Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「白ゆき姫殺人事件」湊かなえのミステリ

2014-09-14 07:56:03 | ミステリ小説
                                      

格好はちゃんとしたミステリですが、かなり特異なレイアウトで作られています。事件が起き、その様子が各人の感想と共に会話文で綴られます。
メインは同僚女性が学生時代からの知り合いのルポライターに情報を流すと云うスタイルでストーリーが進みます。目撃証言などから一人の女性が浮かび上がります。
その女性は母親が危篤とウソをついて会社を休み行方不明でした。そして大学時代の友人、故郷の小学生時代のエピソードや仲の良かった女の子などの話が出てきます。すべて話し言葉で書かれていて
読者は話を聞いているような感じになります。これは「告白」などでも使っていた手法ですが、著者はこの会話文で読ませるのが上手いので効果的な手法といえます。
さて、現代はネット社会です。地球の裏側の小さな国の些細な出来事でもそのニュースは瞬く間に世界中に広がります。これに匿名という防御服を着た無責任なネズミがモラル無視の蛮行を繰り広げます。
掲示板に書き込まれる誹謗中傷。直ぐに実名や顔写真などが晒されます。この物語に登場するルポライターという職業に就く男さえも許しがたい軽薄さでブログにあれこれと綴ります。

追いつめられる一人の女性。しょせん他人事という無責任さがオーバーな表現になったり、間違った見方になってその人の真意が捻じ曲げられたりします。
友人でも肉親でもこの点は避けられません。人が人を評価するのはその人の主観でしかありません。職場で誰もが羨む美人が殺されたのは何故か、誰が殺したのか。
この部分をストーリーの核として、人の噂話やネットで無制限に広がる無責任な個人の感想こそが問題であると著者は捉え、勝手な憶測が先行する今の社会のあり方に問題提起しているのでしょう。