Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「ミハスの落日」貫井徳郎のミステリ

2014-09-07 09:21:24 | ミステリ小説
                                       

海外を舞台にしたミステリ五編が収められている新潮社から出ている単行本です。著者が実際にすべての国に足を運んで書いたとあとがきにあります。
スペインのミハスでの昔あった奇妙な事件、あれは確か現場は密室だった・・・。記憶を思い出し偶然再会した幼馴染と話し合っていると思いがけない真相に行き当たる。

スウェーデンのストックホルムを舞台にした、容姿も平凡、女性と満足に口もきけない鬱屈した男の務めるビデオショップに現れたモデルのような女性との出会いがやがて・・・。

サンフランシスコで、保険会社の調査員にある日仕事以外では絶対に付き合いたくない恐ろしい刑事から面会を受ける。内容は保険金を直ぐに支払ってやれないかとの相談だった。
担当ではなかったが同僚に話を聞くと夫がベランダから落ち死亡した案件だった。妻はその時外出中だった。死亡した夫は彼女には三人目の夫だったが前の二人も事故死して彼女は
保険金を受け取っていた。刑事の脅しもあり調べていくと・・・。

インドネシアのジャカルタを舞台にした物語。男に捨てられ借金のカタに娼婦となって働く若い女。その店にある日東洋人のような男が客として現れる。優しい男に心癒される女。
最近この近くで娼婦が続けて殺害される事件が起きていた。刑事がひとり店に来て写真を見せる。それは彼女を捨てた男の写真だった。殺されたと刑事は云った。動機があるお前が
犯人じゃないのかと脅す。実は最近彼の姿を目撃していた。その事を話すと近所の店に聞き込みするから協力しろと云われる・・・。

アフリカのカイロを舞台にした物語。旅行会社でガイドとして働く男に指名でガイドを依頼してきたアメリカ人女性。たった一人でカイロに来た目的は・・・。

以上の五編ですが、それぞれ味のある話で現地の雰囲気なども上手く取り入れたミステリとなっています。
行った事のない国や場所を舞台にした物語はそれだけでも読むのが楽しいですが、その物語にミステリの味付けがなされていれば尚楽しいと思います。
精力的に作品を書き著作の多い作家ですが、どれも質の高いそして問題を含んだ内容が広く読者に指示されている作家です。

旅行記+ミステリといった内容でリラックスして読める一冊でした。

                                       

「三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人」倉阪鬼一郎のミステリ

2014-09-07 08:21:26 | ミステリ小説
                                       

この本は2010年の世界バカミスアワードの受賞作として知られています。このバカミスとは1995年の「このミステリがすごい」で小山正氏によって
これまで奇妙な味のミステリと言われていた内容の物をバカミスと表現され、それ以降バカミスと云う言葉が定着しています。このバカミスと云うのはバカバカしいミステリという意味合いですが、決して
作品そのものを侮辱することではなくて、読み終えた後にそんなバカなと絶句するような通常のミステリを超えた意外性や娯楽性に特化した作品を指す言葉です。

この「三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人」もミステリファンの人であれば大抵読んでいる作品です。でも、いま興味を持って読んでみようと本屋さんに行っても多分手に入らないでしょう。もちろん文庫化など
されていません。つまりそれだけマイナーな作品なんです。しかし、ミステリファンは知っています空前絶後の仕掛けが施されたこの作品を。読み終えたあとには言葉が出ません。著者の執念に
ただただ拍手を送るだけです。簡単に言えば「良くやるよ」ですが、アイデアを実行するその気概というか精神力に賛嘆します。物語は初めから伏線だらけです。奇妙な記述が続き怪しげな
展開で物語が進みます。謎の招待状で呼び寄せられた大学のあるサークルのメンバーが一人ひとり殺害されます。復讐のために殺人を実行していると犯人のモノローグもありますが
その様子がどこか変です。最後のネタバラシとさらにその後の著者の仕掛けの異様さに絶句すること確実です。たまにはこのようなバカミスも楽しんでみるのも良いでしょう。

決して読み終えたあと壁に向かって本を投げつける、そんなバカバカしいミステリでは有りません。