Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

『コン・ゲーム小説』その騙しのテクニック

2013-11-24 08:43:29 | ミステリ小説

 昨年公開された映画の原作が道尾秀介の「カラスの親指」です。confidence Game略してコン・ゲーム。つまり詐欺師を主役にした物語です。
 有名な作品はジェフリー・アーチャーの「百万ドルをとり返せ」です。
 これは古典的な名作として知られています。そして日本でも小林信彦の「紳士同盟」がよく出来たコン・ゲーム小説として知られています。
 この他にも五十嵐貴久の「FaKe」などありますが
 そう多く書かれているジャンルではありません。映画で云えばヘンリー・フォンダの「テキサスの五人の仲間」やポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードの「スティング」
 ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピットの「オーシャンズ11」などが良く知られている作品です。
 このコン・ゲーム小説にもパターンがあります。それは物語の主人公が騙されるというストーリーと、主人公たち仲間が組んで敵となる相手を騙すパターン。
 それから読んでいる読者や、観ている観客を騙すためにいろいろ策を弄するパターンなどがあります。
 相手を騙すのは「オーシャンズ11」などで読者や観客を騙すのが「テキサスの五人の仲間」や「カラスの親指」ですね。
 
 そういえば主人公が騙されるストーリーのものにマイケル・ダグラス主演の「ゲーム」という映画がありました。これもなかなか良く出来た映画でサスペンスタッチの面白い
 作品で好きな映画のひとつです。

 いかに爽やかに騙されるか、そこにこの様なコン・ゲームの面白さが凝縮されていると思います。

 ちなみに「テキサスの五人の仲間」はDVD化されていません。私は衛星放送で放映されたものをDVDにして持っています。その他の作品はDVDで観ることができます。
 興味のある方は一度ご覧になって下さい。

「天外消失」華麗なるトリック

2013-11-05 08:56:19 | ミステリ小説

<世界ミステリ全集>の最終巻として刊行された『37の短編』から14篇を選び、クレイトン・ロースンの短編「天外消失」などが収められたミステリ・アンソロジーはハヤカワ・ミステリとして出版されている。
この「天外消失」は密室不可能犯罪では、そのトリックの素晴らしさなどからとても有名な作品として知られている。
汚職判事を尾行中の刑事たちが見守る中電話ボックスに入った判事は煙のように消えうせてしまった。
この様なシチュエーションを示されて、あなたが探偵だったとしたらどの様にこのトリックを見破りますか?

『奇蹟販売』の店の主マリーニーは奇術師であり名探偵である。その彼が最後に種明かしをするまでこの消失トリックは解からなかった。
今読んでも素晴らしい短編ばかりが収められているこのアンソロジー。

ゆっくりとした時間の時に、珈琲を片手に知的好奇心を満足させるこの一冊をあなたもぜひ味わって下さい。

                 

ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」

2013-11-05 07:55:59 | ミステリ小説

古典的名作のヴァン・ダインが書いた「僧正殺人事件」です。勘違いされる方が居るかもしれませんが、別にお坊さんが殺される話ではありません。
この僧正とは、チェスの駒のひとつでビショップと呼ばれるものです。ビショップと名乗る謎の人物が起こす連続殺人。マザー・グースの童謡になぞられて殺害されるその理由とは?

悪魔的な魅力を持った犯人と、ファイロ・ヴァンスが論理的な推理の末に犯人を指摘する場面までページを捲る手が止まりません。
ミスディレクションの巧みさ。緻密なプロット。1929年に書かれた作品ですが今読んでもその完成度の高さに唸ります。

さて、仮にあなたが今大学生ぐらいの年齢としましょう。友人が、これ面白いから読んでみれば?と一冊のミステリをあなたに渡したとします。あなたはこれまで余りミステリなど
読む機会がなく、たまたま友人が貸してくれた一冊の本を読みました。その本が横溝正史の「獄門島」だとします。

この本の面白さにあなたが嵌まったとします。ミステリの面白さに気付いたあなたは次々と評判の作品を読破しました。
ほとんどの読むべきミステリと云われているものを読み終えたあなたは、これまで眼を向けなかった海外ミステリの古典作品に手を出したとします。
そんな折にこの「僧正殺人事件」を手に取り読んだとしたら、どうでしょうか?
きっと、感動や興奮、トリックやプロットの素晴らしさなどが薄く醒めて見えるかも知れません。
これは不幸なことです。しかし、避けられないことです。幾多のミステリがこの「僧正殺人事件」に衝撃を受けて
これを追いつけ追い越せとばかりに書かれたことか。それらの物を数多く読んだ末にこの本を手にしたとしたら、その衝撃や驚き
などが薄くなってしまうのも仕方がありません。古典と呼ばれる物のひとつの宿命ですから。

しかし、永遠に語り継がれる作品が古典と云われるものなんです。その面白さに期限はありません。

 ちなみに、『僧正殺人事件』に刺激を受けて横溝正史が書いたのが『獄門島』です。