森の詞

元ゲームシナリオライター篠森京夜の小説、企画書、制作日記、コラム等

国際通信社

2008年03月08日 | Weblog

 先程、職場に「国際通信社の吉村」なる方から電話がありました。
 月刊誌『国際ジャーナル』6月号の京都特集で、是非取材に伺いたいとのこと。
 私の職場は設立40年以上のそれなりに古い会社ですし、創設者は黄綬褒章を賜ったこともある方ですので、取材そのものは驚くほどのことでもありません。
 しかし、それにしては営業の口調が軽い。また、取材には元アイドルのハネダエリカがお伺いしますと言われたのですが、誰のことだかわからない。後ほど改めて返事をしますと約束し、一旦電話を切りました。
 早速ネットで調べてみると、90年代のアイドルグループ『CoCo』のメンバー、羽田惠理香と判明。ついでに国際通信社も調べてみると、ほとんど詐欺紛いの手口で高額な掲載料を取る会社であることがわかりました。
 社長の手を煩わせるまでもないと判断して電話を入れたところ、対応してくれたのは穏やかな口調の女性。先程の吉村という男性もこの人も、好きでこんな仕事をしているわけじゃないだろうに……と思い、誠心誠意丁重に断りを入れました。

「お忙しいところ恐れ入ります、株式会社*****の篠森と申します。吉村様はいらっしゃいますでしょうか」
「申し訳ございません、吉村は現在他の電話に出ております」
「それではご伝言をお願いしたいのですが、よろしいですか?」
「はい、どうぞ」
「先程お電話いただいた件ですが、お断りしますとお伝え下さい」
「そうですか。かしこまりました、伝えさせていただきます」
「あと、もう一つお願いしたいのですが」
「はい、なんでしょう」
「大変なお仕事ですが、どうか頑張って下さいとお伝え下さい」
「え……ああ、はい。わかりました、伝えさせていただきます……あ、ありがとうございました」
「いいえ。お手数をおかけしますが、よろしくお願い致します」
「はい」
「それでは失礼致します」
「失礼致します」

 後半、相手の女性は動揺していました。
 大学生の頃、似たような電話をかけてきた相手に一人の人間として話しかけたことがあります。彼は「本当に疲れる、もう辞めたい」と愚痴をこぼしました。最後には「話を聞いてくれて嬉しかった」と感謝されたことを覚えています。
 彼らの行いは褒められたものではありませんし、おそらくは彼らも自覚していることと思います。
 だからと言って、そう簡単には仕事を変えられない事情のある方も少なくはないでしょう。

 嫌ですね、こういうの。
 ちょっと憂鬱な気分になった篠森でした。

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