古書肆雨柳堂

小説の感想。芥川龍之介、泉鏡花、中島敦、江戸川乱歩、京極夏彦、石田衣良、ブラッドベリ、アシモフ、ディック

Good serch,good life. 『秋葉原@DEEP』

2006-08-22 23:25:14 | ミステリ

 石田衣良著『アキハバラ@DEEP』と実社会の関りを発見したので
一つお話させていただきます。

 作中で主人公達はクルークというサーチエンジンを開発します。
これはAI型サーチエンジンで、四つ人格
ジャンパー(跳ねるもの)、ラウンダー(ぐるぐる回るもの)、
オポーザー(反対するもの)、ネイバー(となりに住むもの)
から成っています。
 これらの働きによって、ユーザーはマンネリに陥ることなく
新たな情報に触れられる、水先案内人のような存在。
ユーザーを育ててくれるサーチエンジンなのです。

 これだけ情報が氾濫する現在では、「検索格差」が予想されます。
かつてはパソコン等の技能・情報環境によって、
格差が生じる「情報格差」が問題とされていましたが、

 次は、膨大な情報から適切な情報を得る能力の有無によって
格差が生じうる段階がくるかもしれません。
それだけでなく、(クルークのようなサーチエンジンを用い)
新たな検索の展開を得ることにって、
受け取る利益に差が生じうるかもしれません。

 ところで毎日新聞に
 「検索コンテスト」が開催されていた、という記事がありました。
 しかも優勝者が専門エンジニアを差し置き、
一般サラリーマンが優勝したということです。
 さらに彼はこの能力生かすため、サイト運営会社に転職したそうです。

 つまり、これは検索能力が社会的に有用である技術である
と認知されていることを示しています。
 この優勝者はインタヴューで、検索のコツを述べておりました。
例えば「専門学校一覧」という情報が欲しい場合、
「○○専門学校一覧」で検索しても出てこないそうです。
それより、「○○専門学校、池袋、新宿・・・」と具体的な地名を
入れたほうがHITするそうです。

 う~んなるほど、検索もひとつの能力なんですね~

 歴史に残る書というのは、新しい価値観や生き方を提示するなど
もちろん小説はフィクションですが、実社会にコミットメントしている
点があると思います。 
 この点でこの作品も意義深い作品といえると思います。
 
 この作品で新たに提示しているのは、インターネットにおける検索が
人生を豊かにするという新たな価値感です。
「よい人生とはよい検索だ。」