昨日(18日)の夜のこと。TVニュースを見ていた母親が大声で「松下がパソコンの要らないiPodってのを発売するんだって~」と私を呼んだ。しかし「なんじゃそら」と思って見に行くともうそのニュースは終わっていた。最近ようやく「iPod」という単語を覚えた母親から断片的に情報を得たところ、
・会社は間違いなくAppleではなく松下(だからiPodでは無い)
・パソコンレスのデジカメプリンタのように、パソコンが要らない携帯音楽プレーヤー
・パソコンは要らないけど必要機材を揃えると10万くらいしちゃう
・「今まで松下はこの市場で遅れを取っていたがこれで一気に巻き返す」と息巻いていた
(以上あくまで母親の談)
とのこと。「大抵テレビのNEWSはネットの情報より遅れているもんだ」という先入観が強かった私は「そんなこと初耳だけどなぁ?」と気になってITmediaニュースなんかを覗いてみたのだが、昨日はそれらしい記事は見当たらなかった。
一日経ってそんなニュースのことなど忘れかけていたが、毎度お馴染み「
Apple-Style」さん経由で「キミはiPodで何を聴く?」さんの「
パソコン所有が前提のiPodに対抗するには...」という記事を見つけてやっとすっきり^^。
というわけで(前置きなが~)、この「D-dock」と「D-snap Audio」について雑感。まず、上記「キミはiPodで何を聴く?」のkomupiさんも既に指摘されているように、iTunesのようなユーザーフレンドリーな楽曲管理インターフェイスをパソコンレスでどこまで実現できるのかちょっと疑問。ただしこれは頑張れば出来なくもないかもしれない。
そして、パソコンレスという視点は「いずれ出て来るだろうな」とは思っていたが、やはりiPodに対抗する上でそれなりにアドバンテージにはなると思う。だがしかし、問題はそのお値段である。公式サイトをざっと見たところ気になる価格について載っているところが見当たらない(見落としてるだけかなぁ?)。オープン価格になる可能性もあるしサイトにでかでかと書かれていないのはまぁいいとして、もしホントに母親がTVで聞いたとおり「全て揃えると10万くらい」だとすれば、おそらく訴求力はぐぅ~~~んと下がる。
デジカメプリントでパソコンレスが求められている理由は(以下私の私見ですが)、まず
「カメラで写真を撮る」という行為を(たまにであっても)する人、またそれを趣味として本格的に楽しむ人の年齢層が老若男女多岐に渡っているということが一点。つまり、最近安価で高画質なデジカメが普及してきたため、これまで一眼レフで本格的に撮影を楽しんでいた高年齢層の人やインスタントカメラでたまにしか写真を撮らない人たちがデジカメに対して興味を持つようになってきたという背景があり、更にその中のパソコンを持っていない人たちに対し「パソコンフルセット揃えなくてもデジタルカメラは楽しめますよ」という部分がパソコンレスプリンタの魅力となっているわけである。というより、デジカメの場合カメラをお店に持っていけばそもそもプリンタさえ要らない。これまでのように「カメラを買い、撮れる枚数めいっぱい写真を撮り、撮り終えたら店に“現像”にし行く」という行為の中で、カメラの中身がフィルムなのかメモリーカードなのかなどと意識する必要は無いと言ってもいい。
次に、
デジカメ+プリンタという選択肢は割と組み合わせが幅広く、安く済まそうと思えば安くもでき、こだわりをもって機能や画質を追求することも出来るということ。「写真を楽しむためだけにわざわざパソコンを買うようなことはしたくない」という理由は「そんな金があるならその分もっといいカメラを買いたい」ということであろうし、「とりあえずデジカメだけしか買える余裕が無い」という人でもまずカメラを買ってプリントはお店にまかせる、という選択肢もあるわけだ。また
値段だけでなく「パソコンの複雑な操作を覚えなければならないのも面倒」という理由もあるだろう。
もう一つ。プリンタの場合、
パソコンを持っている人にとってもパソコンレスは有り難いということがある。パソコンをいちいち起動させたり画像を読み込んだりする手間を考えると、撮ったものをさっとプリントできるのは便利なのである(ただしパソコン経由より画質が落ちるらしいですが)。
と、ここであらためて松下の「D-dock」とやらを考えてみる。音楽を楽しむのはカメラと同様老若男女の趣味の一つだが、これまでカセットテープやCDで音楽を聴いて来た人たち(主に高年齢層と仮定)に対して、デジカメ+パソコンレスプリンタと同様の訴求力があるだろうか? カメラなら写真を撮ったあとお店に行けばプリントできるし、普通に撮るだけならさほど難しくはない。しかしこの「D-dock」の場合どうだろう。CDを中に入れてHDDに記憶させるという操作がどの程度簡単かという問題があるし(これまでパソコンを一切使ったことが無い人は多少戸惑うはず)、下手したら記憶なんかさせずCDを入れてただ再生させるだけ、という使い方をされてしまうかもしれない。これでははっきりいって普通のコンポと変わりがない。
次に選択肢が多いかどうか。今後このようなSDカード対応型の携帯プレイヤーやHDD型オーディオプレイヤーが各社から出てくれば問題は無い。しかし松下のこの「D-dock」と「D-snap Audio」しか無いという現状のままであれば、母艦の選択肢は40Gタイプと80Gタイプの二つしか無いわけだし、携帯プレイヤーは「D-snap Audio」のラインナップから選ぶしか無いということになる(それともSDカードを使うプレイヤーってもう各社から出てたりしてるんですかね? iPod以外はよく知らないんです実は…)。
選択肢が限られるとなると値段は大問題である。多分「D-dock」だけなら値段は数万円だと思うが、40Gタイプでも果たして3万円で買えるかどうか(スピーカー別売りにすればいいのにそうじゃなさそうだし)。今、WindowsXP(Homeエディション)のインストールされたショップPCの値段は最安で5万円台からある。「カメラ=携帯プレイヤー プリンタ=D-dock」という対応で考えてみた場合、カメラと違って携帯プレイヤーはそれを買っただけでは使えないし、プリンタは一万円以下のものも選べるのに対しD-dockは値が張りすぎる。逆に「カメラ=D-dock」という見方で、先にD-dockだけを買って音楽を楽しむことを考えても、それならコンポと大差ないんじゃないかという気がする。更に、カメラの場合は「カメラのためだけにパソコンも買うのは馬鹿馬鹿しい」という人にパソコンレスプリンタが意味があったのに対し、このD-dockの場合「これならむしろパソコンを買っちゃった方がいい」と思わされる部分があるのが問題だ。もしD-dockの操作が難しくインターフェイスも悪いとすると、パソコンを買ってiTunesの操作を覚えた方がよほど早いということになるかもしれず、値段が5万以上するとすれば「コレを買うならいっそインターネットも出来るパソコンを買っちゃおうか」という気になるだろう。iPodがパソコンとケーブル一つで繋がるのに対しいちいちSDカードを経由させるというのも面倒な点と言えそうだ。
で、最後の点について。これが「パソコンを既に持っている人たちに対して魅力があるか」と言われると、まずない。「全くない」と断言できないのは、公式ページを見ていたらどうもラジオ放送の録音やカセットテープ・MDからの録音も簡単にできるらしいと気がついたからである。カセットの音源をPCに移すのはなかなかに面倒なので、もしこれでHDDに簡単に保存できるとすれば私にはかなり魅力である(「AUX接続」と書かれているが、接続なんかしなくてもコンポ同様D-dockだけでカセットやMDやラジオが再生出来てなおかつHDDに録音出来るようになるなら相当魅力)。
結論。鼻息荒いのは結構だがやっぱりこれではiPodに勝てずコケる可能性は高い。見込みがあるとするならば、
・インターフェイスを徹底的に練り、操作を簡単にすること
・スピーカー別売りバージョンも作り、D-dock自体の値段は徹底的に押さえること
・各社からD-dock同様のパソコンレスHDDプレイヤーとSDカード対応携帯プレイヤーが発売され、それぞれに互換性があること
・D-dock内のHDDがPCの代替HDDとして使用できること(これはフォーマットの問題やらがあるし難しいのかな? iPodみたいにOS入れちゃったりできると面白そうなんですが)
これが実現されるとなると、iPodはちょっと危ないかもしれない(まぁあくまで私見ですけど)。はっ、不覚にも松下にiPod対抗策を指南する形になってしまったではないか。でも多分大丈夫。だって松下にはこんなこと無理、うん。今のソニーにも多分無理。出来るとしてもその間にAppleはどんどん先へ進むだろうし。わーいAppleばんざい(延々書いておいて最後のオチがこれかいっ)。