われらしんじんのこども

真人幼稚園の子どもたちの日々の様子や、
  楽しいエピソードなどをお伝えしています。

ブールデル体験!

2007-09-07 10:52:28 | Weblog

 先週末に西大畑にあります新潟市美術館で「巨匠 ブールデル展」を観てきました。ご存知の方も多いと思いますが、ブールデルはロダンと並び称される彫刻家の巨匠であります。私はその昔、ロダンについては(主にその人物像について興味があり)様々な文献などを調べたことがありましたが、実はブールデルについてはそれほど詳しくはなかったのです。どこかでその名前くらいは聞いたことがあったかもしれませんが、記憶に残るものではありませんでした。しかし、今回の展覧会で初めてその作品群に触れ、まるで心をわし掴みにされるようにしていっぺんに魅了されてしまいました。様々な芸術作品についての感想は人それぞれ違うと思うのですが、少なくとも私は久しぶりに新鮮な感動を覚え、その精神性、芸術性の高さに圧倒されました。ブールデルは美術史の中ではすでに古典的な芸術家ではありますが、例えば難解で独りよがりになりがちな現代アートに慣らされ、すっかり辟易している私のような者にとっては、その作品はむしろ新鮮に感じるのかもしれません。古い時代の作家であるがゆえに、人間の本質にストレートに迫ろうとしている作風は、古き良き時代の空気や人々の気分まで(作家の緻密なその手仕事を通して)私たちに伝えてくれているような気がしてならないのです。

 今回の展覧会の目玉はなんと言っても、彼のもっとも有名な作品「弓を引くヘラクレス」で、それは誰もが認める一級の完成度でありました。これまでは写真などでしか見ることができなかったわけですが、実物は私が思っていたよりもずっと大きな作品(大作と呼ぶべきであろう)で、その迫力にしばし立ち止まって見入ってしまいました。しかし、今回初めて出会ったブールデル作品の中で特に私の印象に残ったのは、ベートーベンを題材にした連作でした。解説によるとブールデルは若かりしころからベートーベンの音楽に心酔していたようで、彼をモチーフにした作品を生涯に80点あまりも残しているのだそうです。その中の5~6点が今回出展されていたわけですが、いずれも優れた作品であったと思います。ベートーベンが大好きな私にとっては、言わばブールデルの作品を通してブールデルのベートーベンにも出会うことができたということなので、とりわけ感慨深い思いがしたのです。その中でも特に「風の中のベートーベン」という作品は同じ芸術家として人間ベートーベンの人物像に深く目を向けた作家性の強い作品になっていて、ことのほか感銘を受けました。

 さて、作品解説はこれくらいにして、どうして今週のお便りでわざわざブールデルの作品展について書いたのかと申しますと、実はこのような彫刻を中心とした展覧会などはぜひ大人の私たちだけでなく幼稚園の子どもたちにもじっくり鑑賞して味わってもらいたいと常々考えていたからなのです。実際に美術館へ行き、自分の目で確かめてみて、これはぜひ真人の子どもたちにも体験してもらいたいと強く思ったしだいです。一緒に行った11ヶ月の娘もはじめはよく分からなかったようですが、ひとつひとつ一緒になって鑑賞していくうちに赤ん坊なりにそれら造形物の意味を理解したようで、とても刺激的な良い体験となったようでした。立体で表現された作品は視覚的にも子どもにとってとても馴染みやすいものなので、彼らの瑞々しい感性を磨くには有効な機会であると思います。ブールデルの作品の評価は人それぞれだと思いますが、作品の良し悪しよりもまず、本物に触れる、という体験をひとつでも多く子どもたちにさせてあげたいものだと思うのです。

 ではなぜ「本物に触れる体験」が必要なのか?

 それは、とりもなおさず、「本物に触れる体験」を通してしか自分のものにできない領域が表現という行為の中には含まれているためだからです。音楽も美術も文学もその他様々な表現活動はすべて本物に触れる実体験を通してはじめて自分の中に様々な要素が取り込まれ、体得していくものなのです。何もない、まったくの無からは優れた表現は生まれないのです。そういった意味では、すべての芸術は模倣から始まると言えるでしょう。現にこのブールデルも十年以上にわたってロダンの助手を務め、徹底的にその技法を学び、模倣し、そこからもう一度脱却してアンチ・ロダンを自分に課し、少しずつ努力しながらやがてオリジナルなブールデル的世界を作り上げていったのだといいます。

 どうぞまだご覧になっていらっしゃらない皆様、ぜひともお子さんをお連れになって、親子でブールデル体験をなさってみてください。

 会期は9月16日(日)までです。ぜひお勧めいたします。

*展覧会の詳細については下記URL

 「新潟市美術館公式サイト」をご覧ください

http://www.migh.net/museum/index.php?top=1&side=0&cal=&QCTG=%A4%BF%A4%C0%A4%A4%A4%DE%A4%B4%B0%C6%C6%E2%C3%E6%A4%CE%C5%B8%CD%F7%B2%F1&page=0&QID=202&search=&search_col=

*今日の画像は「弓を引くヘラクレス」市の広報紙「中央区だより」から転載。

 

コメント (1)
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