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早野巴人の世界(その八)

2004-10-11 11:17:21 | 巴人関係
(早野巴人の世界(その八)

○ 広庭に淋しくまはる一葉かな

 季語は「一葉」(ひとは)で秋。句意は「広い庭を風に吹かれるままに、大きな桐の一葉が、淋しそうに走り回っている」。巴人の句としては数少ない叙景句の一つである。巴人には、時に、比喩句などの技巧的な句ではなく、掲出句のような客観写生的な句を見ることができる。
 そして、こういう句が、巴人を俳諧の師とした蕪村が、より多く、後に、自分のものにしていったということを、蕪村の句に接していて、思い知るときがある。

  広庭の牡丹や天の一方に 蕪村

 巴人が「桐一葉」なら、蕪村は「牡丹」と、その「桐の一葉が地上を走り回っている」なら、蕪村の「牡丹は天空の一方に」と、蕪村のこの句は、巴人の掲出の句を意識しているに相違ない。そして、十七音字と極めて短い詩形においては、不意に、心の片隅にあった他の人の句などが思い起されてくることがしばしばある。この蕪村の句なども、蕪村の好きな牡丹を飽かず眺めていながら、蕪村は巴人のこの桐一葉の句を思い浮かべていたに相違ない。

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