2月くらいにやってたラジオ番組らしいんですが
ちょっと気になってたのがあったので
「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」
っていう番組なんですが、そこで
特集サタラボ
「<神々の視点シリーズ> 天才シンガーソングライター・さかいゆうが考える、
歌がうまいって本当はどういうこと?特集」
っていうのをやっていて(私もyoutubeで聴いたんですが)
これがね、ちょっと、だいぶ嬉しかったので、
何度も眺めたくて本文をちょっと書き起こしてみました![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_nika.gif)
さかいさんて、スマップにも曲提供してるとか、色々活躍されてる方なんですね
この方の言う「歌が上手いとは」ってのを分かりやすく解説してくれてます
「マービンゲイとダニーハサウェイの場合」
「ルーサーヴァンドロスの場合」
「山下達郎と大瀧詠一の場合」
って三つのパートに分けて解説してて、
玉置さんの話が主に出て来るのは最後の一部分なんですけど
何となく、全部の話が結局、玉置さんの話にいたる前振りみたいなところがあるので
頑張って全部書き起こしてみました
めんどくさかったら、一番最後の部分だけ見てもまあ、分かるとは思います
あんまり音楽詳しくないので、聞き間違い等々あるとは思いますが…
youtube映像、お借りしてきました。upありがとうございます!
さかいゆう 歌が上手いって本当はどういうこと?(その1) 2014.02.01
宇:宇多丸さん さ:さかいさん
宇:凡人には想像も及ばぬ、はるか高みの視点から、
その道のプロフェッショナルが巧みの技の真髄を語る新企画、
それが「神々の視点」シリーズ。この第一弾に登場して頂くのは、この神です。
今年1月15日に最新アルバム「カミングアップローゼス」を発売したばかりの
シンガーソングライター、さかいゆうさんです。神よ、よろしくお願いします
さ:ひどい。(笑)ひどい、このフリが……フリひどい(笑)
宇:しゃべりづらいよね、そんなこと言ったら。
さ:別に、全然僕は。いいですよ、誰に嫌われてもいいわけですから(笑)
宇:そんなこと言われたら…。別に、良かれと思って。
さ:いやあ、そうです。
宇:違うんですよ。要は、さかいくんほどの…普通にうちの放送作家と
最近仕事することが多いらしいじゃないですか。
で、その間の雑談とかで、さかいくんとこんな話したんですよってのを聞いて、
僕は、「それムチャクチャ面白いんだけど」って。
さ:完全なる楽屋トークですからね
宇:でも、プロから見た…よく、ミュージシャンズミュージシャンとかあるじゃないですか。
さ:あー、僕とか言われますね。
宇:そうそう、だから、そういう、何かその、プロならではの視点から見えるすごさみたいな。
そういう話があるかなあと思ってね。
さ:何てことない。ただ一つのロジックを自分なりに持ってるだけで、
宇:でも俺、それを一つのロジックを持ってるっていうのを思い出した。
さかいゆうっていう男の何が面白いかって。
勿論、歌は素晴らしいし、パフォーマンスが素晴らしいのは分かってるけど、
あいつ、ロジックだったと。さかいはロジックだったという事を思い出しまして。
さ :だって、ロジックが無いと再現できないじゃないですか。
宇:ああそう。かっこいいと思ったことが、
さ:天然で、ウタさんみたいにいいラップ歌える人って少ないですよ。
宇:俺考えて作ってるよ!一生懸命
さ:リリックは考えるけど、声とかスタイルとしての存在は天然ですよ。かなり。
リーダー(?)のは計算してる。
宇:ご紹介させてください。さかいゆう、1979年生まれのシンガーソングライター。
これまでにアルバム「Yes!!」「How's it going?」
そして今年の一月に三枚目のアルバム…これ三枚目なんだ。もっとある気がしたけど
「Coming Up Roses」をリリース。
で、主なシングルはストーリー、まなざし☆デイドリーム、君と僕の挽歌、
薔薇とローズ、など、おなじみの名曲を、テレビなんかでもね、よく聞くようになりました。
で、番組への初登場はおよそ7年前だから、割と番組始まってすぐなんですね。
『これはすごいド天才がいるぞと』…すげえ考えてやってるやつがいるぞと(笑)
そういう呼び方しないけどさ。すごい人がいるなあと思って呼んで。
その時のスタジオ生ライブがきっかけで今の音楽事務所に。
(中略)
宇:ということで、今夜は久しぶりにさかいさんをお招きして、
歌がうまいとはどういうことなのかというのを、
改めて、ロジカルに考えてお届けしていきたいと思います。
我々普通に、人のね、この人の歌はうまいって思ったり感じたりすることはあるんですけど、
そのうまいってのは凄くうすぼんやりした言葉で、色んな要素があると思うんですけど、
えー、といったあたりをさかいさんにひも解いていただいて、
ああ、なるほどな、と。いうような感じを。こう、行きたいと思っています。
ということで、今夜は、海外の、しかもソウルシンガー。ブラックミュージックとか。
さ:そうですね。全部しゃべると8時間20分くらいになるので、きゅっとこう、30分くらいで
宇:ちょっと海外のソウルシンガーに絞って色々比較などしつつ、
時折日本人の方などの話も交えながら、伺っていきたいと思っています。
ていうことで、行きましょうか。
今夜は神々の視点シリーズと題しまして、
天才シンガーソングライターさかいゆうさんが語る
本当に歌がうまいってどういうことか特集をお送りしています。
では、本編行きましょうか。神よ。さかい神、よろしくお願いします
ということで、さかいゆうが語る、本当に歌がうまいってどういうことか。
ええー、まず代表としてあげるのが、ダニーハザウェイと、マービンゲイの場合、
ということで、伺っていこうと思います。
まずはダニーハザウェイについて。
どんな人なのか。ちょっと私、ざっとね。本当にざっとした説明ですよ。
70年代に活躍したソウルシンガー。
同年代に活躍したマービンゲイ…これから比較したいとおもいますけれど…らと共に、
いわゆる、ニューソウル。ちょっと政治的なことを歌って見たりとかね。
えー、で1972年のライブアルバムの『ライブ』などが有名ということで。
さ:そうですね。お亡くなりになった後、特に。
まあ、当時も結構ちょっと、中ヒットくらいはあったんだろうけど、
他のミュージシャンたちが、
例えば~さんなんて「俺はこのアルバムがバイブル」って言うくらいね。だけど、
今回これ、今流れてる曲。
宇:ダニーハザウェイのワッツゴーイングオン。
さ:あとマービンゲイのワッツゴーイングオン。
まず、マービンゲイ側を説明してみましょうか。
宇:マービンゲイは60年代から活動を始めた、で、70年代に入り、
先程言いました 当時の社会問題などを扱った楽曲をダニーハザウェイらと共にニューソウル。
さ:そう。二人とも、とにかくメチャクチャうまいんですよ。
宇:ワッツゴーイングオンて言ったら普通、マービンゲイの方。
でも今流れてるのはダニーハザウェイの方。
さ:そうですね。ライブがもう
…ミュージシャンの間でこのアルバム持ってない人いないんじゃないですか、くらいの。
まあそういう音楽的にも参考になる。
(千原ジュニアさん司会の番組(「二人のシンフォニー」作ってたやつ)でも、
玉置さんと蔦谷さんとでマービンゲイのこのアルバムの話、まさにこの曲の話してましたね)
ソウルミュージックって言ったら、殆どこの、ハーモニーとかも、
メジャーセブンスとかマイナーナインスとかっていう
今でも使ってるようなハーモニーがあるんですけど、
そういうハーモニーありきで、多分、ダニーの歌って考えなきゃだめで。
マービンもそうなんですけど、歌のうまさの種類がちょっと違うんですね。
宇:ほうほう
さ:ダニーは、自分の歌のうまさってね、実はそこまでね…。
マービンほど、自己陶酔していないんです。自分の歌に。
自分が上手い歌手だというのはあまりなかったと思う。
声は出るし、多分声量もあっただろうし、
楽器の一部として、まあ、アンサンブルに参加して、すごいカッコいいと。
感動的なアレンジがね、この人の醍醐味なんですよ。
だから自分の曲ってあんまりなくて、
人の曲を自分がアレンジして、どうだこんなに違う曲になるんだ、凄いだろう、
みたいなことがちょっとあったと思うんですよ。
だから、そんなに自分がシンガーとしての欲はそこまで強くなかったと思うんですけど、
マービンはもう、ほんとにシンガーな。
最初のころ~ってジャズの人にすごい憧れたりして、
なんか、ほんとに歌に対する憧れがあって、歌への執着心が何よりすごいあるから。
宇:マービンゲイのころは多分、その、自分で曲を作るって
そういう立場じゃなかったと思うんですよ。
さ:そうなんですよ。やっとモータウンの自分でやった
プロデュースできるようになったアルバムの一枚目って感じだったりするんですけど、
このワッツゴーイングオンとか。
まあ、60年代は、日本の、例えば演歌とかでもそうですけど、
ちゃんと作家さんがいて、自分は歌だけ歌っていかに自分の人生を投影するか。
それに対して、ダニーってのは、楽器も弾いちゃってるから。
プレイヤーでもあるから、ちょっと、逃げるまではいかないけど
歌ちょっとヘマっても、ソロで盛り返すぜみたいなのとか、無きにしもあらずなんですけど。
ま、それは演奏もしてる、弾き語りの人とかにきいたら大体わかるんですけど、
僕もまあ、こっちタイプで。
「やべえ今日喉の調子悪いからソロ頑張んなきゃ」みたいに思ってることもあって。
宇:要するにその、トータルで、演奏とかも含めたトータルで出すのがダニーハザウェイ型というか。
さ:そう、それがすっごい歌に出てる。
だからリズムも絶対外さないし。弾いてるから、あんまり外せないんですよ。
要はその、自由に解釈してマイクだけ持って歌う人とは違うから
…それがマービンの方で、時にはひざまずいて、
泣き叫びながら前の嫁さんのことを歌うっていうのは、ダニーにはないから。
歌って事に関していうと、僕は、マービンの方が表現力は一枚も二枚も上手かなと思うんですけどね
宇:具体的にどういことですかね
さ:ちょっと聴いてみましょうか
(マービンゲイ 「What’s going on」かけて)
これ、オリジナルアルバムのワッツゴーイングオンじゃなくて、ライブ盤なんです。
こっちの方が歌い方が分かりやすいと思うので、これにしました。
宇:今、メロディを元のからちょっと変えてるんですよね。
さ:そう。例えば、ダニーハザウェイだったらマーザーマーザ~♪ってこの声で最後まで。
で、マービンの場合だったら、なんかこう、優しくマーザーマーザー~♪ってはじまって
~♪♪って、張ったり、オーイェー♪ってなんかもう色んな声を使って、メリハリがある。
「お母さん」って言ってる時は優しくとか、言葉に対する、声の表情っていうのを、
その場で使い分けるんですね。
宇:歌詞の感情を一個一個演じてるっていうか
さ:そう、それを演者としてやってる感じ。
ダニーは、一個ひいてなんかちょっとなんかこう…なんだろ、
ブレーヤーとして、自分の声も使って、その曲を歌ってるっていうか。
宇:純粋に歌は、もちろん歌詞は入ってるんだけど、
音として機能させるタイプのミュージシャンなんですよね。ダニーハザウェイはそっち側で。
さ:そうだと思います
宇:マービンゲイは、ストーリーを入れて歌ってるっていう感じなんですかね。
さ:だからすごい、あのマービンゲイの方は、繊細で、幅も広くて、
やっぱりその分、ピッチとかリズムとか取りづらくなるんですよ。
いろんな声を使うから。ダニ―の方はこの声のままずーっといくから、
宇:まあ、演奏してるからね。そう変な事もできないわけなんだけど、
マービンはそういうトリッキーなことも。
さ:そうですね。やりながら …何だろ、あえて言うならば、マービンは、玉置浩二さんとか
う:おおー
さ:~♪って言ってみたり、~!!!って言ったり、 ~~♪~♪って言ったりっていう
で、ダニーハサウェイの場合、あえていうと、あえて言うとですよ。
何だろ。アングラ…アングラじゃないな。シュガーベイブとかやってた頃の達郎さん。
う:おおー
さ:チェストボイスばりばりに効かせてたころの
う:チェストボイスって何?
さ:あのー、胸を響かせて、何かこうわーっと大声で歌ってるような、そういう
ビブラートかけて~~♪っていう こういうハウンドって、ゴスペルっぽくて、かっこいいって思われがちなんだけど
う:プロっぽいって感じがする
さ:そう、プロっぽいって感じがするでしょ。簡単なんですよ、これ、わりと。
黒人だったら誰でもやってる。
むしろ、なんかこう、シャーデーとか、マービンゲイとかああいう、繊細な方が難しい。
う:これ、僕がさっきオープニングで言った、
ラップも、やっぱり力抜いてやる方が難しいんですが、
それが出来ると高度な感じがするっていうか
さ:そうだと思う。
う:その感じなのかもしれないですね。
のちほど山下達郎さんもやりますけど、
やっぱ、アレンジ全体の気分としてこれをとらえるか、
シンガーとしての俺なのかっていうあたりなのかと。
さ:そう、そう思います。僕は。
宇:まあ、今日は歌手としての歌の特集なんで。
ということで、玉置浩二さん。
さ:もう、本当にシンガーズシンガーって感じで
楽器ももちろん、本当にうまいんだけど。そういった意味では。
…「ということで」って、まだ玉置さんの話出て来てないんですけど
玉置さんの話する気まんまんですね。この時点で既に
宇:ということで、まずは、ダニーハザウェイとマービンゲイ、比較してみました。
(youtube映像、ここから「その2」なんですが、何故か貼れません…)
続いて、さかいゆうが語る本当に歌がうまいってどういうことか、その2!
ルーサーヴァンドロスの場合。
ルーサーヴァンドロス、音楽詳しい人、ブラックミュージック聴いてる方なら
もちろん知ってるんだけど、ご存知ない方もいらっしゃると思うんで。
1976年デビュー。80年代にはブラックコンテンポラリー、いわゆるブラコンの旗手として、
80年代はもう、覇者ですよね。
ただちょっと、最近言及されることも少なくなってきてるかもしれません。
そんなルーサー。なぜルーサーを単独でとりあげたんですが
さ:ルーサーは、いわゆる、その、黒人シンガーさんが皆やる、
スティービーワンダーみたいな節回しが少ないんですよ。
なんだろ~♪こういう、節回し?こぶし?があんまりなくて、
それって結構ビヨンセとか、アッシャーもそうだけど、
みんな、それでサウンドを作っていくんですね。
それって、すっげーかっこいいけど、皆同じ感じになりがちだったりもするんですね。
で、ルーサーは、どっちかっていうとマービンゲイの方の直系で、
歌を大事にした…歌い方じゃなく。
ダニーもスティービーも割と同じ、ゴスペル直系、ブルースとか直系の、
ペンタトニックな節回しとかが売りの、こういうと、わかりにくいかもしれないんですけど、
もっと、ルーサーとかマービンゲイとかの方が歌謡曲寄り?ポップス寄りっていうか。
ちょっとルーサーヴァンドの方が、
宇:ちょっと聞いてみましょう
宇:今神ことさかいゆうが、ここだ、と指を振って。いま、いま、どこがポイント?
さ:なんか、何だろ。彼は、とにかく、同じなんですね。ライブ見にいくと。
再現度っていうか。どこも。見に行って、僕、細かいとこまで聞くんですよ。
う:きっとアドリブとかも入れたりするんだろうけど
さ:アドリブまで同じなんですよ。えにもー♪の声の倍音まで一緒なんですよ。
えにもー♪じゃなくて、えにもー♪じゃなくて、えにもー♪
宇:常に狙ったところにストン。
さ:完璧に正確に、リズム、発音、全部完璧にやるんですよ。
宇:スティービーワンダーっぽいって言ったのは、ノリで逸脱していく感じってのは、
それは確かにかっこいいし、ブラックミュージックっぽいところなんだけど、
わりと正確に解釈してアウトプットしていく、という。
さ:そうなんですよ。だから、ちゃんとパッケージして、これが100点だってのを出すんですよ。
だから、ブレがないから、1点2点くらいの誤差しかないと思う。
スティービーって、言っちゃ悪いんですけど、
めちゃめちゃいい時とわりと適当にやってる時が結構あって。
宇:ヘタすりゃ鼻歌にもなりかねないっていうときがあるもんね。
さ:結構あって。それは僕も好きなんですけどね。
みんなドキドキして。ミュージシャンぽいっていうか。
宇:あとそのノリで逸脱していく感じが、たとえば最近のアッシャーさんとか
要はストリートっぽいっていうかチンピラっぽいから、
さ:それはもうかっこいい!っていう、ね。今の音楽の感じには合う。
宇:ルーサーヴァンドの方はどっちかっていうと歌謡なんですよ。
さ:そうそうそう。
宇:歌謡、唱歌?っていうか。
さ:マービンとかルーサーとかはでかいホールが似合うんですよね。
で、スティービーとかは…スティービー売れてるから大きいので見ちゃうけど、
本当はクワトロくらいで見ないと。リズムまで全部聞こえて、本当にいいんですよ。
でやると全員赤字になっちゃうから、
せめて、1000人、2000人くらいのとこで聴かないと、本当の意味での良さは。
ルーサーの場合は、マービンでもそうだし、歌に集中したみんなの演奏があるから、
だから、結構その、大きい箱で、ちゃんと届けられるんですよ。良さが。
で、僕は今の僕のスタイルからすると、あんまり、アリーナとかでやっちゃダメな人なんですよ、
と僕は分析してるんですけど。
宇:ああ、自分で。
さ:届かないんですよ。エアで僕、とったりするんですけど、何も届いていない。
だから、結構そういう、もうちょっとちっちゃい所で、やんないとダメです。
宇:それって、でも…僕も今身につまされるなあと思ったのが、合ったサイズってのがあるよね
さ:あります。まずEメジャーセブンスとか、アリーナに適してないんです。
宇:おー!これはすごい。ちょっと複雑なコードは適してない?
さ:適してない。EメジャーセブンスでEフラットにして、
Cシャープマイナーナインスに落ちたときに、もうEセブンスマイナーとか混ざってますからね。
宇:僕、今神の言葉をわかってませんけど、分かる気がするのは、
要は微細なニュアンスは伝わんねえよと。
さ:ルーサーとかマービンもメジャーセブンスとかあるんだけど、
もっと歌謡だから、大きいんですよ。きめも、ダターンタターンとかないから、
宇:声そのものがダイナミックになるっていうか。
さ:そう。僕も例えばほら、なんか
…僕も、なんかライムスター、せめて3000人以内で聴きたいんですよ。
いくらトラックとはいえ。やっぱり細部にこだわってるとことかはあるから、
グルーヴもあるじゃないですか。
あのグルーヴとかはアリーナとかだと大味にならざるを得ないじゃないですか。
「みんながんばれー」とか、言うことも段々大味になってくる。
だから、サイズに合ったものがあると思います。僕は。
宇:でもそのルーサーは繊細ではないということではなくて、ほぼ正確に広く届くという。
さ:単純に言うとローリングストーンとか適してますよね。アリーナスタジアムとか。
難しくてもセブンスくらいですもん。
宇:意識してそれやってるんでしょうしね。ルーサーは、でも相当抜けてる?頭は。
さ:抜けてますねえー、2,3個。
宇:2,3個!抜けてます?他の黒人シンガーより。
さ:。あまり言うと気悪いから言わないけど。
宇:ちょっとルーサーとかはね、改めて聴いてみようという人もいるんじゃないでしょうか。
さかいゆう 歌が上手いって本当はどういうこと?(その3) 2014.02.01
宇:それではちょっと、最後のパートに行ってみましょう。
さかいゆうが語る本当に歌がうまいってどういうことか。その3!ついに来ました
さ:はいはい。
宇:山下達郎と大瀧泳一の場合。
さ:達郎さんと大瀧さんて、単純にもう大好きで。
大好きすぎてずっと鼻血が出てるんです。ほんとに歌が大好きだから。
僕、二人とも聴くと、真逆の…僕の、脳の中の全然違う部分がくすぐられる感じですね。
大瀧さん聴いてる時と、達郎さん聴いてる時と。
基本的に達郎さん聴いてる時は、なんだろう、
イタリア人で言う、オペラを聴いてる時の感じの、圧倒される?
で。一番歌い終わったら拍手が来るじゃないですか。
宇:うんうん。歌が終わった時に拍手がくる感じ。
さ:あれね、歌謡民族というか、歌唱民族なんですよ。演歌とかもそうだし。
宇:具体的に言うと、演奏は続いてても歌の一区切りで拍手が来るってことは、歌が主役ってこと?
さ:とか、サビ終わりで間奏に拍手が来るどころか、
ロングトーンして、エエエーーーイって言ったら、
それが終わって、「ああ、すごいロングトーンだったね」って皆拍手する、みたいな。
一人二人じゃなくて皆共通認識として「今のロングトーンすごくなかった?」っていう拍手。
宇:歌をきいてる。
さ:そう。それが、僕、達郎さんとかきくと、ソウルとオペラとポップスと、何だろ、
やっぱ、プッシュ系なんですよね。
宇:プッシュ系
さ:そう。楽器が後ろで、わあっとせわしなくカッティングいくらしてても、
ずっとロングトーンでこうぶれずに歌って、そこにこう、
例えばスパークルって曲にしても、歌詞じゃない所ですごいロングトーンしたりするんですよ。
で、それって結構シの音?Bとか、普通の男の人だったら出ないくらいの所を、
地声で、ぶわーっと歌うんですよ。
で、ライブ見に行くとわかるんですけど、とにかく声の抜け方と張りでもう圧倒されるんですよ。
出てる音はコントロールしてて、結構ちっちゃめなんですよ。
普通のロックバンドよりはやっぱりその、繊細な、細かいキメとかがあるから、
それを届けたい、全部届けたいはずだから、それに合った音量があって、
ちゃんと自分達が規制をかけて、このくらいまでだったら出せる、ていうのがあるんだけど。
どんなに達郎さんの声が小さくても、音量じゃないんですよね。通る!
宇:これってさっき言ったシュガーベイブ時代までのね達郎さんと違うわけ?
さ:違いますね。通り方が違うっていうか
宇:どう変化したの?
さ:シュガーベイブの頃はもう、
宇:さっきチェストって言ってたよね。
さ:そう。声量と、ソウルで、ある意味力任せっていうか、そこが僕たまらんくらい
宇:そこがある種のソウルフルな。
さ:でもそんなんやったら、5年で喉潰しますから。
でも達郎さんブレイクして、ライドオンタイムで、
多分ライブ年間20本から多い時で40本くらい多分やられて、
そんなので、あんなチェストボイス効かせてたら、喉、ダメになっちゃう。
やっぱ、声がでかい人っていうのは喉枯れるから。
で、段々響きが頭蓋骨方面に来て
宇:頭蓋をゆらしてる?
さ:たぶんね、そうだと思います。
どんなに~♪とかあの声とか、チェストじゃないもん、明らかに。
宇:歌ってみるとわかる。神が。僕らマネできないけど
さ:(笑)単純に、ロジックはそこですよね。
今、僕らが聴いている達郎さんの響きあるじゃないですか。あの、うおーっていう。
あれはちゃんと色々研究したうえで、マイクの乗りとかも全部わかったうえで、
あのー計算したあげくの、このマイク通すとこうなるっていう。
しかもちゃんと抜けもよくしてソウルも残したいわけだから
宇:機械みたいにはしたくない
さ:そう、ちゃんとソウルも伝えながら、その響き、
理にかなった、喉枯れないのを見つけた方だと思いますよ。
宇:特に、自分の声重ねて作ったコーラスも、
さ:僕はもう、テイクシックスとかより凄いと思う。
テクニカルなところでは、テイクシックスとか世界でもものすごい人たちいるけど、
同じ音量で聴いたときの、語り方?なんだろ。青空に飛んでいく感じ
宇:そうだよね、そうだよね、それだよね。
さ:スケールがでかい。そうですね、自分が…あの、達郎さんご自身が
気持ちよく歌いたいがためのアンサブルだと思うんですよ。
細かいジャズなこととかよりも、抜けの良さと、倍音でばーっといって、
しかもそれで歌ってますからね、達郎さん。
それにも負けないだけの声で歌ってますからね。ばーんと。
宇:たぶん、自分の声で出来る事の最大値みたいなものを、
ロジックとして重ねていった結果、最強兵器出来た、みたいな。
さ:そうなんですよ。そこはロジックだけど、そこに気付くのは天然というか、
やっぱりもともと耳がよかったり、自分の事もよくわかってたたうえで、
やっぱり、あの、すごい天才性っていうか
宇:何がいいかにたどり着くのは感性なんですね。
さ:そうですね。実現するには細かい、こういう細かいロジックが必要なんですよ。
宇:ということでここでですね。
シュガーベイブのアルバム「ソングス」に収録されている
1975年のに未収録、90年の再発版CDにボーナストラック収録されている、
シュガーベイブ、これ後ほど何でシュガーベイブ版かを説明していただきますが、
シュガーベイブ版の「指切り」という曲をお送りしたいと思います。
(聴きながら)
宇:かっけー!
やっぱさっきの、投げ飛ばす感じ。若い頃の達郎さんの
さ:ここのソウルも、いいし。
宇:そしてでも、今なんで「指切り」聴いてたかと言うと、
この「指切り」は元々大瀧泳一さんの曲でもあると。
ということで山下達郎さんと大瀧泳一さんを比較していこうと思うんですけど、
大瀧さんは、どんな?達郎さんと比べてどんな感じなんでしょうか。
さ:達郎さんがすごいプッシュしてきて、こう、壁のような厚い歌だとすると、
もう、大瀧さんは、一切プッシュしなくて、ずっと引いて引いて引いて引いて最後引く、みたいな、
宇:ああー、あんまり自己主張避けて(CMで途切れ)
さっき達郎さんの歌を表現するのが、ぐいー、とかすとーんとかそういう、前へ出る…
さ:そう。90年代以降ともなればもう、こういうプッシュ系…みんな、
売れてる人、うまいとされてる人って、全員プッシュ系ですからね。
それがはやりなんでしょうね。テンションがあがりますよね。
大きい所でやると、ぐわーっと。
でも、もしかしたら、引いて引いて引いて最後も引くっていう人の方が実は難しいかもしれないし、
宇:さっきから言ってる、力入れない方がそりゃ難しい
さ:難しいんですよ!
しかも、ほんとに引くだけの人だったら引いてひいてひいて、…聞こえないんですけど、
でも、この方の声は、大瀧さんの声は、耳を奪われるような、
なんかこう歌詞的にも、一輪ずつ花を置いていく感じの、丁寧に丁寧に置いて、
丁寧に置いて、曲終わった後、しーらないという。
宇:そのクールさも、
さ:そのクールさもあるんですよ。あんま、執着しない、というか。
宇:ひいても、でも、こっちは気になっちゃうから、
さ:めちゃめちゃ気になるんですよ。
宇:むしろ耳はこっち追っちゃうみたいな
さ:そう。というのもありますよね
だから「俺をきいてくれー!」というのも出来るじゃないですか。
でもそうじゃなくて何も言わずに、「あーっ」って歌って、
「何この子、すごいいいじゃん」ていう。
どっちもいいじゃないですか。どっちも掴みがあると思うんですけど、
それの後者の方ですよね、大瀧さんは。真似がしづらい。出来ない。
宇:というわけで、さっきのシュガーベイブ版の「指切り」が
耳に残ってるうちに聴いていただきましょう。
1972年大瀧詠一さんのアルバム、「大瀧詠一」に入っている、「指切り」
さ:あんま口開いてないですよね。
さ:このビブラート!すごい、繊細なのに、どうしてこんなに心に染みるんだって言う。
宇:さっきの、ただでさえ口あんま開いて歌ってない所に、
音量が下がるんじゃなくて、こっちにこう、ぐっと!!
さ:そうそう!
宇:聴きますよ、こんな歌うたわれたら。道にちょっとひっかかりあって、お?って何々って。
さ:そう。逆でしょう?達郎さんと。でもどうだいー♪って言われても、それはかっこいいんだけど、
宇:~の凄さと、~の凄さと(聞き取れず^^;;)
さ:もちろん、比べられない、神々の…
宇:でも僕ら、ラップで言えばうちらは超プッシュ派だから、
引きで成り立つ人にもう無茶無茶憧れるというか、もう、くやしー!ってなるところがあるよね。
さかいゆう 歌が上手いって本当はどういうこと?(その4まとめ) 2014.02.01
宇:ということで、すごく分かりやすい比較だったと思うんですけど。
今夜のまとめということで、さかいくんにこれを伺いたいんです。
今日扱った中で、さかいくんが本当に歌がうまいと思う
三大シンガーをポンポンと挙げて頂きたいんですが。
さ:はい。マービンゲイ、ルーサーヴァンドロス、玉置浩二
…今日扱った中でって…
ここまで(表立っては)殆ど玉置さん扱ってないんですけど![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_tehe.gif)
他の人の例をあげながら頭の中ではずっと玉置さんの話してたのね
宇:ということなんですね。
さ:これは何でそういう事かって言うと、引く事もできて押すこともできる人を選びました。
宇:さっき言ったプッシュ系も出来るし、引きも出来るし。
繊細だし、でもでっかいところでも出来るという。
さ:そう。で、細かいところもちゃんとこだわってて、
宇:さっき言った歌の感情も演じるというか。
さ:そう。でも本当にこれは比べたわけじゃくて、あくまで表現の幅が広い方を選んだだけで、
ダニーとマービンと玉置浩二さんと山下達郎さんを比べるわけではない。
宇;どっちがエライと言ってるわけではない。
さ:そうそうそう、表現ね。
宇:普通はラッパーは…僕はラッパーしかわからないけど、
ラッパーだったら楽器に対して武器を一個持ってれば十分なんだけど
さ:そう、一個持ってれば十分。
宇:二つ持ってると相当引き出しがある感じがする。
3つ持ってると天才って感じがする、そういう感じじゃないですかね?
さ:そうですね。
宇:すみませんね、神に。神に通じる言語がないもんで。
最後に、では、玉置浩二さんのを聴きましょう
玉置さんの、どの曲?選んだんでしょ?
さ:僕が一番といってもいい、好きな曲。これはやっぱり好きな曲を聴くしかない。
全部好きなんですけどね。ミスターロンリー
あーああーあーああ~♪(イントロの)
さ:(聴きながら)チェストボイスです。最初。
こんな僕でも~♪
さ:うまい、やばい、マジで。鳴ってますね。体が鳴ってるボイスです。
宇:ああ、体を鳴らしてる。
がんばって~だめで悩んで~♪
さ:(重ねて歌いながら)こんな歌うたえたら、もう、やめてもいい。
宇:そんな!
さ:もうそのくらい凄いと思う。チェストでこう…。
野-に咲く花のように~♪
さ:(歌いながら)ビブラートっていうかゆらぎがある
宇:今のこの、出だしからここに至るまでの
さ:ストーリーがある。
宇:歌い方とか声のメリハリとか、すごくこう、山を作ってみて
さ:これね、単純に歌詞がなくても分かりますよ。どういう気持ちを歌ってるか
(これ、韓国の方がよく言いますね。ソンシギョン氏とかも力説してたし)
宇:で、ここぞってとこで裏声を、クッと入れて来て。
さ:そおおおお!!!
宇:あんなのなかなかねえ。それもいやらしくなく、さ。
さ:おおおー。そうなんですよ!!!これは本当にすごい。
宇:出だしのチェストなんだけど、でもそんなに強くは歌ってないけど、
さ:そうそうそう。ただボソボソ言ってるんじゃなくて、
低いんだけど、すごい芯があって、倍音があって、
宇:で、何かこう、厚さを感じるね。
ちゃんとその裏にある熱気があるからサビに至る盛り上がりも嘘っぽくないっていうか。
唐突じゃないし。
さ:さらにすごいのは、やっぱりね、単純にピッチとリズムがいい。
神様が三個与えちゃった人。
ちょっとしたタメとかそういう所に、異常な細かい
…僕はマービンゲイよりも、もしかしたらうまいと思っちゃう方ですね。
宇:玉置さんはそれこそ、シンガーズシンガーで、皆、実は大絶賛してるんだよね。昔から。
達郎さんも確か、何かの記事で、すんごい…安全地帯が普通に売れてるときに、
『ふつーに売れてるグループだからってなめるなよ』みたいな。
俺、読みましたよ。達郎さんのそれ。
あんなにすごいグループはみたいな、わかるんすよ。
これだよ、俺が言ってるのは、こういう事だよ。神の視点だよ!
宇:今日の特集、天才シンガーソングライター、
というか神の人、さかいゆうが語る、歌が上手いって本当はどういうこと、
今夜はありがとうございました。
さ:はははは(苦笑)
宇:困っちゃってるかもしれないけどさ。まさに、これなんですよ。さっきの。
僕らも、例えば玉置浩二さんのを聴いて、素敵だなあと、
そりゃ、普通に理屈じゃなく感動するんだけど、やっぱ、プロの方が聴きが丁寧だから。
言われてみると、ああ、確かにこのビブラート、凄いかも、とかさ。
その、ちょっと見る精度がちょいと上がる感じっていうか。
そういうのが今日、あったと思うんですよ。
さ:なるほど
宇:ありがとうございました。これからも聞く耳が変わるんじゃないかと思います。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kaeru_en1.gif)
ありがとうございました。
なるほどなー」って思いました。普段何となく感じてることについて。
聞く精度がちょっと上がったような気がします
それにしても…
別の人の話してるけど、これ殆ど最後の玉置さんの話をするための
例なんだろうなあーって感じがしちゃいます
ダニーハサウェイより、歌の表現力では一枚も二枚も上手というマービンゲイより、
さらに玉置さんが凄いと言っちゃうし
山下達郎さんと、大瀧詠一さんを絶賛しておいて、
玉置さんはその両方(プラスα)を持ってるって言ってるんですよね?
唯一関係なさそうな、ルーサーヴァンドロスの話でも、
彼のすごさは、こぶしや節回しに頼らない、
歌い方じゃない、歌そのものの良さだってことを言ってるんだけど、
それって、玉置さんが昔何かの番組で言ってた
「あまりビブラートかけないで、うまく歌わないで歌う」
(表現は違ったと思うけど、そんなような感じの事)
っていう歌い方に通じるような気がするんですけど…それはちょっと読みすぎかな?
まあ、でも、さかいさんも強調してますけど、うまさってそれぞれだし
どっちがエライじゃないんですよね
…極端に言えば、必ずしもうまくなくたっていいわけだし
長く安玉ファンやってる分、逆にヘタな人にも寛大かも。私。
だって全ての歌手に玉置さんレベルを求めたらかわいそうですもん
うまさ、以外にも良さは色々あるわけですしね
結局、さかいさんて、玉置さんのこと、すっごく好きなんでしょうね![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_nika.gif)
どんなふうに上手いかをロジックで説明は出来るとしても、
結局は心とか感情に訴える力の強さが玉置さんの凄さなんだろうなあ
やっぱり結局は「好き」っていう、最も非ロジカルな感情の部分に来ちゃうんでしょうね
その部分は、私たち一般のファンと変わらない気がする
…そして、ここで、神様が3個与えちゃったってこれが、
玉置さんの音楽性の中の、「歌唱力」の部分だけなんですよねえー。
さらにこれに「作曲」のすごさもあるし、鍵盤以外、楽器一通りひけるし
さらに音楽性からちょっと逸れて、演技とか、言葉の感覚の凄さまでありますからねー。
ほんと、この人何者なんでしょうね
まあ、これだけ神様からもらってたら、少々変な人でも仕方ないよなー![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_tehe.gif)
ちょっと気になってたのがあったので
「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」
っていう番組なんですが、そこで
特集サタラボ
「<神々の視点シリーズ> 天才シンガーソングライター・さかいゆうが考える、
歌がうまいって本当はどういうこと?特集」
っていうのをやっていて(私もyoutubeで聴いたんですが)
これがね、ちょっと、だいぶ嬉しかったので、
何度も眺めたくて本文をちょっと書き起こしてみました
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_nika.gif)
さかいさんて、スマップにも曲提供してるとか、色々活躍されてる方なんですね
この方の言う「歌が上手いとは」ってのを分かりやすく解説してくれてます
「マービンゲイとダニーハサウェイの場合」
「ルーサーヴァンドロスの場合」
「山下達郎と大瀧詠一の場合」
って三つのパートに分けて解説してて、
玉置さんの話が主に出て来るのは最後の一部分なんですけど
何となく、全部の話が結局、玉置さんの話にいたる前振りみたいなところがあるので
頑張って全部書き起こしてみました
めんどくさかったら、一番最後の部分だけ見てもまあ、分かるとは思います
あんまり音楽詳しくないので、聞き間違い等々あるとは思いますが…
youtube映像、お借りしてきました。upありがとうございます!
さかいゆう 歌が上手いって本当はどういうこと?(その1) 2014.02.01
宇:宇多丸さん さ:さかいさん
宇:凡人には想像も及ばぬ、はるか高みの視点から、
その道のプロフェッショナルが巧みの技の真髄を語る新企画、
それが「神々の視点」シリーズ。この第一弾に登場して頂くのは、この神です。
今年1月15日に最新アルバム「カミングアップローゼス」を発売したばかりの
シンガーソングライター、さかいゆうさんです。神よ、よろしくお願いします
さ:ひどい。(笑)ひどい、このフリが……フリひどい(笑)
宇:しゃべりづらいよね、そんなこと言ったら。
さ:別に、全然僕は。いいですよ、誰に嫌われてもいいわけですから(笑)
宇:そんなこと言われたら…。別に、良かれと思って。
さ:いやあ、そうです。
宇:違うんですよ。要は、さかいくんほどの…普通にうちの放送作家と
最近仕事することが多いらしいじゃないですか。
で、その間の雑談とかで、さかいくんとこんな話したんですよってのを聞いて、
僕は、「それムチャクチャ面白いんだけど」って。
さ:完全なる楽屋トークですからね
宇:でも、プロから見た…よく、ミュージシャンズミュージシャンとかあるじゃないですか。
さ:あー、僕とか言われますね。
宇:そうそう、だから、そういう、何かその、プロならではの視点から見えるすごさみたいな。
そういう話があるかなあと思ってね。
さ:何てことない。ただ一つのロジックを自分なりに持ってるだけで、
宇:でも俺、それを一つのロジックを持ってるっていうのを思い出した。
さかいゆうっていう男の何が面白いかって。
勿論、歌は素晴らしいし、パフォーマンスが素晴らしいのは分かってるけど、
あいつ、ロジックだったと。さかいはロジックだったという事を思い出しまして。
さ :だって、ロジックが無いと再現できないじゃないですか。
宇:ああそう。かっこいいと思ったことが、
さ:天然で、ウタさんみたいにいいラップ歌える人って少ないですよ。
宇:俺考えて作ってるよ!一生懸命
さ:リリックは考えるけど、声とかスタイルとしての存在は天然ですよ。かなり。
リーダー(?)のは計算してる。
宇:ご紹介させてください。さかいゆう、1979年生まれのシンガーソングライター。
これまでにアルバム「Yes!!」「How's it going?」
そして今年の一月に三枚目のアルバム…これ三枚目なんだ。もっとある気がしたけど
「Coming Up Roses」をリリース。
で、主なシングルはストーリー、まなざし☆デイドリーム、君と僕の挽歌、
薔薇とローズ、など、おなじみの名曲を、テレビなんかでもね、よく聞くようになりました。
で、番組への初登場はおよそ7年前だから、割と番組始まってすぐなんですね。
『これはすごいド天才がいるぞと』…すげえ考えてやってるやつがいるぞと(笑)
そういう呼び方しないけどさ。すごい人がいるなあと思って呼んで。
その時のスタジオ生ライブがきっかけで今の音楽事務所に。
(中略)
宇:ということで、今夜は久しぶりにさかいさんをお招きして、
歌がうまいとはどういうことなのかというのを、
改めて、ロジカルに考えてお届けしていきたいと思います。
我々普通に、人のね、この人の歌はうまいって思ったり感じたりすることはあるんですけど、
そのうまいってのは凄くうすぼんやりした言葉で、色んな要素があると思うんですけど、
えー、といったあたりをさかいさんにひも解いていただいて、
ああ、なるほどな、と。いうような感じを。こう、行きたいと思っています。
ということで、今夜は、海外の、しかもソウルシンガー。ブラックミュージックとか。
さ:そうですね。全部しゃべると8時間20分くらいになるので、きゅっとこう、30分くらいで
宇:ちょっと海外のソウルシンガーに絞って色々比較などしつつ、
時折日本人の方などの話も交えながら、伺っていきたいと思っています。
ていうことで、行きましょうか。
今夜は神々の視点シリーズと題しまして、
天才シンガーソングライターさかいゆうさんが語る
本当に歌がうまいってどういうことか特集をお送りしています。
では、本編行きましょうか。神よ。さかい神、よろしくお願いします
ということで、さかいゆうが語る、本当に歌がうまいってどういうことか。
ええー、まず代表としてあげるのが、ダニーハザウェイと、マービンゲイの場合、
ということで、伺っていこうと思います。
まずはダニーハザウェイについて。
どんな人なのか。ちょっと私、ざっとね。本当にざっとした説明ですよ。
70年代に活躍したソウルシンガー。
同年代に活躍したマービンゲイ…これから比較したいとおもいますけれど…らと共に、
いわゆる、ニューソウル。ちょっと政治的なことを歌って見たりとかね。
えー、で1972年のライブアルバムの『ライブ』などが有名ということで。
さ:そうですね。お亡くなりになった後、特に。
まあ、当時も結構ちょっと、中ヒットくらいはあったんだろうけど、
他のミュージシャンたちが、
例えば~さんなんて「俺はこのアルバムがバイブル」って言うくらいね。だけど、
今回これ、今流れてる曲。
宇:ダニーハザウェイのワッツゴーイングオン。
さ:あとマービンゲイのワッツゴーイングオン。
まず、マービンゲイ側を説明してみましょうか。
宇:マービンゲイは60年代から活動を始めた、で、70年代に入り、
先程言いました 当時の社会問題などを扱った楽曲をダニーハザウェイらと共にニューソウル。
さ:そう。二人とも、とにかくメチャクチャうまいんですよ。
宇:ワッツゴーイングオンて言ったら普通、マービンゲイの方。
でも今流れてるのはダニーハザウェイの方。
さ:そうですね。ライブがもう
…ミュージシャンの間でこのアルバム持ってない人いないんじゃないですか、くらいの。
まあそういう音楽的にも参考になる。
(千原ジュニアさん司会の番組(「二人のシンフォニー」作ってたやつ)でも、
玉置さんと蔦谷さんとでマービンゲイのこのアルバムの話、まさにこの曲の話してましたね)
ソウルミュージックって言ったら、殆どこの、ハーモニーとかも、
メジャーセブンスとかマイナーナインスとかっていう
今でも使ってるようなハーモニーがあるんですけど、
そういうハーモニーありきで、多分、ダニーの歌って考えなきゃだめで。
マービンもそうなんですけど、歌のうまさの種類がちょっと違うんですね。
宇:ほうほう
さ:ダニーは、自分の歌のうまさってね、実はそこまでね…。
マービンほど、自己陶酔していないんです。自分の歌に。
自分が上手い歌手だというのはあまりなかったと思う。
声は出るし、多分声量もあっただろうし、
楽器の一部として、まあ、アンサンブルに参加して、すごいカッコいいと。
感動的なアレンジがね、この人の醍醐味なんですよ。
だから自分の曲ってあんまりなくて、
人の曲を自分がアレンジして、どうだこんなに違う曲になるんだ、凄いだろう、
みたいなことがちょっとあったと思うんですよ。
だから、そんなに自分がシンガーとしての欲はそこまで強くなかったと思うんですけど、
マービンはもう、ほんとにシンガーな。
最初のころ~ってジャズの人にすごい憧れたりして、
なんか、ほんとに歌に対する憧れがあって、歌への執着心が何よりすごいあるから。
宇:マービンゲイのころは多分、その、自分で曲を作るって
そういう立場じゃなかったと思うんですよ。
さ:そうなんですよ。やっとモータウンの自分でやった
プロデュースできるようになったアルバムの一枚目って感じだったりするんですけど、
このワッツゴーイングオンとか。
まあ、60年代は、日本の、例えば演歌とかでもそうですけど、
ちゃんと作家さんがいて、自分は歌だけ歌っていかに自分の人生を投影するか。
それに対して、ダニーってのは、楽器も弾いちゃってるから。
プレイヤーでもあるから、ちょっと、逃げるまではいかないけど
歌ちょっとヘマっても、ソロで盛り返すぜみたいなのとか、無きにしもあらずなんですけど。
ま、それは演奏もしてる、弾き語りの人とかにきいたら大体わかるんですけど、
僕もまあ、こっちタイプで。
「やべえ今日喉の調子悪いからソロ頑張んなきゃ」みたいに思ってることもあって。
宇:要するにその、トータルで、演奏とかも含めたトータルで出すのがダニーハザウェイ型というか。
さ:そう、それがすっごい歌に出てる。
だからリズムも絶対外さないし。弾いてるから、あんまり外せないんですよ。
要はその、自由に解釈してマイクだけ持って歌う人とは違うから
…それがマービンの方で、時にはひざまずいて、
泣き叫びながら前の嫁さんのことを歌うっていうのは、ダニーにはないから。
歌って事に関していうと、僕は、マービンの方が表現力は一枚も二枚も上手かなと思うんですけどね
宇:具体的にどういことですかね
さ:ちょっと聴いてみましょうか
(マービンゲイ 「What’s going on」かけて)
これ、オリジナルアルバムのワッツゴーイングオンじゃなくて、ライブ盤なんです。
こっちの方が歌い方が分かりやすいと思うので、これにしました。
宇:今、メロディを元のからちょっと変えてるんですよね。
さ:そう。例えば、ダニーハザウェイだったらマーザーマーザ~♪ってこの声で最後まで。
で、マービンの場合だったら、なんかこう、優しくマーザーマーザー~♪ってはじまって
~♪♪って、張ったり、オーイェー♪ってなんかもう色んな声を使って、メリハリがある。
「お母さん」って言ってる時は優しくとか、言葉に対する、声の表情っていうのを、
その場で使い分けるんですね。
宇:歌詞の感情を一個一個演じてるっていうか
さ:そう、それを演者としてやってる感じ。
ダニーは、一個ひいてなんかちょっとなんかこう…なんだろ、
ブレーヤーとして、自分の声も使って、その曲を歌ってるっていうか。
宇:純粋に歌は、もちろん歌詞は入ってるんだけど、
音として機能させるタイプのミュージシャンなんですよね。ダニーハザウェイはそっち側で。
さ:そうだと思います
宇:マービンゲイは、ストーリーを入れて歌ってるっていう感じなんですかね。
さ:だからすごい、あのマービンゲイの方は、繊細で、幅も広くて、
やっぱりその分、ピッチとかリズムとか取りづらくなるんですよ。
いろんな声を使うから。ダニ―の方はこの声のままずーっといくから、
宇:まあ、演奏してるからね。そう変な事もできないわけなんだけど、
マービンはそういうトリッキーなことも。
さ:そうですね。やりながら …何だろ、あえて言うならば、マービンは、玉置浩二さんとか
う:おおー
さ:~♪って言ってみたり、~!!!って言ったり、 ~~♪~♪って言ったりっていう
で、ダニーハサウェイの場合、あえていうと、あえて言うとですよ。
何だろ。アングラ…アングラじゃないな。シュガーベイブとかやってた頃の達郎さん。
う:おおー
さ:チェストボイスばりばりに効かせてたころの
う:チェストボイスって何?
さ:あのー、胸を響かせて、何かこうわーっと大声で歌ってるような、そういう
ビブラートかけて~~♪っていう こういうハウンドって、ゴスペルっぽくて、かっこいいって思われがちなんだけど
う:プロっぽいって感じがする
さ:そう、プロっぽいって感じがするでしょ。簡単なんですよ、これ、わりと。
黒人だったら誰でもやってる。
むしろ、なんかこう、シャーデーとか、マービンゲイとかああいう、繊細な方が難しい。
う:これ、僕がさっきオープニングで言った、
ラップも、やっぱり力抜いてやる方が難しいんですが、
それが出来ると高度な感じがするっていうか
さ:そうだと思う。
う:その感じなのかもしれないですね。
のちほど山下達郎さんもやりますけど、
やっぱ、アレンジ全体の気分としてこれをとらえるか、
シンガーとしての俺なのかっていうあたりなのかと。
さ:そう、そう思います。僕は。
宇:まあ、今日は歌手としての歌の特集なんで。
ということで、玉置浩二さん。
さ:もう、本当にシンガーズシンガーって感じで
楽器ももちろん、本当にうまいんだけど。そういった意味では。
…「ということで」って、まだ玉置さんの話出て来てないんですけど
玉置さんの話する気まんまんですね。この時点で既に
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_nika.gif)
宇:ということで、まずは、ダニーハザウェイとマービンゲイ、比較してみました。
(youtube映像、ここから「その2」なんですが、何故か貼れません…)
続いて、さかいゆうが語る本当に歌がうまいってどういうことか、その2!
ルーサーヴァンドロスの場合。
ルーサーヴァンドロス、音楽詳しい人、ブラックミュージック聴いてる方なら
もちろん知ってるんだけど、ご存知ない方もいらっしゃると思うんで。
1976年デビュー。80年代にはブラックコンテンポラリー、いわゆるブラコンの旗手として、
80年代はもう、覇者ですよね。
ただちょっと、最近言及されることも少なくなってきてるかもしれません。
そんなルーサー。なぜルーサーを単独でとりあげたんですが
さ:ルーサーは、いわゆる、その、黒人シンガーさんが皆やる、
スティービーワンダーみたいな節回しが少ないんですよ。
なんだろ~♪こういう、節回し?こぶし?があんまりなくて、
それって結構ビヨンセとか、アッシャーもそうだけど、
みんな、それでサウンドを作っていくんですね。
それって、すっげーかっこいいけど、皆同じ感じになりがちだったりもするんですね。
で、ルーサーは、どっちかっていうとマービンゲイの方の直系で、
歌を大事にした…歌い方じゃなく。
ダニーもスティービーも割と同じ、ゴスペル直系、ブルースとか直系の、
ペンタトニックな節回しとかが売りの、こういうと、わかりにくいかもしれないんですけど、
もっと、ルーサーとかマービンゲイとかの方が歌謡曲寄り?ポップス寄りっていうか。
ちょっとルーサーヴァンドの方が、
宇:ちょっと聞いてみましょう
宇:今神ことさかいゆうが、ここだ、と指を振って。いま、いま、どこがポイント?
さ:なんか、何だろ。彼は、とにかく、同じなんですね。ライブ見にいくと。
再現度っていうか。どこも。見に行って、僕、細かいとこまで聞くんですよ。
う:きっとアドリブとかも入れたりするんだろうけど
さ:アドリブまで同じなんですよ。えにもー♪の声の倍音まで一緒なんですよ。
えにもー♪じゃなくて、えにもー♪じゃなくて、えにもー♪
宇:常に狙ったところにストン。
さ:完璧に正確に、リズム、発音、全部完璧にやるんですよ。
宇:スティービーワンダーっぽいって言ったのは、ノリで逸脱していく感じってのは、
それは確かにかっこいいし、ブラックミュージックっぽいところなんだけど、
わりと正確に解釈してアウトプットしていく、という。
さ:そうなんですよ。だから、ちゃんとパッケージして、これが100点だってのを出すんですよ。
だから、ブレがないから、1点2点くらいの誤差しかないと思う。
スティービーって、言っちゃ悪いんですけど、
めちゃめちゃいい時とわりと適当にやってる時が結構あって。
宇:ヘタすりゃ鼻歌にもなりかねないっていうときがあるもんね。
さ:結構あって。それは僕も好きなんですけどね。
みんなドキドキして。ミュージシャンぽいっていうか。
宇:あとそのノリで逸脱していく感じが、たとえば最近のアッシャーさんとか
要はストリートっぽいっていうかチンピラっぽいから、
さ:それはもうかっこいい!っていう、ね。今の音楽の感じには合う。
宇:ルーサーヴァンドの方はどっちかっていうと歌謡なんですよ。
さ:そうそうそう。
宇:歌謡、唱歌?っていうか。
さ:マービンとかルーサーとかはでかいホールが似合うんですよね。
で、スティービーとかは…スティービー売れてるから大きいので見ちゃうけど、
本当はクワトロくらいで見ないと。リズムまで全部聞こえて、本当にいいんですよ。
でやると全員赤字になっちゃうから、
せめて、1000人、2000人くらいのとこで聴かないと、本当の意味での良さは。
ルーサーの場合は、マービンでもそうだし、歌に集中したみんなの演奏があるから、
だから、結構その、大きい箱で、ちゃんと届けられるんですよ。良さが。
で、僕は今の僕のスタイルからすると、あんまり、アリーナとかでやっちゃダメな人なんですよ、
と僕は分析してるんですけど。
宇:ああ、自分で。
さ:届かないんですよ。エアで僕、とったりするんですけど、何も届いていない。
だから、結構そういう、もうちょっとちっちゃい所で、やんないとダメです。
宇:それって、でも…僕も今身につまされるなあと思ったのが、合ったサイズってのがあるよね
さ:あります。まずEメジャーセブンスとか、アリーナに適してないんです。
宇:おー!これはすごい。ちょっと複雑なコードは適してない?
さ:適してない。EメジャーセブンスでEフラットにして、
Cシャープマイナーナインスに落ちたときに、もうEセブンスマイナーとか混ざってますからね。
宇:僕、今神の言葉をわかってませんけど、分かる気がするのは、
要は微細なニュアンスは伝わんねえよと。
さ:ルーサーとかマービンもメジャーセブンスとかあるんだけど、
もっと歌謡だから、大きいんですよ。きめも、ダターンタターンとかないから、
宇:声そのものがダイナミックになるっていうか。
さ:そう。僕も例えばほら、なんか
…僕も、なんかライムスター、せめて3000人以内で聴きたいんですよ。
いくらトラックとはいえ。やっぱり細部にこだわってるとことかはあるから、
グルーヴもあるじゃないですか。
あのグルーヴとかはアリーナとかだと大味にならざるを得ないじゃないですか。
「みんながんばれー」とか、言うことも段々大味になってくる。
だから、サイズに合ったものがあると思います。僕は。
宇:でもそのルーサーは繊細ではないということではなくて、ほぼ正確に広く届くという。
さ:単純に言うとローリングストーンとか適してますよね。アリーナスタジアムとか。
難しくてもセブンスくらいですもん。
宇:意識してそれやってるんでしょうしね。ルーサーは、でも相当抜けてる?頭は。
さ:抜けてますねえー、2,3個。
宇:2,3個!抜けてます?他の黒人シンガーより。
さ:。あまり言うと気悪いから言わないけど。
宇:ちょっとルーサーとかはね、改めて聴いてみようという人もいるんじゃないでしょうか。
さかいゆう 歌が上手いって本当はどういうこと?(その3) 2014.02.01
宇:それではちょっと、最後のパートに行ってみましょう。
さかいゆうが語る本当に歌がうまいってどういうことか。その3!ついに来ました
さ:はいはい。
宇:山下達郎と大瀧泳一の場合。
さ:達郎さんと大瀧さんて、単純にもう大好きで。
大好きすぎてずっと鼻血が出てるんです。ほんとに歌が大好きだから。
僕、二人とも聴くと、真逆の…僕の、脳の中の全然違う部分がくすぐられる感じですね。
大瀧さん聴いてる時と、達郎さん聴いてる時と。
基本的に達郎さん聴いてる時は、なんだろう、
イタリア人で言う、オペラを聴いてる時の感じの、圧倒される?
で。一番歌い終わったら拍手が来るじゃないですか。
宇:うんうん。歌が終わった時に拍手がくる感じ。
さ:あれね、歌謡民族というか、歌唱民族なんですよ。演歌とかもそうだし。
宇:具体的に言うと、演奏は続いてても歌の一区切りで拍手が来るってことは、歌が主役ってこと?
さ:とか、サビ終わりで間奏に拍手が来るどころか、
ロングトーンして、エエエーーーイって言ったら、
それが終わって、「ああ、すごいロングトーンだったね」って皆拍手する、みたいな。
一人二人じゃなくて皆共通認識として「今のロングトーンすごくなかった?」っていう拍手。
宇:歌をきいてる。
さ:そう。それが、僕、達郎さんとかきくと、ソウルとオペラとポップスと、何だろ、
やっぱ、プッシュ系なんですよね。
宇:プッシュ系
さ:そう。楽器が後ろで、わあっとせわしなくカッティングいくらしてても、
ずっとロングトーンでこうぶれずに歌って、そこにこう、
例えばスパークルって曲にしても、歌詞じゃない所ですごいロングトーンしたりするんですよ。
で、それって結構シの音?Bとか、普通の男の人だったら出ないくらいの所を、
地声で、ぶわーっと歌うんですよ。
で、ライブ見に行くとわかるんですけど、とにかく声の抜け方と張りでもう圧倒されるんですよ。
出てる音はコントロールしてて、結構ちっちゃめなんですよ。
普通のロックバンドよりはやっぱりその、繊細な、細かいキメとかがあるから、
それを届けたい、全部届けたいはずだから、それに合った音量があって、
ちゃんと自分達が規制をかけて、このくらいまでだったら出せる、ていうのがあるんだけど。
どんなに達郎さんの声が小さくても、音量じゃないんですよね。通る!
宇:これってさっき言ったシュガーベイブ時代までのね達郎さんと違うわけ?
さ:違いますね。通り方が違うっていうか
宇:どう変化したの?
さ:シュガーベイブの頃はもう、
宇:さっきチェストって言ってたよね。
さ:そう。声量と、ソウルで、ある意味力任せっていうか、そこが僕たまらんくらい
宇:そこがある種のソウルフルな。
さ:でもそんなんやったら、5年で喉潰しますから。
でも達郎さんブレイクして、ライドオンタイムで、
多分ライブ年間20本から多い時で40本くらい多分やられて、
そんなので、あんなチェストボイス効かせてたら、喉、ダメになっちゃう。
やっぱ、声がでかい人っていうのは喉枯れるから。
で、段々響きが頭蓋骨方面に来て
宇:頭蓋をゆらしてる?
さ:たぶんね、そうだと思います。
どんなに~♪とかあの声とか、チェストじゃないもん、明らかに。
宇:歌ってみるとわかる。神が。僕らマネできないけど
さ:(笑)単純に、ロジックはそこですよね。
今、僕らが聴いている達郎さんの響きあるじゃないですか。あの、うおーっていう。
あれはちゃんと色々研究したうえで、マイクの乗りとかも全部わかったうえで、
あのー計算したあげくの、このマイク通すとこうなるっていう。
しかもちゃんと抜けもよくしてソウルも残したいわけだから
宇:機械みたいにはしたくない
さ:そう、ちゃんとソウルも伝えながら、その響き、
理にかなった、喉枯れないのを見つけた方だと思いますよ。
宇:特に、自分の声重ねて作ったコーラスも、
さ:僕はもう、テイクシックスとかより凄いと思う。
テクニカルなところでは、テイクシックスとか世界でもものすごい人たちいるけど、
同じ音量で聴いたときの、語り方?なんだろ。青空に飛んでいく感じ
宇:そうだよね、そうだよね、それだよね。
さ:スケールがでかい。そうですね、自分が…あの、達郎さんご自身が
気持ちよく歌いたいがためのアンサブルだと思うんですよ。
細かいジャズなこととかよりも、抜けの良さと、倍音でばーっといって、
しかもそれで歌ってますからね、達郎さん。
それにも負けないだけの声で歌ってますからね。ばーんと。
宇:たぶん、自分の声で出来る事の最大値みたいなものを、
ロジックとして重ねていった結果、最強兵器出来た、みたいな。
さ:そうなんですよ。そこはロジックだけど、そこに気付くのは天然というか、
やっぱりもともと耳がよかったり、自分の事もよくわかってたたうえで、
やっぱり、あの、すごい天才性っていうか
宇:何がいいかにたどり着くのは感性なんですね。
さ:そうですね。実現するには細かい、こういう細かいロジックが必要なんですよ。
宇:ということでここでですね。
シュガーベイブのアルバム「ソングス」に収録されている
1975年のに未収録、90年の再発版CDにボーナストラック収録されている、
シュガーベイブ、これ後ほど何でシュガーベイブ版かを説明していただきますが、
シュガーベイブ版の「指切り」という曲をお送りしたいと思います。
(聴きながら)
宇:かっけー!
やっぱさっきの、投げ飛ばす感じ。若い頃の達郎さんの
さ:ここのソウルも、いいし。
宇:そしてでも、今なんで「指切り」聴いてたかと言うと、
この「指切り」は元々大瀧泳一さんの曲でもあると。
ということで山下達郎さんと大瀧泳一さんを比較していこうと思うんですけど、
大瀧さんは、どんな?達郎さんと比べてどんな感じなんでしょうか。
さ:達郎さんがすごいプッシュしてきて、こう、壁のような厚い歌だとすると、
もう、大瀧さんは、一切プッシュしなくて、ずっと引いて引いて引いて引いて最後引く、みたいな、
宇:ああー、あんまり自己主張避けて(CMで途切れ)
さっき達郎さんの歌を表現するのが、ぐいー、とかすとーんとかそういう、前へ出る…
さ:そう。90年代以降ともなればもう、こういうプッシュ系…みんな、
売れてる人、うまいとされてる人って、全員プッシュ系ですからね。
それがはやりなんでしょうね。テンションがあがりますよね。
大きい所でやると、ぐわーっと。
でも、もしかしたら、引いて引いて引いて最後も引くっていう人の方が実は難しいかもしれないし、
宇:さっきから言ってる、力入れない方がそりゃ難しい
さ:難しいんですよ!
しかも、ほんとに引くだけの人だったら引いてひいてひいて、…聞こえないんですけど、
でも、この方の声は、大瀧さんの声は、耳を奪われるような、
なんかこう歌詞的にも、一輪ずつ花を置いていく感じの、丁寧に丁寧に置いて、
丁寧に置いて、曲終わった後、しーらないという。
宇:そのクールさも、
さ:そのクールさもあるんですよ。あんま、執着しない、というか。
宇:ひいても、でも、こっちは気になっちゃうから、
さ:めちゃめちゃ気になるんですよ。
宇:むしろ耳はこっち追っちゃうみたいな
さ:そう。というのもありますよね
だから「俺をきいてくれー!」というのも出来るじゃないですか。
でもそうじゃなくて何も言わずに、「あーっ」って歌って、
「何この子、すごいいいじゃん」ていう。
どっちもいいじゃないですか。どっちも掴みがあると思うんですけど、
それの後者の方ですよね、大瀧さんは。真似がしづらい。出来ない。
宇:というわけで、さっきのシュガーベイブ版の「指切り」が
耳に残ってるうちに聴いていただきましょう。
1972年大瀧詠一さんのアルバム、「大瀧詠一」に入っている、「指切り」
さ:あんま口開いてないですよね。
さ:このビブラート!すごい、繊細なのに、どうしてこんなに心に染みるんだって言う。
宇:さっきの、ただでさえ口あんま開いて歌ってない所に、
音量が下がるんじゃなくて、こっちにこう、ぐっと!!
さ:そうそう!
宇:聴きますよ、こんな歌うたわれたら。道にちょっとひっかかりあって、お?って何々って。
さ:そう。逆でしょう?達郎さんと。でもどうだいー♪って言われても、それはかっこいいんだけど、
宇:~の凄さと、~の凄さと(聞き取れず^^;;)
さ:もちろん、比べられない、神々の…
宇:でも僕ら、ラップで言えばうちらは超プッシュ派だから、
引きで成り立つ人にもう無茶無茶憧れるというか、もう、くやしー!ってなるところがあるよね。
さかいゆう 歌が上手いって本当はどういうこと?(その4まとめ) 2014.02.01
宇:ということで、すごく分かりやすい比較だったと思うんですけど。
今夜のまとめということで、さかいくんにこれを伺いたいんです。
今日扱った中で、さかいくんが本当に歌がうまいと思う
三大シンガーをポンポンと挙げて頂きたいんですが。
さ:はい。マービンゲイ、ルーサーヴァンドロス、玉置浩二
…今日扱った中でって…
ここまで(表立っては)殆ど玉置さん扱ってないんですけど
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_tehe.gif)
他の人の例をあげながら頭の中ではずっと玉置さんの話してたのね
宇:ということなんですね。
さ:これは何でそういう事かって言うと、引く事もできて押すこともできる人を選びました。
宇:さっき言ったプッシュ系も出来るし、引きも出来るし。
繊細だし、でもでっかいところでも出来るという。
さ:そう。で、細かいところもちゃんとこだわってて、
宇:さっき言った歌の感情も演じるというか。
さ:そう。でも本当にこれは比べたわけじゃくて、あくまで表現の幅が広い方を選んだだけで、
ダニーとマービンと玉置浩二さんと山下達郎さんを比べるわけではない。
宇;どっちがエライと言ってるわけではない。
さ:そうそうそう、表現ね。
宇:普通はラッパーは…僕はラッパーしかわからないけど、
ラッパーだったら楽器に対して武器を一個持ってれば十分なんだけど
さ:そう、一個持ってれば十分。
宇:二つ持ってると相当引き出しがある感じがする。
3つ持ってると天才って感じがする、そういう感じじゃないですかね?
さ:そうですね。
宇:すみませんね、神に。神に通じる言語がないもんで。
最後に、では、玉置浩二さんのを聴きましょう
玉置さんの、どの曲?選んだんでしょ?
さ:僕が一番といってもいい、好きな曲。これはやっぱり好きな曲を聴くしかない。
全部好きなんですけどね。ミスターロンリー
あーああーあーああ~♪(イントロの)
さ:(聴きながら)チェストボイスです。最初。
こんな僕でも~♪
さ:うまい、やばい、マジで。鳴ってますね。体が鳴ってるボイスです。
宇:ああ、体を鳴らしてる。
がんばって~だめで悩んで~♪
さ:(重ねて歌いながら)こんな歌うたえたら、もう、やめてもいい。
宇:そんな!
さ:もうそのくらい凄いと思う。チェストでこう…。
野-に咲く花のように~♪
さ:(歌いながら)ビブラートっていうかゆらぎがある
宇:今のこの、出だしからここに至るまでの
さ:ストーリーがある。
宇:歌い方とか声のメリハリとか、すごくこう、山を作ってみて
さ:これね、単純に歌詞がなくても分かりますよ。どういう気持ちを歌ってるか
(これ、韓国の方がよく言いますね。ソンシギョン氏とかも力説してたし)
宇:で、ここぞってとこで裏声を、クッと入れて来て。
さ:そおおおお!!!
宇:あんなのなかなかねえ。それもいやらしくなく、さ。
さ:おおおー。そうなんですよ!!!これは本当にすごい。
宇:出だしのチェストなんだけど、でもそんなに強くは歌ってないけど、
さ:そうそうそう。ただボソボソ言ってるんじゃなくて、
低いんだけど、すごい芯があって、倍音があって、
宇:で、何かこう、厚さを感じるね。
ちゃんとその裏にある熱気があるからサビに至る盛り上がりも嘘っぽくないっていうか。
唐突じゃないし。
さ:さらにすごいのは、やっぱりね、単純にピッチとリズムがいい。
神様が三個与えちゃった人。
ちょっとしたタメとかそういう所に、異常な細かい
…僕はマービンゲイよりも、もしかしたらうまいと思っちゃう方ですね。
宇:玉置さんはそれこそ、シンガーズシンガーで、皆、実は大絶賛してるんだよね。昔から。
達郎さんも確か、何かの記事で、すんごい…安全地帯が普通に売れてるときに、
『ふつーに売れてるグループだからってなめるなよ』みたいな。
俺、読みましたよ。達郎さんのそれ。
あんなにすごいグループはみたいな、わかるんすよ。
これだよ、俺が言ってるのは、こういう事だよ。神の視点だよ!
宇:今日の特集、天才シンガーソングライター、
というか神の人、さかいゆうが語る、歌が上手いって本当はどういうこと、
今夜はありがとうございました。
さ:はははは(苦笑)
宇:困っちゃってるかもしれないけどさ。まさに、これなんですよ。さっきの。
僕らも、例えば玉置浩二さんのを聴いて、素敵だなあと、
そりゃ、普通に理屈じゃなく感動するんだけど、やっぱ、プロの方が聴きが丁寧だから。
言われてみると、ああ、確かにこのビブラート、凄いかも、とかさ。
その、ちょっと見る精度がちょいと上がる感じっていうか。
そういうのが今日、あったと思うんですよ。
さ:なるほど
宇:ありがとうございました。これからも聞く耳が変わるんじゃないかと思います。
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ありがとうございました。
なるほどなー」って思いました。普段何となく感じてることについて。
聞く精度がちょっと上がったような気がします
それにしても…
別の人の話してるけど、これ殆ど最後の玉置さんの話をするための
例なんだろうなあーって感じがしちゃいます
ダニーハサウェイより、歌の表現力では一枚も二枚も上手というマービンゲイより、
さらに玉置さんが凄いと言っちゃうし
山下達郎さんと、大瀧詠一さんを絶賛しておいて、
玉置さんはその両方(プラスα)を持ってるって言ってるんですよね?
唯一関係なさそうな、ルーサーヴァンドロスの話でも、
彼のすごさは、こぶしや節回しに頼らない、
歌い方じゃない、歌そのものの良さだってことを言ってるんだけど、
それって、玉置さんが昔何かの番組で言ってた
「あまりビブラートかけないで、うまく歌わないで歌う」
(表現は違ったと思うけど、そんなような感じの事)
っていう歌い方に通じるような気がするんですけど…それはちょっと読みすぎかな?
まあ、でも、さかいさんも強調してますけど、うまさってそれぞれだし
どっちがエライじゃないんですよね
…極端に言えば、必ずしもうまくなくたっていいわけだし
長く安玉ファンやってる分、逆にヘタな人にも寛大かも。私。
だって全ての歌手に玉置さんレベルを求めたらかわいそうですもん
うまさ、以外にも良さは色々あるわけですしね
結局、さかいさんて、玉置さんのこと、すっごく好きなんでしょうね
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どんなふうに上手いかをロジックで説明は出来るとしても、
結局は心とか感情に訴える力の強さが玉置さんの凄さなんだろうなあ
やっぱり結局は「好き」っていう、最も非ロジカルな感情の部分に来ちゃうんでしょうね
その部分は、私たち一般のファンと変わらない気がする
…そして、ここで、神様が3個与えちゃったってこれが、
玉置さんの音楽性の中の、「歌唱力」の部分だけなんですよねえー。
さらにこれに「作曲」のすごさもあるし、鍵盤以外、楽器一通りひけるし
さらに音楽性からちょっと逸れて、演技とか、言葉の感覚の凄さまでありますからねー。
ほんと、この人何者なんでしょうね
まあ、これだけ神様からもらってたら、少々変な人でも仕方ないよなー
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よい書き起こしありがとうございました!