NPO九州森林ネットワーク

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木材の合法証明と森林施業計画

2007年01月20日 02時48分37秒 | <日々徒然・イベント>
先に、ブログで案内しましたように、1月11日に「グリーン購入法と違法伐採対策」として全木連の藤原敬氏に講演をお願いしました。合法伐採証明の方法についてのガイドライン作成などにこの間関わってこられただけに、多くの情報を得ることができましたし、持続可能な森林経営との関連性なども議論することが出来、とても有意義でした。以下、その概要及び特に、日本国内における証明方法について森林施業計画との関係で、合法性(ひいては持続可能性)が担保できるのかどうか、問題点を指摘したいと思います。
 
2005年7月のグレンイーグルスサミットの際、「違法伐採に取り組むことが、森林の持続可能な管理に向けた重要な一歩であることに合意」し、違法伐採について具体的な行動をとることが確認されました。日本では昨年、グリーン購入法第6条の環境物品等の調達基本方針に関わる基本方針で、製材等について「その伐採に当たって生産された国における森林に関する法令にてらして合法な木材であること」が追記されました。そして、林野庁で昨年2月にガイドラインが作成されました。
 
ガイドラインでは、合法性の証明のためには、①既存(日本ではFSCとSGEC)の森林認証制度及びCoc認証制度を活用した証明、②森林・林業・木材産業関係団体の認定を得て事業体が行う証明、③個別企業等の独自取り組みによる証明(森林所有から、伐採、加工まですべての行程を1企業が行う場合)という3つの証明方法があります。特に、②に関してどうやって、合法性を担保する仕組みを作るのかが大きな課題であったとのことです。具体的には、伐採時に合法性の証明書を作成し、素材生産、木材流通・加工という行程で、業界団体から認定を受けた「合法木材供給事業体」業者だけが合法木材であると記載した納品書を次の業者に渡して、最終的に合法材の供給が可能となるとされています。

つまり、政府が調達する木材製品の最低要件として違法伐採材を排除するということとなり、この動きが広がっていけば、ダンピング的な違法伐採材を市場から排除し、持続可能な森林経営の取り組みを支援できるものとして注目されます。手法としては地球サミット以来世界で広まってきた森林認証と流通段階での分別、ラベリングという手法を政府の調達という面でも政策的に援用した形となっている点で意義深いといえます。
 
既に約100の認証をする団体(各県の森林組合連合会や県木連、その他合板や木材市場の連合会など)とそれらから「合法木材供給事業体」として認定をうけた事業体が約4000社に上るそうです。問題は、第一に、会員であれば当然合法材を取り扱う資格があるとしてOKされた事業体が本当に合法証明のある木材のみを分別して取り扱うのかどうか、第二に、伐採段階で合法材として証明された材が本当に合法的に伐採されたといえるのかどうかということです。

我が国の政府調達について、他国に対してもそうした証明義務を課すわけですから、国内で違法材を合法材として使用したとなると立つ瀬がなくなります。伐採される国における法律に基づいているのかどうかが問われるので、各国の森林法の水準とその運用状況が問われることになります。日本の森林法は保安林制度と森林計画制度が大きな柱となっていて、森林所有者若しくは所有者から長期施業受託を受けた事業体は森林施業計画を策定しなければなりません。伐採時の証明書には次の4通りがあります。
 
 1.保安林の伐採材:県から発行された伐採許可証
 2.保安林以外の施業計画策定森林の伐採材:市町村による施業計画の認定書の写し
 3.施業計画を策定していない森林:市町村に提出した伐採届け出の写し
 4.国有林材:合法材だと記載された売買契約書の写し
 
私は民有林を主に研究しているので、4の国有林についてはわかりませんが、この間、九州各地を調査してきた経験からいうと、1~3については種々の問題が想定されます。

 1.保安林について・・・許可なしの完全な違法伐採材も少なからずあるが、これを排除することはできる。しかし許可証があっても、①許可面積以上の伐採、②許可伐採後、計画通りの植栽が行われない場合がある。また、持続可能性という点でいうと、保安林の種類と各県の判断で伐採許可面積の上限が設定されているが、「年度を変えれば前年に伐採したすぐ隣を伐採できるので、制限なしといっしょ」という素材業者の声も聞く。次々に伐採されれば、大面積に皆伐したことと同じであり、公益的機能の低下が懸念される。
 
 2.施業計画策定森林について・・・この間、補助率のかさ上げや交付金の基準などによって施業計画の実質化が政策的に図られているものの、計画になかった場所を伐採した後に計画の変更を行う場合が非常に多い。「変更を前提とした計画」であり、これを合法材としてよいのか疑問。
 
 3.伐採届け出について・・・施業計画を作成していない所有者から伐採届け出そのものがでていない場合が多い(県によってかなり提出率は異なる)。市町村森林整備計画にそって市町村が指導できることになっているが、人数不足や専門的な技術職ではない担当者ではほとんどの市町村では受け取るだけである。また、伐採面積の上限や方法についての規制はなく、例えば、熊本県球磨村の96haの皆伐再造林放棄地では伐採届け出が出ていたわけなので、伐採した時点では、あくまで届け出があるので、合法材である。その後、地元集落から危険だとの意見が出される中で、村は届け出どおりの植栽を所有者に要請したが、結局植えられなかったということでした。
 
以上のように、現状の森林法の下で合法材とされるものでも、合法性ましてや持続可能性の担保は難しいと考えます。少なくとも、皆伐面積の上限や伐採方法に関する制限など伐採のルール化が必要であり、その点森林法を見直す必要があると思います。国内認証であるSGECは設立当初から日本の森林計画制度に則った認証ということで、森林施業計画をベースに、施業計画では考慮されない基準を審査することで手続きを簡素化しています。更に、国際認証であるFSCも日本の森林に合わせた審査基準作りに着手していて、その際も森林施業計画が重視されるようです。

こうした流れの中で、日本の森林管理のベースとなる森林法を持続可能性まで担保できる水準まで上げること、並びに施業計画の実質化を高めることが非常に重要だと思います。
 
以上、長文になってしまいました。第7回フォーラムの議論にも繋がると思い書きました。
なお、合法証明などに関する情報については、HP合法木材ナビに詳しいので、参照にして下さい。
   (佐藤/福岡)