Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

「中途の家」エラリー・クイーンのミステリ

2018-01-11 10:17:27 | ミステリ小説


1929年「ローマ帽子の謎」でデビュー。この時は覆面作家としてでした。
32年バーナビー・ロス名義で「Xの悲劇」を発表。 しかし、36年にこの作家の正体が公になりました。
この「中途の家」が発表された年のことです。

クイーン自選ベストの第三位に上げたのがこの「中途の家」です。 つまりクイーン自身もお気に入りということですね。
ちなみに一位は「チャイナ蜜柑」二位は「災厄の町」です。
話しは外れますが「災厄の町」は日本でも映画化されました。野村芳太郎監督 新藤兼人脚本による1979年制作の松竹映画
「配達されない三通の手紙」がそうです。

この映画も中々楽しめます。レンタル店では旧作100円コーナーにあるはずですから未見の方にはおススメです。

さて、この「中途の家」、一番に言えるのは安心して読めるということです。
最後のクイーンの謎解きの場面はかなりもつれた論理の展開になります。しかし、彼の推理は1ミリもズレません。

犯人は関係者の中にいる。このオーソドックスな展開の中で、クイーン自身が見て確認したもの、また全員の証言を
もとに論理を組み立て、そしてホンの少しの想像を加えて犯人に迫ります。

途中の何でもないようなエピソードも実は大事な伏線であったりと

細かく計算された文章と、しっかりと人物像を見せたりするとその筆致には感心します。
今読んでも少しも色あせた感じがしないのは凄い事だと思います。

クイーンが選んだ第三位のこの本。 ぜひ一読を。



「訪問者」恩田 陸のミステリ

2018-01-10 09:14:42 | ミステリ小説


山の中の洋館。集まった大企業の一族。三年前に洋館のそばにある湖で死んだ前最高指導者の女性。その女性に育てられた有名映画監督の男が最近急死した。

雑誌記者とカメラマンの二人が洋館を訪れる。亡くなった映画監督の取材と称して。

時間が遅くなり泊っていくことを勧められて二人は泊まることになる。やがて記者は偽りで映画監督の依頼でやって来た弁護士だと話す。死んだ映画監督の遺言を公開するためであり内容を確かめるためでもあるという。

内容とは今集まっている親族の中に死んだ映画監督の父親がいるということ。 自分から名乗り出れば監督の持つ著作権などすべての遺産を相続できるというもの。

しかし、誰も名乗り出ない。 やがて夜半から降り出した雨で土砂崩れが起き麓に続くただ一つの道が通行不能となる。

親族の中の一人が「訪問者には気をつけろ」という警告文が届いていたことを明かす。 訪問者とは誰を指すのか。がけ崩れが起きる前にはもう一人関係者がやって来ていた。

そして幼い少女が窓の外に三年前に亡くなった大おばあちゃまに似た女性の姿を見たと話す。 一同が外に調べに行くと見知らぬ男の死体があった。

                    
怪しい雰囲気と不穏な人間関係が作り出す不安。 この著者の作品にはこういったパターンで描かれるのがひとつの特徴です。

それにしても、このいかにもっていうこだわりの趣向( ´艸`) 嬉しくなりますね。 私などはここまで荒筋を読んだだけでもう読まずにはいられなくなります。

ここまで読んだだけでもう夢の中に扉を開けて二歩も三歩も足を踏み入れた状態です。  厳しい人は、それで?結末はどうなの?そんなのじゃあありきたりじゃないとか、中途半端な感じが拭えないとか

いろいろ仰います。 いいじゃないですか。すべてにパーフェクトを求めるなんて子供じみていると思います。どれもこれもハッキリさせるのではなくボンヤリした部分を残したまま終えるのもこの著者の特徴です。

読んでいる間どれだけ楽しめたかということでしょう。その意味では私はこの本はOKです。

      
            

「監視ごっこ」アンデシュデ・ラ・モッツのミステリ

2018-01-08 10:34:09 | ミステリ小説


ミステリとして紹介しましたが、どちらかと言うとサスペンススリラーとした方が良いかもしれません。

主人公は30歳を過ぎただらしのない男です。 ある日電車の中で携帯電話を拾います。金がない主人公は見たことも無い携帯を最新の機種と思い、こういったモノを扱う業者に高く売れると考えて持ち帰ります。

どうなっているのか普通の携帯のように使うことは出来ませんがメールが届きます。ゲームに参加しますか?という文面でYESとNOのボタンがあるだけです。

しばらくは薄気味悪くもあり放っておきましたが、興味が沸きYESのボタンを押しました。それはイタズラ程度のことをする内容でしたが上手くミッションをクリアすればポイントが与えられるというものです。

主人公は与えられた課題を実行すれば良いのですが、そのためにはこまごまとした下準備が必要です。しかし、そのところはまた別の人間がいて専門に手助けしてくれるというシステムになっていました。

主人公は一つの課題を実行します。 すると彼の行動が動画として記録されネットに公開されていたことが分かります。そしてクールという評価が彼のケータイに届きます。

もちろん主人公には手助けしてくれるものや彼の動きを動画に撮っているものが誰なのか分かりません。 それはそれでその役目のメンバーがいるのだという認識です。

彼がミッションをクリアするたびにクールという評価が多く集まり称賛されることに次第に充実感を覚えます。 これまでの彼には縁のない他人からの称賛の声にゲームにのめり込んでいきます。

でも始めは他愛もないドッキリカメラのようなことをする程度でしたが、次第に難易度が上がり大げさで犯罪めいたものになっていきます。

ゲームを仕掛けてくるのはいったい誰なのか? その目的は? そして主人公はこのあとどうなっていくのか?  興味をそそられますよね。( ´艸`)

ケータイ電話というツールを使ったアリがちなシチュエーションとストーリーですが、この小説の場合中盤から違った展開になっていきページを捲る手が止まりません。

好みの問題はありますが、私個人的にはハマりました。最後のページまで楽しめたのは間違いありません。

そしてこの「監視ごっこ」には続編にあたるものが出ています。「投稿炎上」というタイトルですが、なんか苦笑を禁じ得ないタイトルですが「監視ごっこ」も「投稿炎上」も日本で付けられたタイトルです。

ちょっと部屋の本棚に並んでいるのを友人などに見られたら誤解されるかも知れませんね。( ´艸`)