獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』Ⅰ章 その6

2023-02-06 01:47:36 | 東村山女性市議転落死事件

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』(教育史料出版会1996年5月)
より、引用しました。
できるだけ多くの人に読んでいただく価値がある本だと思いますので、本の内容を忠実に再現しています。
なお、漢数字などは読みやすいように算用数字に直しました。

なお、乙骨さんには、メールで著書を引用している件をご報告したところ、以下のように、御快諾を得ています。
「獅子風連のブログで拙著をお取り上げていただいているとのこと、ありがとうございます。
どうぞ、ご自由にお使いください。」
乙骨さん、ご了解いただき、ありがとうございます。

(目次)
□まえがき
■Ⅰ章 怪死のミステリー
□Ⅱ章 疑惑への道のり
□Ⅲ章 対立の構図
□Ⅳ章 たたかいの軌跡
□Ⅴ章 真相を明らかにすることは民主主義を守ること
□あとがき


◆「生命の危機に瀕したような」声
9時19分、東村山市議会事務局次長からの電話中に朝木さんからのキャッチホンが入る。後日、NTTの通話記録によってこの電話は自宅から発信されていたものであることが判明。
(矢野)もし、もし。
(朝木)あ、もしもし。
(矢野)話し中。
(朝木))あ、はいはい。ちょっと気分が悪いので、休んでいきます。

「議会事務局関係者からの電話は、7日からはじまる9月定例議会での質問通告書の提出期限が、議会運営委員会で私たちが高知に行っている間の、4日の午後1時までと決まったとの連絡でした。『草の根』の質問を封じようとのあきらかな嫌がらせ。そこで、少々エキサイトしていたため、朝木さんと満足に話すことができなかった。いま思えば、悔いが残る」(矢野氏)
矢野氏、直子さんによれば、このときの朝木さんの声には、普段のハリがなく、明らかに異常な状態を示しているという。
9月末、朝木さんの怪死を2日間にわたって特集したTBSテレビ「ニュースの森」では、朝木さんが最後にかけてきた電話の録音テープを、日本音響研究所に分析させている。それによると、朝木さんの声は、大韓航空機撃墜事件の機長が、ソ連機にミサイルを打ち込まれたときと同じ周波数変化を示すなど、「極限の興奮状態にあり、自殺前というより、もっと、生命の危機に図らずも瀕したような、異常な状況下でかけてきたものと、ほぼ断定できる」との分析結果を得ている。

9時30分頃、現場近くの駐車場で不審者2、3名がボソボソ話す声を駐車場に面した民家住人が聞く。
10時少し前、直子さんが所沢のファミリーレストランから、「母、いますか」と事務所に電話。
矢野氏「休んでくるといっていたので、家にいるんじゃないの」と応答。直子さん、大統さん、巌さんは、直子さんの住む千塞県松戸市のマンションから巌さんの運転する車で自宅に戻る途中だった。
引き続き自宅にかけるも応答なし。不安になった直子さんが車で自宅に向かう。
10時頃、「ロックケープ」の五階住人の同居人が、「キャーッ」という女性の叫び声とドスンという物音を聞く。
10時5分、「モスバーガー」のアルバイト店員、ビル裏のゴミ捨て場で、倒れている女性を発見。
10時15分、「モスバーガー」店長、女性を発見。声をかける。
10時半、直子さん、自宅に到着。朝木さんが不在なので事務所に電話。事務所にも不在なので大騒ぎに。直子さんら近隣の病院に電話および直接訪問し、所在を捜索。

◆目撃者がいない
以後は、冒頭に記した事件の経過どおりである。
一連の動きからは、朝木さんは、一度帰っていた自宅に、再び、それもカバンも持たずにあわてて帰り、そこで気分が悪くなった旨、電話連絡した後に転落していることが分かる。
なぜ、自宅に戻ったのかは、謎である。何者かが呼びだしたのであろうか。自宅裏は市立郷土館になっている。夜間、人の出入りはなく、周囲は薄暗い。何者かがここから侵入したとの推測も可能だ。
自宅から「ロックケープ」ビルに向かうには、事務所の前を通るルート、大回りだが、府中街道を通るルート、東村山駅の跨線橋をわたるルートなどが考えられるが、いずれも人通りはある。朝木さんが人目につかなかったとは考えにくい。まして、裸足で歩いているとすれば、誰かの記憶に残っているはずである。にもかかわらず目撃情報がない。どうして目撃者がいないのか。
こうした疑問に対して、TBSテレビが行った録音テープの分析結果は重大なヒントを投げかけている。それによると、朝木さんが「草の根」事務所に最後にかけてきた電話の声は、「極限の興奮状態にあり、自殺前というより、もっと、生命の危機に図らずも瀕したような、異常な状況下でかけてきたものと、ほぼ断定できる」というのである。
朝木さんの事件を特集した「ザ・リバティ」編集局発行の雑誌『創価学会を折伏する』は、TBSが朝木さんの声紋分析を行っ専門家にインタビューを試み、その分析結果を詳細に掲載しているが、そこには次のような注目すべき声紋鑑定の結果が語られている。

----電話の声から、当時、朝木さんはどんな状態に置かれていたと推定できますか?
「朝木さんの声を分析したところ、議会の答弁などで話す通常の声帯の基本周波数の平均値は142HZ(ヘルツ)。上で180HZから200HZでした。
問題の電話の声は、周波数の上が412HZ。普通の周波数の倍以上で、ちょっと異常です。また、声の周波数自体が250HZから415HZの間で乱高下し、極端に乱れています。
これらは心理状態的には『悲鳴』のような、『極度の興奮状態』であったことを示しています。電話では落ちついた感じに聞こえますが、実際には心を落ちつけようとしても、コントロールがきかない状態だった、と言えます」
----例えばどんな状況だとこうした声になるのですか?
「私が過去に分析した中でこれと似た声紋のケースは、撃墜された『大韓航空機撃墜事件』のパイロットの声があります。
機体にミサイルを打ち込まれ、二発目を被弾する問にパイロットが管制塔に送ったファイナル・メッセージです。このパイロットの普通の声の周波数の平均が125HZ。墜落直前の周波数が、ほほ倍の250HZでした。つまりその位『極度の興奮状壁』、『身の危険を感じる状態』にあった、と言えます。それ以外は、こうした周波数が倍に上がるような事例は知りません」
----電話では「気分が悪い」と言っていますが。
「体の調子が悪い時は。こんなに勢いは良くなく、もっと周波数は下になります。特にカゼをひいているといった感じはしませんし、薬物を飲んでいた可能性もないと思います。
いずれにしましても演技では出せる声ではなく、何らかの身の危険を感じるような“危機的状態”にあったのは、間違いないでしょう」

朝木さんの夫・大統さんは、12月27日、日本音響研究所に対し、ファイナル・メッセージとなった朝木さんからの通話の声の基本周波数の変化と、音声の状況から類推される事実の鑑定を依頼。日本音響研究所は、今年(1996年)3月22日、鈴木松美所長名で、TBSと『ザ・リバティ』の取材に解答したと同趣旨の鑑定結果を「鑑定書」としてまとめている。
サハリン沖でソ連機にミサイルを打ち込まれて撃墜された大韓航空機の機長がファイナル・メッセージで送ってきた声の周波数変化と同じ状況を示す「生命の危機に図らずも瀕したような、異常な状況」とは、いったいいかなる状況なのか。
電話が自宅からかけられたことはハッキリしている。声紋鑑定の結果は、自宅で身体的拘束を受け、凶器による脅しを受けながら架電させられていた可能性を示しているといえないだろうか。いずれにせよ、この分析結果は、オウム真理教による坂本弁護士一家殺人事件や、目黒公証役場の事務長・仮谷清さんに対する拉致、監禁、殺人事件と同様の事態が生じていた可能性を示唆している。
あるいは、朝木さんも、坂本弁護士や仮谷さん同様、何者かによる組織的な犯行によって、拉致、監禁され、ビルから転落するという形で命を奪われたのであろうか。

 


解説
電話が自宅からかけられたことはハッキリしている。声紋鑑定の結果は、自宅で身体的拘束を受け、凶器による脅しを受けながら架電させられていた可能性を示しているといえないだろうか。

科学的な分析により、朝木さんが「何者かによる組織的な犯行によって、拉致、監禁され、ビルから転落するという形で命を奪われた」可能性があるというのです。
由々しき事です。
真相の解明が切に望まれます。

獅子風蓮