刃の如く鋭く冷たい風が吹き荒れ、暖かい温もりを持った太陽がその風から人を守るかのように姿を現し始めた午前7時頃、まだ小さく芽の出ていないじゃがいもたちは、東北大学に向かって歩みを進めていました。
3つの中でも大きなじゃがいもは少し緊張していました。2つの小さめのじゃがいもたちは、まだ土の中にいたいよう、と眠そうにしていました。
電車に揺られ数分。
「わぁ、きれい」
思わずそんな感想が漏れるようなところに東北大学馬術部はありました。
これでこそ番犬、というくらい必死に自分のテリトリーを守ろうとする、新じゃがのような色をしたお犬様からの熱烈な歓迎を受け進んだ先には、他の地域から来た、まだ芽の出ていない小さなものたちがたくさんいました。ピリッとはしていない。けれど、確かにいつもとは違う雰囲気に思わず2つの小さめのじゃがいもたちにも緊張が走ります。
正装に着替えたじゃがいもたちは、昨日満杯まで貯めた栄養分をエネルギーとして放出すべく、いざ参らんと馬場へ小さな一歩を踏み出しました。いつもと違う馬。いつもと違う景色。いつもと違う空気。小さなじゃがいもたちがそれを受け入れるのに時間はかかりませんでした。じゃがいもたちは小さいけれど、その心は強くしっかりとしたものだったのです。
試合開始。徐々にじゃがいもたちの出番が迫ってきます。
一番手は、3つの中でも一番大きなじゃがいも、田中沙季。彼女はよくできたじゃがいもでした。カルストン号をしっかりと動かし難なくこなしていきました。帰ってきた彼女からは、芽が出てきました。
二番手は、3つの中で一番小さなじゃがいも、楠野莉奈子。彼女はあまり心の強いじゃがいもではありませんでした。例によってお腹はピリピリとしていました。しかし、さざなみ号とともに無事帰ってくることができました。帰ってきた彼女からもまた、芽が出ていました。
三番手は、真ん中の大きさのじゃがいも、森翠。彼女はとても心の強いじゃがいもでした。少しやばいかも、と言われていたラ・カスター二ャ号に乗っても、いつものように一切の感情を表に出すことなく真顔で経路を回りきり帰ってきました。帰ってきた彼女からもやはり、芽が出ていました。
結果は予選2位。各馬の中でもみんな2位という結果になりました。もう少しこうできたのに悔しいな、いろいろなことに気を配る余裕がなかったな。沢山の思いがじゃがいもたちを包み込みます。納得のいく結果ではなかったかもしれません。しかし、その頭からはたしかに芽が出ていたのです。じゃがいもたちはたしかに成長し、大きな歩みで馬場から帰ってきたのです。この先、その芽を育てるも枯らすもじゃがいも次第。頑張ればきっと、春に美しい白い花を咲かせられるでしょう。今回の経験を経て、ひと回りもふた回りも大きくなったじゃがいもたちは、その顔に笑顔を浮かべ、今、北へ帰ろうとしています。
あとは無事に帰って、感謝を先輩方、そして同期のじゃがいもたちに伝えるだけです。
お家に帰るまでが大会。最後まで気を抜かず、ピカピカのじゃがいもに傷がつかないようにしましょう。
Potatoes be stronger.
※このお話は事実をもとに書いたフィクションです。
※お察しかと思いますが、書いたのは楠野です。
3つの中でも大きなじゃがいもは少し緊張していました。2つの小さめのじゃがいもたちは、まだ土の中にいたいよう、と眠そうにしていました。
電車に揺られ数分。
「わぁ、きれい」
思わずそんな感想が漏れるようなところに東北大学馬術部はありました。
これでこそ番犬、というくらい必死に自分のテリトリーを守ろうとする、新じゃがのような色をしたお犬様からの熱烈な歓迎を受け進んだ先には、他の地域から来た、まだ芽の出ていない小さなものたちがたくさんいました。ピリッとはしていない。けれど、確かにいつもとは違う雰囲気に思わず2つの小さめのじゃがいもたちにも緊張が走ります。
正装に着替えたじゃがいもたちは、昨日満杯まで貯めた栄養分をエネルギーとして放出すべく、いざ参らんと馬場へ小さな一歩を踏み出しました。いつもと違う馬。いつもと違う景色。いつもと違う空気。小さなじゃがいもたちがそれを受け入れるのに時間はかかりませんでした。じゃがいもたちは小さいけれど、その心は強くしっかりとしたものだったのです。
試合開始。徐々にじゃがいもたちの出番が迫ってきます。
一番手は、3つの中でも一番大きなじゃがいも、田中沙季。彼女はよくできたじゃがいもでした。カルストン号をしっかりと動かし難なくこなしていきました。帰ってきた彼女からは、芽が出てきました。
二番手は、3つの中で一番小さなじゃがいも、楠野莉奈子。彼女はあまり心の強いじゃがいもではありませんでした。例によってお腹はピリピリとしていました。しかし、さざなみ号とともに無事帰ってくることができました。帰ってきた彼女からもまた、芽が出ていました。
三番手は、真ん中の大きさのじゃがいも、森翠。彼女はとても心の強いじゃがいもでした。少しやばいかも、と言われていたラ・カスター二ャ号に乗っても、いつものように一切の感情を表に出すことなく真顔で経路を回りきり帰ってきました。帰ってきた彼女からもやはり、芽が出ていました。
結果は予選2位。各馬の中でもみんな2位という結果になりました。もう少しこうできたのに悔しいな、いろいろなことに気を配る余裕がなかったな。沢山の思いがじゃがいもたちを包み込みます。納得のいく結果ではなかったかもしれません。しかし、その頭からはたしかに芽が出ていたのです。じゃがいもたちはたしかに成長し、大きな歩みで馬場から帰ってきたのです。この先、その芽を育てるも枯らすもじゃがいも次第。頑張ればきっと、春に美しい白い花を咲かせられるでしょう。今回の経験を経て、ひと回りもふた回りも大きくなったじゃがいもたちは、その顔に笑顔を浮かべ、今、北へ帰ろうとしています。
あとは無事に帰って、感謝を先輩方、そして同期のじゃがいもたちに伝えるだけです。
お家に帰るまでが大会。最後まで気を抜かず、ピカピカのじゃがいもに傷がつかないようにしましょう。
Potatoes be stronger.
※このお話は事実をもとに書いたフィクションです。
※お察しかと思いますが、書いたのは楠野です。