くまだから人外日記

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サウザント・クロノス・ナイツ 銀髪のノーラ 『四つのクロノス その2』 29

2018-03-20 14:13:50 | 【偽書】シリーズ
「銀領の姫達を紹介しましょう。お好きな方を妻に娶(めと)られれば宜しい」
「あなたがそれを口にするなど恐ろしい」
「それだけこの賭けに自信があるからですよ」
「何か勝算がおありなのですか?」
「ありません。その騎士団長が教皇様を救出する気がする。それだけです」
「そんな“予感”めいた事だけで銀領の姫君達を差し出す様な事を口走るとは」
「良いのです。彼女らもいつかは嫁ぐのですから」
「そりゃそうでしょうが。しかし、名のある王族の王子ならともかかく私の様な…」
「空賊風情には勿体ない…ですか」
「私のセリフを取らないで下さいよ」
「ふふふ。良いのです。あの姫達の中には、空賊の頭領の嫁として、名を馳せる娘も居るかもしれませんよ」
「そんなバカな」
「その娘がですか?
それとも…」
「あなたがですよ。あなたのそのお考えがです」
見るからに荒くれ者のその男は、いかにも身分の高そうなその人物に喰ってかかったと言われております。
「但し、杞憂は残りますが…」
「おっ?ははぁ。例のアレですな。それは婦人の戦士には避けて通れないリスクですから…。例え皇軍でも山賊や夜盗であっても」
荒くれ者は見かけによらず殊勝な顔をしてその女性に言いました。
そして二人のその悪い予想は現実のものとなりました。


明日に予定された教皇救出の準備を終え、ノーラとスペクターは夜風が吹く宿営地側の丘に腰掛けて夜空を眺めていました。
「いよいよ奪還作戦前夜になったな。ノーラ。どんな気分だ?初陣前夜の高ぶりは?」
スペクターの問いにノーラは退屈そうに答えたと言います。
「別に」
「余裕綽々か?それとも何も知らない強みか?」
「教皇様は誰かが救い出してあげなきゃならないんだろ。ならボクがそれをやるだけだよ」
「大した騎士団長様だよ」
「ねぇ。彼等は何で教皇様を拉致したのかな?」
「ん?」
「賊軍は別にここで教皇様を拉致して立てこもるなんてしなくても」
「大した理由は無いんだろ、実は」
「そうなの?」
「まあ、誰かの利益になる話だろうさ。つまらん奴らだ」
スペクターは訳知り顔をしてそう語ります。
「ここからは夜風に当たって火照りを冷ましてから宿舎へ帰るよ」
「気をつけろよ。この村は既に反帝国抵抗勢力の手に落ちて久しいんだ」
「村の人達は気のいい人ばかりなのにね。教皇領だったばかりに狙われたなんて」





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筆者敬白

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