oregonian way of life. 

オレゴンでの学生生活から南下して社会人生活へ。IT産業でホットなサンフランシスコ・ベイエリアで地味~に文系の仕事してます

女性の理想体型は、なぜ鉛筆型になったのか?

2005-12-11 | ジェンダー
先週の週刊誌『ニューズ・ウィーク』(アメリカ版)が、拒食症が低年齢化していることを報告していました。本屋でゴシップ誌の表紙を何気に見ていると、やれ誰々(適当にセレブの名を入れよ)が拒食症だ、もしくはそれっぽい、という文字が飛び込んできます。鉛筆のような体型をしている女優さんも、確かに多いですね。

女性の理想体型というのは、元々はふくよかな豊満型でした。先日、豊かさ(abundance)の象徴はエキゾチックなものだといいましたが、女性も豊かさの象徴でした。子どもを生むからです。英語で出産のことをreproduction(re=再び、production=生産)と言いますね。大雑把に言えば、19世紀までは、豊満な体型をした女性が絵画や広告によく出ていました(写真上)。しかし、20世紀以降は現在に至るまで、鉛筆のような体型をした女性が、広告では理想として描かれていることが多いですね。女性の理想体型はなぜスリム化したのでしょう?

アメリカ史の話になりますが、19世紀に市場経済が発展するのに平行して、女性の理想体系もスリム化していったようです。19世紀初頭の産業革命の前までは、多くが農村で暮らし、女性や子どもも大事な労働力の一部でした。しかし、革命開始以降、中流階級以上に限っていえば、男性は外で働き、女性は家で主婦をするというように、社会構造が変化しました。家が居場所になった女性は、モノの生産活動に従事せず、子育てや子どもの教育など、道徳的な役割を任されました。このような女性の役割の変化によって、「女性=物質的な豊かさの象徴」から「女性=精神面を重視する教育者」に変わっていったのです。実際、中流階級以上に限っての話だと思いますが、19世紀初めのアメリカ女性は、平均で6、7人もの子どもを生んでいたようです。それが、100年後には2、3人ぐらいに。豊かさの象徴または理想として、女性が豊満な肉体を持つ意味が、時代の変化とともになくなったのです。

教育者の他に、そんな女性に割り当てられた役割は「消費者」。モノの生産活動に従事しない女性は、市場にある製品を購入することによって、料理などを含む、家庭全般を管理するようになったのです。

先ほど「中流以上の女性は」と限定したように、外で働かなくてもいい女性というのは、ある意味ステータス。それだけ夫の収入がいい、という証拠だからです。19世紀のいわゆる「ビクトリア朝時代」が舞台の映画などをみると、いいところの女性というのはみんな、痩せて(半分はコルセットのおかげ?)「しなっ」とした女性。このような女性を妻に持っていることが、男性にとってはステータスだったわけです。対照的に、労働者階級の女性というのは、工場にしろ農場にしろ、ハードな生産活動に従事せねばならず、鉛筆型の体型などにこだわっていられなかったのです。映画『風と共に去りぬ』のビビアン・リーと召使いの体型を比較すれば、ここで何を言っているか分かりますね。

1920年代のアメリカ好況期の多くの広告は、女性の体型を直線に近いような形で表しています(写真下)。女性はかつて豊かさの象徴だったなどとは、そのような広告に見ることはできません。経済体系が変わると、それにつれて社会・文化構造まで変化するんですね。あくまでもアメリカの話でしたが、ダイエット産業花盛りの日本も、似たような歴史を経てきたのでは?


(1894年のある広告より。稲の穂のようなものを携えて、ムチッとした体つきの女性がモデルになっています。多産性(fecundity)を表す女性として描かれています)


(1920年代のある広告より。すらっとしてモダンな女性。いかにも都会に住む有閑階級の女性という感じですね)

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2 コメント

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うーん。。。 (ふぐ太郎)
2005-12-19 13:18:21
なるほどねー。。。外で働かなくても家に入れるのはよいステイタスだったのですね。。。

私は共働きで子供もいないし、お金持ちになっても自分の職はずっと持ちたいだろうなー。。。
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理想の女性像 (しんのすけ)
2005-12-20 01:40:08
まあ、これは19世紀の話ですから。理想の女性像というのはこれからも変わっていくのか、楽しみですね。
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