今だから話そう~障害者のきょうだいとして生きて~

自閉症で重度知的障害者の妹として経験した事、感じた事、そして今だから話せる亡き両親への思いを書いてゆきます。

施設入所者家族の滞納問題

2007-05-21 20:52:19 | 障害者自立支援法

障害者自立支援法が施行されて早や2ヶ月が過ぎようとしていますが、障害者やその家族のあり方が少しずつ明らかになってきました。


まず障害者自立支援法の判定が比較的高めになるのは「在宅支援」であるということです。

これは障害者が自宅で生活し、家族やヘルパー等に支援してもらう場合です。

障害の程度であるとか地域の状況であるとか、さまざまな事情で判定もバラバラになるようですが、家族が支援に直接関わっていることが多く、障害の程度をリアルに説明しやすく事情をわかってもらいやすいということが考えられます。

次に判定が高めになるのは、「通所支援」の場合であるといいます。

これは利用者家族が熱心な傾向があり、障害者自立支援法の矛盾を積極的に抗議してゆく傾向があることが関係しているのかもしれません。

そして、判定が低めに出てしまうのが、「知的障害者施設利用者」であるといいます。

これは利用者家族が互いに交流をはかる機会が極めて少なく、「施設⇔利用者家族」ばかりで、「利用者家族同士」の団結が生まれにくいためです。

施設に入所している場合、利用者はさまざまな地域から来ています。

そのため、面会日には家族は利用者に会いにくるのに熱心で、他の利用者家族との交流は希薄になりやすいのです。

利用者の家族間の交流は大切ですから、施設側が中心となって利用者家族をまとめようと努力しているのが現実です。

 

そうそう、兄の施設もさまざまなことがわかってきました。

施設利用者は自立支援法で決められた費用のほかに、「会費」というのがあります。

利用者家族の会のための「会費」のほかに、施設の改築・修繕・新設のための「積立金」があります。
(ただし親きょうだいが死亡した場合、会費や積立金は免除されています。)

施設に支払うべき費用は医療費やお小遣いを差し引いても、障害年金の金額内におさまるようになっています。


でも、最近は施設への支払いが滞る利用者が出現し始めています。

私の兄は長年施設にに入所していますが、このような滞納問題が起きたのはここ数年だといいます。

兄と同様に長年入所している利用者の家族は支払いに関してはきちんとしてきました。

現在は障害年金から施設費用を支払うようになりましたが、ほとんどの家庭では障害年金は障害を持つわが子の将来のためになるべくつかわないように努力してきたからです。

障害者負担が増えた理由は、以前なら施設はその費用は国や自治体の援助を受けていたからです。

しかしその援助も半分になり、施設運営は厳しくなってしまったのです。


さらに、福祉制度は措置費に移行され、次に障害者自立支援法が施行されるなど、制度の変化に伴い、施設利用者にさまざま金銭的な負担がのしかかるようになりました。

理論上では、費用等はすべて障害年金の範囲で賄えるということになっています。

でも実際は異なります。ちょっと近所に外出支援をお願いするにしてもお金がかかります。

まあそれは仕方がないことかもしれません。


そのような費用負担が増えたことで、一部の利用者家族は施設費用等を滞納するようになりました。

私はこの滞納という事態を知ったときには正直驚きました。

「会費」や「積立金」だけではなく、施設に支払うべき費用までも支払わないまま、障害者をもつわが子を施設に入所させているのです。

結局、費用を滞納する理由は、その家族が障害年金を当てにして生活してきたという証拠なのです。

ですから障害年金をから先に自分たちの生活費を引き出してしまえば、残高が少なくなり引き落とし不可能となります。これが続いているというのです。

たしか施設入所時の契約書には「6ヶ月以上滞納した場合には退所する」と書かれてあるそうですが、私も含めてほとんどの利用者家族がそのことは知りませんでした。

ほとんどの利用者家族は支払うのは当然だと考えていますから、滞納するということは想像もできなかったというの最大の理由なのですが。。。


この滞納問題を多くの利用者家族は知りませんでした。

しかし、年々会計の収支を見ますと「未収金」(=滞納金)が増えている現実を、先日の総会(利用者家族の会議)で知ることとなりました。

とはいっても、施設利用者の家族は意識が低いのか、総会の出席者は全体の半数以下でした。

 

年々増加する未収金について、施設だけでなく利用者家族も深刻に受け止める時期になりました。

会費や積立金だけではなく、施設費用も支払わない利用者家族の存在を知った出席者の多くは驚いていました。


さまざまな事情があると思いますが、滞納はいけないと思います。

私は兄の施設はハイレベルは支援をできるところだと感じています。

その理由は、私の兄も含めて、他の施設ではうまく支援できなかった人が、兄のお世話になっている施設に移ってくると、数ヶ月で社会性を身につけて成長していきます。

私はそんな事例をいくつも知っています。

そういった点で着実に成長できる場所で、支援レベルは高いと思います。

だからこそ、施設運営に支障が出るような滞納は深刻な問題なのです。


それでなくとも職員さんは薄給と過酷な労働体系で大変な思いをされているのに、利用者家族としては費用の滞納などもってのほかだと思うのです。

今も施設入所を待っている障害者が何人もいます。

中には生きるか死ぬかまで追い詰められている障害者の家族もいるでしょう。

そんな厳しい現実があるというのに、障害年金で生活したり、費用を滞納したりする家族の存在は施設運営に影響を与えています。

滞納する利用者も現在はごくわずかで、多くの利用者家族は金銭的支援をすることで利用者の預金を減らさないように努力していますから、しばらくはなんとかなるでしょう。

でも、障害者をとりまく現実は年々厳しくなっていきます。

今のところ、施設側は福祉事務所に間に入ってもらって、障害年金が振り込まれる通帳を施設が預かっ

て、滞納分を少しずつ返金してもらうということで、利用者を退所させないで済むように努力しています。

多分、施設側は利用者の立場を第一で出した結論だと思われます。

費用を支払わないから即刻対処しろというのは施設も非人道的でできなという福祉の立場も関わっていると思われますが・・・。

 

私は以前はこんなことを考えていました。
「両親が他界し、きょうだいの代になると、経済的に支援をできる人とできない人に分かれて、親じゃないから関わらなくてもよいと思っているきょうだいは施設に面会にも訪れなくなる。
だから、親きょうだいとの縁を失った利用者は自分の預金と障害年金を頼りに、施設で細々と生活することになり、我慢を強いられる。」

でも、現実にはそうでもないということですね。

親きょうだいがいることで、さらに経済的に追い詰められる利用者も存在するのです。

利用者の家族同士で団結しあう努力が必要だと思いますが、兄の施設は特に無関心な家族が多いので、これからどうなっていくのか心配です。

 

他の施設でも同様の滞納問題はありますか?

また、利用者家族同士で関わり方はどうですか?

 

気になっています。。。。。