も無いのだけれど、ひとつの事に信念を持って生きていく主人公は、とてもかっこいい。ただ、移り行く街の風景に、寂しさを覚えたりして、泣き笑いしながら観ました。ああ、最後にアジアフォーカスらしい素敵な映画を見せていいただいたと思いながら、別の意味の涙も混ざっていた気がします。
記事によれば、アジアフォーカス福岡映画祭は、続くそうなので、一安心です。ただ、ディレクターは退任されても、そのスピリットを引き継いでいただき、今までのような唯一無二の個性を持った映画祭でありますように、とアジアフォーカスファンのひとりとして、心から願っています。
今年で16回目だった同映画祭。最初の年から関わってこられた同氏ですが、記事によると高齢のため、1年に数回海外へ映画の選考のために行くのはたいへんになってきたとのこと。今後のアジアフォーカスにエールを送りたい、という内容でした。
佐藤忠男さんと言えば、いつの頃だろう、学生の頃に、NHK教育テレビでアジア映画劇場という枠があり、映画を放映する前に、映画のコメントをしていらしたのです。その頃はお名前を存じ上げず、アジア映画を分かり易い言葉で解説してくれる、“アジア映画のおじさん”という認識でした。やがて大学生になり、神田神保町の古本屋で偶然アジアフォーカス福岡映画祭のパンフレットを発見し、この映画祭にいつか行くんだ!と心に決めていた事を思い出します。そして最近、“アジアにはいい映画がたくさんある”という、少し黄ばんだ約10年前の新聞記事のインタビューを、部屋で見つけました。私がアジア映画を好きになるきっかけになった、大きな影響を受けた方のひとりでした。
そして個人的には、2000年から参加できた映画祭。今まで見てきたどの映画祭よりも、佐藤忠男さんが司会をするQ & Aは、内容が充実していて、何よりアジアに対する優しさと理解を感じます。そもそもプログラムディレクターが、ご自身が責任を持って選考された作品を自ら紹介される、そのお姿をとてもかっこいいと思っていました。ディレクターは、お客さんの質問を聞く前に、監督や俳優さんに、映画のいい所を引き出すような、簡単な質問をされていたのを見たことがあります。そうすると、会場の雰囲気がいい感じにあったまってきて、その後の福岡の観客の質問も、映画を通して、その国を知りたいという熱意に溢れたものが多いです。私はどこの映画祭よりも、アジアフォーカスのQ & Aが一番好きです。
タイ映画を多数見てきた私でさえ、ここで上映されたタイ映画数本を見て、また新たに違う視点でタイを見ることになり、慌てて何冊も本を探して読んだこともあります。
飛行機に乗る直前に今年最後にアジアフォーカスで見た映画は、「胡同の理髪師」でした。中国の北京の胡同(フートン)の街で、馴染み客相手に80年もの間、現役の理髪師を続けている実在の人物を、描いたドキュメンタリータッチの映画でした。過剰な演出は何も無いのだけれど、ひとつの事に信念を持って生きていく主人公は、とてもかっこいい。ただ、移り行く街の風景に、寂しさを覚えたりして、泣き笑いしながら観ました。ああ、最後にアジアフォーカスらしい素敵な映画を見せていいただいたと思いながら、別の意味の涙も混ざっていた気がします。
記事によれば、アジアフォーカス福岡映画祭は、続くそうなので、一安心です。ただ、ディレクターは退任されても、そのスピリットを引き継いでいただき、今までのような唯一無二の個性を持った映画祭でありますように、とアジアフォーカスファンのひとりとして、心から願っています。