oregonian way of life. 

オレゴンでの学生生活から南下して社会人生活へ。IT産業でホットなサンフランシスコ・ベイエリアで地味~に文系の仕事してます

歴史家は「時の通訳者」

2005-12-31 | 歴史
視点を変えると、同じものが違って見えます。Aにとっては普通でも、Bにとっては変とか。『クレヨンしんちゃん』のあるエピソードで、パパのひろしが上司を連れて夜に帰宅。あのしんちゃんが呆れるほどのドンちゃん騒ぎを二人で繰り広げますが、翌朝にはピシッとして出勤する二人。それをみてしんちゃん、「大人ってわかんないゾ。」会社員には当たり前のこの光景が、子どものしんちゃんには奇怪に写ったようです。

視点の違いとうのは、アメリカと日本の間でも当然あります。男と女の間でもあるでしょう。子どもが生まれて親になったら、社会が違ってみえるようになった、というのもよく聞きます。一般的に認識されていないとわたしが思うのが、「過去」と「現在」の視点の違いです。「過去」からみて「現在」、逆に「現在」からみて「過去」が変だと思うことはたくさんあります。昔は貧乏人が食べるものとされていた肉が、現代ではご馳走とみなさている日本。(少なくとも表面上は)人種平等を重んじる現代からみると、奴隷制度に代表される大っぴらな人種差別があった過去が信じられないアメリカ。時の視点を変えるというのも、この現代社会を考える一つの方法論です。このブログの多くの記事を読んで下さった方はお分かりのように、わたしは、現代のこの世の中を考察する一つの手段として、過去の視点を取り入れることがよくあります。過去の視点から現代をみると、現在のわたし達には当たり前であることが、実はおかしなことに思えることがよくあるからです。

わたしが考える歴史家の役割というのは、過去と現代の橋渡しをする通訳者。この「橋渡し」という言葉は例えば、「将来、日本とアメリカの架け橋になりたい」というように、二国間の間によく用いられる言葉ですが、時の区分にも使えます。そして、日本語と英語の通訳者が、それぞれの文化背景や言葉の文脈を把握していないとうまく訳せないように、歴史家というのも、時代背景を把握する必要があります。そうしないと例えば、「アフリカ人を奴隷にしてたんだって。昔の人はひどいことするね~。アフリカ人だって同じ人間なのにね~」などと、現代の視点からみた道徳的判断(moral judgment)だけで終わってしまいます。しかし、奴隷制度が行われていた時代背景を把握すれば、なぜそのような、現代の視点からみると野蛮なことが平然と行われていたか、自分なりに理解できるはず。「アフリカ人を奴隷にするなんてひどい!」だけでは、その時代を理解したことにはなりません。

日本では、「歴史の勉強=年代の暗記」だと思われているような節があります。特に受験においては、歴史は暗記科目扱い。歴史上の人物や事柄を暗記することに、一体何の意味があるのでしょうか?歴史の勉強をするというのは本来、過去と現代という異なる時代の間に立って、通訳、つまり解釈の仕方を学ぶこと。ベジタリアンというのも非常に誤解されていると思うけれど、歴史の勉強というのも誤解されているように思います。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
2005年最終 (マーフィー)
2005-12-31 19:04:56
しんのすけ様、毎日いろいろ興味ある話題を提供いただき、誠にありがとうございますm(_ _)m 2006年もクレヨンしんちゃんネタを楽しみにしております。 良い年になりますようにo(^-^)o
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こちらこそ (しんのすけ)
2006-01-01 01:03:43
マーフィーさん、こちらこそお世話になりました。よだれがたれそうな画像を楽しみにしています。こちらはまだ31日の朝ですが、日本はもうお正月ですね。良い年になりますように。
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歴史の勉強は現在と過去の通訳の仕方を学ぶこと (vegi3)
2006-01-01 01:42:47
しんのすけさんって頭いいんだなぁ~。私にはこんな文章書けない。



〔わたしが考える歴史家の役割というのは、過去と現代の橋渡しをする通訳者。〕

〔歴史の勉強をするというのは本来、過去と現代という異なる時代の間に立って、通訳(つまり、解釈)の仕方を学ぶこと。〕



すごく視点が新しい。でもそのとぉ~り(-.-)bだと思うし、そういえばそうだ、なんで気づかなかったんだろうって思えることがいっぱい。

すんごく納得します。



>昔は貧乏人が食べるものとされていた肉が、現代ではご馳走とみなさている日本



そうだったんですか~。

私もよく、150年前の日本は肉食してなかったんだよーと人に言うと、ウサギや馬の肉を食べていたらしいよといわれることがあります。そういう人って貧乏な人だったのかもしれませんね。



がんばって勉強します。

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今年もよろしく (しんのすけ)
2006-01-01 01:54:24
vegi3さん、新年明けましておめでとうございます。日本人の肉食については、12月18日の記事『米と肉―――日本史編』を読んでいただければ、と思います。今年もよろしくお願いいたします。
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なるほど (Kurampon)
2006-01-02 15:19:23
こんにちは。マーフィさんのところから来ました。

現代の道徳・倫理観でもって、過去を裁くのは意味無しと思いますが、過去の視点をもって現代を見るのはいいですね。

江戸中期に「未来モノ」ジャンルの大衆小説が流行ったそうで、その中に書かれてる未来像というのが、

・季節感が無くなる(旬の時期がベラボーに早まる)

・各界での女性の台頭(男性独自の分野が無くなる)

・自然破壊(山奥まで宅地化が進み、神聖な山も俗っぽくなる)

・日本語が乱れ、通言(業界用語)が流行り、ついには得たいの知れないカタカナ言葉が流行する。

などなど、「当たってるやん」という予言(江戸時代には冗談として書かれてるんですけど)がたくさんあります。杉浦日向子さんの本で読みました。

そういうのと現代を比べてみるのも、おもしろいかもしれないですね。
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はじめまして (しんのすけ)
2006-01-03 04:29:13
こちらこそ、はじめまして。Kuramponさんのブログも拝見させていただきました。マーフィーさんもそうですが、みなさん、ベジタリアンにフレンドリーではない日本で、それなりにやってらっしゃって感心します。



江戸時代の町民文化はおもしろそうですね。わたしの親が『お江戸でござる』のファンで、親同士が番組の話をしているのをよく聞いていました。わたしは過去と現代とを比較して、なぜこんな違いが出てきたんだろう、と考えるのが好きです。
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