「阿部田」「笠形」 奈良県田原本町

「阿部田」
　
国道二十四号線、千代の交差点の東、笠方へ抜ける手前に阿部田と言う集落が有ります。

ここも条里制の残る営農地帯。
田原本旧町を離れた集落は、殆ど全部と言って良い程、条里制の後が残り、長く営まれた歴史的価値の高い農村と、中世豪族の発展の礎を築いた環濠集落です。

ここは集落の中心を東西に用水路が通り、その川筋に沿って大きな民家が立ち並んでいます。

阿部田の地名は、おそらくは「阿部氏」から来たのでしょう。

笠形と違い、ここの神社は市杵島姫を祀ります。

ここに有る十念寺の開基は、元亀元年（１５７０年）と伝えられて居ますが、中には多くの仏像が安置され、平安、鎌倉、室町時代の物が多く、詳細は解りませんが、おそらくは古くから在った寺院を継承したものと思われます。


「笠形」　

田原本町の東の端近く、蔵堂の手前、味間の北に笠形と言う二百戸に満たない集落が有ります。

集落の中を用水路が走るこの地も又条里制の残る田園風景の中に有ります。

田原本の寺川近くを通る古道「下ッ道」、蔵堂の守屋神社を抜ける「上ッ道」そしてその中間を通る「中ッ道」の通りに位置し、集落の東を通っていたとされます。

「笠形」は古代「伊与戸の庄」の中の春日大社の神田「春日田」が新屋敷村として独立その後、元の春日田が笠形に変化したもので、春日大社の神田がそのまま名前として残った良い例でしょう（集落の東が伊与戸の集落です）。

この集落に有る春日神社は、勿論春日大社と同じ神様を祀って居ますが、古い時代には毘沙門天社と呼んでいたそうです。
毘沙門天は飛鳥時代、福徳の神として信仰された神様で、当時からこの地の富裕の神として信仰されたものと思われます。