このニュースの経過をじっと観察していたが、どうやら「クロ」の線が濃くなってきた。
民主党 衆議院 埼玉10区 松崎哲久議員
ことの発端はこの記事。
民主・松崎議員が「恫喝」か 「俺を誰だと思ってる」(産経 10.11.18)
民主党の松崎哲久衆院議員(60)=埼玉10区=が今年7月、航空自衛隊入間基地(埼玉県狭山市)で行われた納涼祭で秘書が運転する車を呼び寄せる際、空自側の規則どおりの対応に不満を抱き、隊員に「おれをだれだと思っているのか」と“恫喝(どうかつ)”ともとれる発言をしていたことが17日、分かった。防衛省幹部や、自衛隊を後援する民間団体「航友会」関係者が明らかにした。
入間基地では今月3日の航空祭で、航友会の会長が「民主党政権は早くつぶれてほしい」と発言。これを受け、防衛省は自衛隊施設での民間人による政権批判の封じ込めを求める事務次官通達を出した。松崎氏は会場で会長の発言も聞いており、周囲に強い不快感を示していたため、「納涼祭でのトラブルも遠因になり、異例の通達につながったのでは」(防衛省幹部)との見方も出ている。
松崎氏は7月27日の納涼祭に来賓として出席。帰る際に駐車場から約30メートル離れた場所に自分の車を呼び寄せるよう、車両誘導担当の隊員に要求した。だが、歩行者の安全確保策として片側通行にしていた道路を逆走させることになるため、隊員は松崎氏に駐車場まで歩くよう求めた。
ところが、松崎氏は歩行者はいないとして車を寄せるよう指示。隊員が拒否したところ、「おれをだれだと思っているのか」「お前では話にならない」などと発言した。
別の隊員が松崎氏の秘書が運転する車を逆走させる形で寄せると、「やればできるじゃないか」という趣旨の発言もした。誘導担当の隊員が「2度と来るな」とつぶやくと、松崎氏は「もう1度、言ってみろ」と迫ったとされる。こうした過程で、松崎氏が誘導担当の胸をわしづかみにする場面もあったという。
松崎氏は産経新聞の取材に一連の発言をすべて否定し、「(隊員の)体には触れていない」と述べた。一方、「(受付を通り越して)駐車場でしか車を降りられないなど誘導システムが不適切だと指摘はした」と説明し、「隊員に2度と来るなと言われたことも事実。(自分は)何も言っていない」と話している。
(ここまで)
もうこれだけでもいくらでもツッコめるが、どれだけ事実かわからなかったので推移を見ていた。次に出てきたのが松崎氏からの反論。彼のHPから。
産経新聞報道に関して(最新版)
まず、支援者の方々に、大きなご心配をおかけしておりますことをお詫び申し上げます。もちろん、7月の納涼祭の件はいわれなき中傷であり、全く事実無根です。
当日、基地内の誘導の仕方が不適切だと思いましたので、その旨は指摘しました。私に対し暴言を吐いた隊員には手も足も触れていません。「松崎議員自衛官を恫喝」「車逆走指示」「誰だと思っている」と見出しを掲げているのは、謀略の類で新聞報道の名にも値しない記事ですし、とにかく民主党議員を片端から悪者に仕立て上げようとの魂胆が見え透いていて、仲間の多くからも(産経新聞の記者たちを含めて)毅然と対応しろと励まされています。
私が一方通行の「逆走」を要求したこともありません。そこは両面通行の場所でしたから、受付方向に車が通れないと思う方が無理なのです。事情を聞いている時、上官の一人が私の車を誘導してきましたので乗り込みましたが、その際、男性隊員に「二度と来るな」と悪態をつかれました。さすがにムッとしましたが、挑発に乗ったらダメだと思い、こらえて立ち去りました。後日、基地側から謝罪がありましたが、私が謝罪を求めたのではなく、あくまで誘導システムに問題があることを指摘したのです。私は、むしろ彼の立場に配慮して、説明に来た基地の幹部に、「議員とは思わないで言ったのだろうが、誰であれ市民に対して『二度と来るな』と暴言を吐くのは良くない」と言ったものを、当日のことに事実を曲げ、趣旨を全く逆に変えて宣伝されています。が、本筋は11月の話の逆恨みでしょう。
産経は一部しか書いていませんが、11月3日の入間基地航空祭の祝賀会場で、協力団体の会長が「みんなで、一刻も早く菅政権をぶっつぶして、昔の自民党政権に戻しましょう」(防衛省の記録)と、隊員を煽動する発言をしたのです。これが不適切であるのは論をまたないと思います。
翌日に報告を受けた防衛省も「自衛隊法」等の政治的行為の制限に違反するという認識で事務次官通達を出しましたが、自衛隊員に倒閣を煽動するのは、自衛隊は文民である首相や防衛大臣によるシビリアン・コントロールに服する大原則に反します。もちろん、民間人が基地外の、公式行事でない場所で自由に発言するのを封じるものではありません。しかし、その大原則をルーズにしていると、戦前の軍国主義の跋扈による蹉跌を繰り返してしまう恐れがあるのです。
本当は、私はこれを基地内の問題だけにとどめておこうと思ったのですが、自衛隊側の問題意識が本省への迅速な報告になったようです。その判断に異を唱えるものではありませんが、結果、私が狙い打ちにされてしまいました。
事務次官通達は「隊員の政治的中立性の確保について」というものです。市民が市民として菅内閣の政策を批判されるのは自由ですが、そこに隊員を巻き込むかのような動きは、かえって自衛隊の為にもならないと思います。支援者の皆々様に対してお詫びを繰り返しますとともに、関係各位にはご自制をお願い申し上げます。
(ここまで)
「最新版」とわざわざ註を入れたのは、この記事が少なくとも2回に渡って書き直されたからである。以下、魚拓を。
(11/19の魚拓)
http://megalodon.jp/2010-1119-0311-35/matsuzakit.jp/
(11/22の魚拓)
http://megalodon.jp/2010-1122-2057-11/matsuzakit.jp/
(11/29の魚拓)
http://megalodon.jp/2010-1129-1717-15/matsuzakit.jp/
日を追うにつれ文章量が増え、なぜか2010年11月18日という日付も消える一方で、「今後も正論を貫きます」という項が増えている。日付を消すことで事件のリアリティをぼかそうとでもしているのか。あるいは文章量を増やすことで、木の葉を森に隠そうとでもしているのか。意図はいまいちはっきりしないが、上記引用部の、字を大きくした部分が一つ目のポイントであることは変わらず、そこを松崎氏も変えてはいない。
>私が一方通行の「逆走」を要求したこともありません。そこは両面通行の場所でしたから、受付方向に車が通れないと思う方が無理
ここである。
その道が一方通行だったのか、両面通行(両側通行と言うのではないか?)だったのかは、客観的な事実として後で確認ができるはずだ。ただ、
>受付方向に車が通れないと「思う」方が無理
という言い方を松崎氏がしている点はやや不思議である。本当にこの道が両面通行だったのなら、車がこちらの方向に通れる/通れないと
「思う」
などという言葉づかいは誰もしないであろうからだ。もし松崎氏の立場に立つならば、
>受付方向に車は通せないという自衛官の主張自体がおかしい
という発言になる方がよほど自然だろう。
この指摘は揚げ足取りではなく、松崎氏も含めて、その道が片側通行だったのか、両面通行だったのかという「認識(=思うこと)」に関して、自衛官と松崎氏の間に、ある程度大きな摩擦(それが言い争いなのか、殴り合いのケンカなのかはわからないが)があったことが、彼自身の文章にもにじみ出ているということだ。
二つ目のポイントは、普段から職務に忠実に、そして生ぬるい「文官」などよりはよほど「文民統制」について意識をしているであろう、現場の自衛官が、何の理由もなしに
>二度と来るな
などという「悪態をつく」のかどうかである。民主党基準(笑)で言えば、こういう発言は松崎氏の言う「挑発」どころではなく、明らかな「文民統制違反的発言」であり、「どういうことだ?」と意図を問い、その答え次第ではその発言自体を大問題にすべきであろうに。なぜこの発言に対して、松崎氏はあっさりと無視ができるのか。この点について彼は自分の文章では全く触れていない。
このように、腑に落ちない点を感じていると、22日に新しいニュースが出てきた。それは、この松崎氏が、11月3日の入間基地での協力団体会長の政権批判発言に関し、基地司令らを呼び出していたことが国会質疑でわかったということだ。
空自隊員「恫喝」の民主・松崎氏 政権批判発言後、基地司令呼び出す(産経 10.11.22)
自衛隊関連行事の来賓に政治的発言を控えるよう求めた防衛省の事務次官通達問題で、民主党の松崎哲久衆院議員が通達発出のきっかけとなった航空自衛隊入間基地(埼玉県狭山市)での協力団体会長の政権批判発言に関し、基地司令らを呼び出していたことが22日午前の参院予算委員会一般質疑でわかった。
自民党の佐藤正久氏が、「(政権批判発言のあった航空祭の翌日の)11月4日に松崎議員から抗議があったのではないか」とただすと、北沢俊美防衛相は「その事実は後日、報告を受けた。事実関係を知りたいということだと思う。向こう(松崎氏)から呼び出しがあった」と明かした。
また、その際には「入間基地司令と官房文書課長がうかがい、基地司令から祝賀会での協力団体会長のあいさつ内容を申し上げ、文書課長は政務三役の指示で、同じような事案が起こらないよう必要な対策を講じる旨の防衛省の方針を話した」と説明。「(松崎氏による)抗議ということではなかった」と佐藤氏の指摘を否定した。
松崎氏は7月に同基地で行われた納涼祭で、車の誘導をめぐり隊員に“恫喝(どうかつ)”したとの指摘が出ている。
恫喝の指摘が出ているのは11月の航空祭ではなく、7月の納涼祭のときであることを間違ってはならない。しかし、松崎氏側から、同じ入間基地の基地指令をわざわざ呼び出し、11月の件に関して説明を受ける(この記事範囲ではここまでしか推測できない)ほど、松崎氏は自衛隊や、いわゆる政治家などの文官が自衛隊員という武官を統制するという「文民統制」の発想に関してかなりの「こだわり」を持っていることは、この事実からも十分に推測できる。実際に、彼自身のHPでも、「文民統制」や「運用については規律を重視し、厳正におこなわれなくてはならない」という主旨の発言を上記引用ページでも繰り返している。
これだけ文民統制に関心を持っている衆議院議員が、「二度と来るな」という自衛官の発言を、ただの「挑発」とだけしか受け止めないとは・・・・ますます腑に落ちない。
そう思っていると、7月の納涼祭の件に関して、防衛省が独自に内部調査していた結果が28日に報道された。
長くなりそうなので「2」に続く。