Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「武家屋敷の殺人」小島正樹のミステリ

2014-08-25 11:25:56 | ミステリ小説
                                          

普通、一冊のミステリには大きな謎があって探偵あるいは刑事がその謎の解明に奮闘する、それが大まかなストーリーです。
でもこの作品は沢山の謎が登場します。少し詰め込みすぎじゃないのかと感じるほどです。冒頭から一軒の家探しという展開です。孤児院で育った女性が二十歳を過ぎ、育ててくれた孤児院の経営者夫婦から
捨てられていた当時一緒にあった日記などを渡されます。この日記を頼りに生まれた家を探そうとします。しかし、日記はとても奇妙な記述が多く具体的な地名など皆無です。でも依頼された弁護士と協力を
頼まれた弁護士の趣味のカヤック仲間があきれるほどの推理力で一軒の家を見つけます。その課程も謎めいた日記を正確にトレースした結果で読んでいるこちらを納得させるに充分なロジックです。
冒頭からこのような展開で、その日記にも奇妙な事件が書かれていて、見つけた家は昔の武家屋敷のころから不思議な出来事があったと記されています。具体的な手がかりが無い状態から一軒の家を探し当てる
それだけで驚きですが、ここからが沢山の謎の連発です。これは最後にはどうするんだろうと気になるほどです。ほとんどの謎は投げっぱなしの解決無しでうやむやにするのかと危惧するほどです。
でも著者は緻密なプロットを構築していました。次々に明らかになる謎。そして弁護士が推理し出来事に整合性を持たせます。それで収束か、と思うとカヤック仲間が更に驚きの説明を加え弁護士が解明
出来なかった謎を解き明かします。そして最後の一点の解明を見せて物語りは終息します。たくさんの散りばめられた謎がすべて解き明かされるラストまで怒涛の展開で読ませるミステリです。
ちょっと島田荘司に似た文体の書き方ですが、しっかりした文章で安心して読むことが出来ます。ここまで書くのはサービス精神旺盛な作家ということなんでしょうか。

                             
                                   

「高原のフーダニット」有栖川有栖のミステリ

2014-08-17 11:21:23 | ミステリ小説
                                      
ミステリの本格モノを書く作家として、その認知度はもう今さら説明の必要はない作家です。デビュー作の「月光ゲームYの悲劇゛88」が、
クイーンばりのロジックを駆使したミステリで大変面白く読んだ記憶があります。近年では「女王国の城」が本格ミステリ第一位、週間文春ミステリベスト10で第一位、このミステリがすごい!で第三位となり
ファンを喜ばせてくれました。おもに学生アリスシリーズ(江神二郎シリーズ)と作家アリスシリーズ(火村英生シリーズ)があり、他に「マジックミラー」「幻想運河」「赤い月、廃駅の上に」など
面白い作品があります。個人的には学生アリスシリーズは良いのですが、作家アリスシリーズの臨床犯罪学者火村英生と作家アリスとのコンビの作品はどうもイマイチ好きになれません。
どうも学者が犯罪捜査に首を突っ込みあれこれ捜査するという設定が馴染めないのです。もちろんこのパターンは沢山あります。刑事を主人公にした物語以外はすべてこのパターンといって差し支えないぐらいです。
でも何故かこの火村英生には馴染めないのです。作者も現場にシャシャリ出る学者に嫌悪感を隠そうともしない刑事を用意して、このパターンの有り得ない状況を肯定するような姿勢を示しています。
何故、火村シリーズに乗り切れないのか、久しぶりにこの「高原のフーダニット」を読んで解かった気がします。著者の人間性でしょうがとても生真面目な文章で出てくる人物も品行方正で考え方も行動も
しっかりとした人物ばかりです。もちろん犯罪が行われる訳ですから悪意を持った人間が登場するのですが、そこが画一的というかパターンとしての行動にしか見えないところがあります。
もっと毒の有る人物とかドロドロした狂気に憑かれた人間とかが出てくればと思います。このため久しぶりに読んだにも係わらず退屈を覚えてしまいました。この「高原のフーダニット」はタイトルの良さに
惹かれて読みましたが三作が収められた内容で、一作目はアリバイ崩し、二作目は夏目漱石の夢十夜のオマージュのような作品で怪異話の短編十作です。そして三作目がこの本のタイトルの
高原のフーダニットで火村がロジックで犯人を指摘するミステリとなっています。
「孤島パズル」とか「双頭の悪魔」とか好きな作品もあるのですが、どうも火村シリーズには馴染めない。とても残念な気がします。

                                     

「冬空トランス」長沢 樹のミステリ

2014-08-13 19:37:39 | ミステリ小説
                 

この本は第一作の「消失グラデーション」、第二作の「夏服パースペクティヴ」に繋がったストーリーの短編三編が収められた内容です。樋口真由消失シリーズと
銘打ってあるのはそのせいです。 前二作は読んでいて面白かったので当然この本も手にしました。
「モザイクとフェリスウィール」は遊佐 渉と樋口真由が出会うエピソードです。時間的には第二作の「夏服とパースペクティヴ」の事件以前ということです。
ここでは映像製作に絡んだ謎を遊佐 渉が解き樋口真由に近づく様子が描かれています。
「冬空トランス」はまた映像製作中に起きる事件で、密室にハウダニットを絡めた内容です。ここでも樋口真由の探偵としての属性が発揮され、元警視庁の捜査一課の刑事で今は探偵という渉の父親などが
登場してきます。この他にも面白いキャラクターがいろいろ登場して、会話の楽しさ面白さが読んでいてとても愉快です。
「夏風邪とキス以上のこと」は渉と樋口真由との関係が一歩進む様子が描かれています。その様子も第一作の「消失グラデーション」に出てきた謎の男「ヒカル君」と樋口真由との厳しい頭脳戦
を絡めて描かれています。この「ヒカル君」も全くの謎で、樋口真由を苦しめる知能の高さを持っており、この後も登場して樋口真由の好敵手になるような感じです。
個人的にはこの後も二人の物語が読みたいので、ぜひ作者にはシリーズとしてこの先も書き続けて欲しいものです。

                                   

「GODZILLAゴジラ」を観てきた。

2014-08-13 17:39:17 | 日記
いつも行くショッピング・モールにある109シネマズに行ってきた。ここのウリはIMAXがあること。
このIMAXのスクリーンで観ると病みつきになる。この「GODZILLA」も公開当事IMAXの3D上映でやっていたが、時間が取れずに中々行けなかった。
やっと今日観に行けたが「トランスフォーマーロストエイジ」が公開されていて、こっちがIMAXで上映になっており「GODILLA」は普通のスクリーンでの上映になっていた。
チケット売り場は混んでいたが、それは「ポケモン」や「ドラえもん」、「るろうに剣心」に「想い出のマーニー」などが一緒に上映されているから。
チケットを買って入ったら驚いたことに「GODZILLA」は思いのほか空いていた。客席に子供は皆無。そりゃあそうだろう、でもみんなどうしたんだ?
お父さんお母さんはお子様サービスでしょうがない。だが、他の連中はどうした?海か、プールか帰省中か?
VFXを見慣れた今でもこの手に汗握る映像はどうだ!肝心のストーリーもnice!だ。観終わってみれば単純と云えば単純。だがしかし、日本側に、東宝側に配慮したような
ゴジラの使い方といい見応えは充分。CGだと云うがあの質感はすごい。ラストシーンまで目が離せない。監督のギャレス・エドワーズも例え監督デビュー作が

好評だったとはいえ、この「GODZILLA」の監督に抜擢されてプレッシャーに負けずにここまでの作品を作るあげるとは凄い。
プロがプロを見る目は確かと云うことか。映像作家としてのキャリアをまたひとつギャレス・エドワーズは積み上げたということだ。
いずれにしても観る価値の有る映画だ。他の作品に押され気味だけれど「GODZILLA」を応援したい。
まだ観ていない人はぜひ劇場へ。         PS、上映前に予告編がいっぱい観れた、それだけでも楽しい。