Mのミステリー研究所

古今東西の面白いミステリーを紹介します。
まだ読んでいないアナタにとっておきの一冊をご紹介。

『リップステイン』長沢樹のミステリ

2014-07-27 18:37:06 | ミステリ小説
                                    

「消失グラデーション」でデビューした著者の新作です。個人的に思うのはこの著者の本に出てくる人物たちはモノの本質が解かっている、だから登場する人物たちの
思考や動きや感情、そして会話などが読んでいて心地よい感じになります。渋谷を舞台にしたミステリですが超能力的な不思議な力を持った少女が登場します。でも例えば宮部みゆき氏の
「クロスファイヤ」のようなSF色全開の様相ではありません。現実的な折り合いをつける解釈のあり方も見せています。著者のスキルに会った映像制作に情熱を傾ける若者達が主人公で、
渋谷で起きる事件と制作実習最大のイベント夏製作の作品作りに向けた仲間達の問題が並行して描かれます。渋谷で起きる連続暴行事件。出会った少女との関係からその事件の渦中に入り込む
主人公達。ストーリーの面白さとミステリの基本形がしっかり計算された展開にはめ込まれ、ミスリードやラストの意外さが生きています。
個人的にはこの著者とは相性が良いので楽しく読みました。会話の楽しさ、それも読んでいて面白いと感じる重要な要素ですね。この著者の本にはそれがあります。

                              

『致死量未満の殺人』三沢陽一のミステリ。

2014-07-27 10:02:24 | ミステリ小説
                                           

悪天候に閉じ込められた山荘。集まったゼミ仲間は女3人男2人の5人。一人の女性に対し4人全員が殺意を持っていた。クローズド・サークルの定番シチュエーション。
ミステリ好きの心をくすぐるストーリー。さて誰がどのようにして犯行を? 15年の時効まで残りわずかの日、一人のゼミ仲間だった男が現れ告白する。あの時の真犯人は俺だ。
あの時山荘にいたゼミ仲間の女の店であるカフェに現れた彼は当事を振り返り話し始める。二人のディスカッションで警察の捜査でも見えなかった部分が見えてくる。
殺意を固め毒薬を用意した彼。しかし、どのように彼女に飲ませるかが問題。そして彼女は死んだ。あの日あの山荘で何があったのか。

後半はドンデン返しの連続で読むものを魅了する。このトリックに先例があるかどうか分からないけれど、アイディアというか良く考えられたストーリーです。
ただ残念なのは文章が少し大仰だということ。もっと易しい言葉でリーダビリティを発揮して欲しい。 でも手垢の付いたシチュエーションに挑戦する精神には拍手を送りたい。
サラリと読めるミステリとして夏の夜にはお勧めです。

             以下の写真は試行錯誤の末にやっと撮れた星の軌跡写真です。初めての星の軌跡写真。嬉しい。
              

「激流」柴田よしきのミステリ

2014-07-21 09:04:02 | ミステリ小説
                                             

二十年前、京都に修学旅行中に班別行動していた七人。その七人が乗った市内を巡るバスから一人の女生徒が消えた。
事件?事故?様々な憶測が流れ同じ班の残り六人も世間の興味と批判の嵐に晒される。そして二十年後その六人のメンバーの一人にメールが届く。「私を覚えていますか?冬葉」。

そんなシチュエーションで物語が始まります。この辺は中々上手いなと感じます。ミステリ好きならこのシチュエーションに食指が動かないはずはありません。つまり我々のハートを掴むのがとても上手いと感じるのです。

かなり理屈っぽい文章でそれぞれ六人の人生が語られます。今でも過去の出来事を何らかの形で引きずっている六人の仲間。その交友のなかでメールがきっかけで六人それぞれに思いがけない事態が起きていきます。

なぜ女性徒は消えたのか、そして二十年後のメールはどういう意味なのか。その謎を解くには六人それぞれのこれまでの人生をもう一度見つめ直す必要があります。そしてそれぞれが持っていた記憶の断片を繋ぎ合わせることが

重要でした。でもそれ以前に六人の人間臭い日々の生活と夢や欲望や挫折があります。大きな謎を示しながら作者は書きたかったのはこの六人の人生なんでしょう。
出会いや別れが織り成す人間模様。それがこの物語の芯の部分でしょう。そして傍目にはうかがい知れない心の中。そんなエピソードを絡めて送られてきたメールの謎に迫っていく様子が達者な筆致で描かれています。
かなりの長編ですが読み応えはあります。

この作者も宮部みゆき氏のようなストーリーテラーという印象です。

                                     
  

『ドンデン返しの映画』

2014-07-13 08:47:08 | 日記
お話の最後にこれまでの世界をひっくり返す衝撃が待っている映画。それがドンデン返しのある映画です。
沢山有りますが、先に紹介した「猟奇的な彼女」もそんな映画です。予備知識なしで観ているとビックリしますが、なるほどと思わずニヤリとする。そんなところがこういった仕掛けの有る
映画の楽しいところです。映画の好きな人なら先刻ご承知でしょうが、ここは私なりの好みなどを取り入れた作品をピックアップします。

初めに「アイデンティティ」2003年アメリカ は有名な作品でこの映画は外せないと思います。ラストはほとんどの人が予測不可能と思います。二番煎じは効かない映画、それがこの映画の強みです。
通の人には評価が高いのが「ユージュアル・サスペクツ」1994年アメリカ でしよう。アイデンティティはジョン・キューザック、レイ・リオッタなど曲者俳優が揃っていますが、ユージュアル・サスペクツも
ケビン・スペイシーなど個性派俳優が顔を揃えています。この映画も謎を最後まで引っ張ってあのラストです。脚本の妙ですね。脚本の妙と言えば内田けんじ監督の「アフタースクール」2008年日本 です。

大泉洋、佐々木蔵之助、堺雅人、常盤貴子など豪華メンバーが出演しています。内田けんじ監督はこの他に「運命じゃない人」カンヌ4冠 や「鍵泥棒のメソッド」などコメディ・タッチのサスペンスを
撮られています。個人的にはどの作品も好きなんですがこの「アフタースクール」は別格です。こんな楽しい映画はありません。もちろん「楽しさ」の質のレベルの話ですが。

そもそも最後にドキッとさせるラストシーンで秀逸なのは1968年に公開されたチャールトン・へストンの「猿の惑星」だと思います。あの最後のシーンは衝撃的で忘れられない。

この他には「シックス・センス」が有名ですね。でも有名ではなくても最後に意外なオチがある映画はまだまだあります。自分がとても好きなのは「閉ざされた森」です。
この映画のラストシーンのカッコ良さ。DVDもコレクションしています。どちらかと言うとサスペンス系の映画にこの手の仕掛けが多いのが特徴です。古典でいえばヒチコックの「サイコ」ですね。

「エスター」などもそう来たか、というオチで目の付け所というか発想の良さがこのストーリーを成功させています。「パーフェクト・ストレンジャー」「スイミング・プール」「メメント」
「シャッター・アイランド」なども面白いと思います。「パッセンジャーズ」なども冒頭の衝撃的シーンから入っていくストーリーには引き込まれます。アン・ハサウェイのファンの人なら外せませんね。

ところで最近まで知らなかった事ですがブラピの「ファイト・クラブ」もそうなんですね。あのラストには驚きました。まるで違う映画と思っていました。

でも自分が好きなのは「ラッキーナンバー7」や「ゲーム」です。「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」も憎い話でうーんと胸に重くのしかかります。まだまだ書ききれないほど作品があります。

テレビがツマンナイ夜にでもどれかひとつを試してみて下さい。面白さは保証します。