横浜港北おもちゃ病院の活動記録

ドクターの一人であるYoshi61が代表して記録しています

テスターのアダプタ(テスターの使い方)篠原地区センタ

2021-11-29 22:57:23 | ノウハウ集

もう、あと1ヶ月で今年もおしまいです。コロナで始まって、コロナで終わる1年でした。来年はどうなるのでしょうかね。

さて、11月の最終週、11/27は篠原地区センタで活動しました。

 

今回は、テスタの便利道具からご紹介します。これなんだか、わかりますか。

これは、圧着端子の電極に、縫い針をはんだ付けしたものです。これをテスターのテストリード先端につけ、針先を検針棒として使うのです。どんな時に便利かと言うと、例えば、充電式のリチウムイオン電池の小さなコネクタの電圧を測るのに使えます。

充電式リチウムイオン電池は、こんなやつです。

最近では、工作用リチウムイオン充電池で検索すると、色々なタイプのものが売られています。交換する際は、大きさ(縦・横・厚さ)、電圧(V)、容量(mA)を確認し、同じものを用意する必要があります。このリチウムイオン電池、コネクタが小さく、テスターのテストリード(赤と黒のリード線と検針棒)では、検針棒が大きく、電極に接触させることができません。そんな時、こんなアダプタを作っておくと便利です。ショートにはくれぐれもご注意を!

 

このアダプタは、電池ボックス周りのリード線の断線確認にも使えます。この針先でリード線の被覆を突き刺して、内部銅線に接触させ、電圧を測ることができます。今回のアダプタ以外でも、ワニ口クリップとICクリップをつないだアダプタを作っておくと、テストリードを手で押さえておく必要がなく、電圧が測定できて便利です。

この日の修理で苦労した1件のおもちゃをご紹介。天井にスクリーン投影し、音楽が流れる家庭用プロジェクターです。故障内容は音楽はなるけど、天井にスクリーン投影しないとのこと。バルブ切れかなと思って、中を開けて、色々調べてみました。

確かに、基板から照明(LEDだった)とモータへの電圧が出ていません。さらに基板を眺めていると、上の黒いICが音楽用、下の黒いICが照明とモータと想定できます。下のIC不良なら、直すことは不可能です。困った、困った。

お昼を食べて、気持ちを入れ替えたあと、LEDとモータユニットのハンダつけを外し、それぞれの動作を単体で確認し、再度取り付け手組み上げてみると、なんと直ってしまいました。結局、故障原因はわからないけど、直ったのでよかったです。おもちゃ修理は、こんなことがよくあります。原因不明なので、再発したら、またお持ちください。


ラジコンGTーR(特殊ギヤの補修 その3)

2018-07-28 18:58:06 | ノウハウ集
今日は台風が直撃の日でしたが、篠原地区センターの出だしは、ぼちぼち。

そのうちの一つ、ラジコンのGTーRが持ち込まれました。


故障状況を聞くと、前進しない(?)とか音がする(?)とのこと。まずは、電池を確かめると5本の単三電池は全て0V。持ち込まれたお父さんに、「どれも使えなくなっている電池です。マイナスを示している電池もあって、液漏れ寸前ですよ」とお知らせすると、「なぜ、液漏れするのでしょうか?」との質問。うーん、そういえば正しく・やさしくお答えするのは難しいなぁ。「電池は、おもちゃから外しておけば、液漏れしません。しかし、おもちゃに入れっぱなしにしておくと、電流が流れ続け、化学反応で電圧を作っている電池は、ガスを発生するから、液漏れするのです」とお答えすると、「液漏れしない電池は作れないのでしょうか」と、お父さん。なかなか、突っ込みが鋭いです。「急速にガスが増えると、危ないので、安全上漏れる仕組みなんです」とお答えし、ご理解いただけました。そういえば、昔の電池、膨らんでしまったものもありましたねぇ。

さて、電池を入れて、GTーRを動かしてみると、ガラガラ鳴ってます。これは、ギヤボックスの故障が明白なので、早速中を開けてみますと、ギヤが、それも特殊ギヤが割れていました。


ということで、今回は特殊ギヤの修理3回目です。前回、ギヤの修理方法を3種類、ご紹介しましたが、まさにその2つ目、割れたギヤの補修をしなければなりません。ギヤはポリプロピレンですから、しっかりくっ付く接着剤はありません。犬のぬいぐるみの骨折も同じですが、金属板で補強するしかないと修理方法を決め、ギヤボックスをしっかり眺めました。ギヤの噛み合いをしっかり覚えてから、真鍮の金属板を2mmの皿ネジを3つで補修しました。どうです、よくできたでしょう。


自信を持って組み上げると、なぜかガラガラと音がします。あれ、ギヤ直したのになぜ。。。最初は補修したネジがギヤボックスに当たっているのかと思い、何回もギヤボックスを分化し、組み立ててもわかりません。うむむ。根を詰めず、お昼にしました。昼食後、気持ちをとり直して、補修したギヤをルーペで見ていると、補修したギヤに隙間があり、あるギヤの歯のところで、モーター側のギヤが噛み合うとき音が出ることがわかりました。さて、これ以上、精度の高い金属板の補修はできないので、小さなヤスリで、原因の歯を気持ち削り、組み上げました。


若干音は出ていますが、遊ぶのには問題ないこととお客様にお伝えして、修理完了。やー、ギヤの補修は難しいなぁ。(特殊ギヤの補修 その4)が来ないことを祈るばかりです(笑)。

猫のぬいぐるみ(特殊ギヤの補修 その2)

2018-07-15 12:05:44 | ノウハウ集
今日7/14は神奈川地区センターで、おもちゃ病院を開催しました。前回、特殊ギヤの補修を行った犬のぬいぐるみを紹介しましたが、今回は、猫のぬいぐるみが持ち込まれました。



故障状況は、猫は正常に歩くけれど、鳴き方が不自然ということでした。中を開いて原因を探ってみると、ふいごを押すリンク機構にあるギヤに2山の歯欠けを見つけました。前回の犬のぬいぐるみは、歩行するギヤボックス内の特殊ギヤ2つが歯欠けしていたのでした。今回は、鳴き声を作るふいごのギヤが歯欠けしていたのでした。

ギヤは歯欠けしたり、軸方向に割れて空回りすることがあります。一番良いのは、同じギヤに交換することです。ピニオンギヤは、8歯、10歯などがミニ四駆などで使われており、模型店など購入できますので、即交換です。しかし、特殊ギヤの場合は、なんとか治すしかありません。軸方向に割れた場合は、ギヤの端を細い金属線で縛ることがあります。今回の猫のギヤのように、特殊ギヤが歯欠けした場合、修理方法は3つあります。一つ目は、(1)同じピッチのギヤを重ね合わせることです。この場合、ギヤの厚みは二倍になってしまうので、構造によっては使えないこともあります。二つ目は、(2)ギヤの歯欠けしている部分をくり抜き、同じ歯数のギヤで補修部品を作り、張り合わせます。言えば簡単なようですが、小さなギヤにおいて、手作業で補修箇所をくり抜き、それとピッタリあう部品を用意するのは簡単ではありません。最後の方法は、(3)歯欠けした部分に金属を埋め込む方法です。



前回の犬のぬいぐるみでは、リン青銅板を埋め込みました。今回は、歯欠け部分に金属ピンを埋め込むことにしました。ギヤの厚さは1.5mmと薄く、ギヤの両面には他の歯車が位置するため、前回の方法では無理と判断したからです。まず、歯欠けしたギヤを万力で垂直に固定し、0.3mmのキリで下穴を垂直に,深さ5mmほど開けました。次に0.5mmのキリで穴を広げ、0.55mmのステンレス線の長さをギヤの歯高に合わせて長さを調整し、打ち込みます。



結構難しい修理でしたが、組み上げてみると、猫はちょこちょこと歩き、止まって尻尾を振りながら可愛く鳴きます。よかった!


赤ちゃんビーグル(特殊ギヤの補修 その1)

2018-07-14 12:27:02 | ノウハウ集
七夕の7/7は駒岡地区センターのおもちゃ病院でした。今日は予約もなく7人のドクターは手持ち無沙汰です。11時過ぎにようやく親子(父娘)が動く犬のぬいぐるみの治療にやってきました。持ち込まれたおもちゃは、イワヤというメーカーの「あかちゃんビークル」で、歩いて鳴いて尻尾をかわいらしく振って伏せができる、かわいいビーグルのあかちゃんワンちゃんです。



触診では足は折れていないようですが、電源を入れても動きません。さっそく開腹し中を見ると、左前足のリンク部が折れて、ギヤボックスがロックしていました。さらに分解すると4ヶ所の複雑骨折です。3人のドクターで手分けして骨接ぎ手術です。補強の接着剤が硬化するまで待って再組立てするともう閉院間際、受取りに見えた保護者の前で動作チェックをすると伏せ動作モードでカチカチ音が続き、伏せ動作をしません。骨折だけだと思っていたのですが、他の故障もあったのでした。退院を期待していた女の子の「わんちゃん、まだがんばってね!」の声援を受け、入院することになりました。

持ち帰った(入院した)おもちゃを後日調べてみると、どうやら、ギヤボックスが怪しそうです。そのギヤボックスを分解点検すると、二つの特殊なギヤがそれぞれ歯欠けしていました。第1の特殊ギヤは3つのギヤが一体となっていて、そのうちの9歯のピニオンギヤが2ヶ所4歯欠けていました。そこで、9歯のピニオンギヤをカットし、同形状のピニオンギヤを圧入して補修しました。第2の特殊ギヤは、軸がクランク機構を持ち、31歯のスパーギヤが2ヶ所2歯欠けていました。さて、このスパーギヤの補修は悩みました。軸がクランクなので、第1の特殊ギヤのようにカットして交換することができません。思案の末、ギアの歯欠けをリン青銅板で補修することにしました。欠けている部分に切込を入れ、0.5mmリン青銅版を歯丈に合わせ慎重に取り付けました。



補修したギヤにグリースを塗布し、ギヤボックスを再組立て、電源を入れるとちゃんと伏せ動作をしました。大成功!!翌日、女の子のよろこぶ姿を目に浮かべながら、地区センターへお届けしました。

バズの骨折(強度の必要な接合方法)

2017-12-11 23:43:26 | ノウハウ集
これも綱島の修理記録です

トイストーリのバズは人気者。色々なおもちゃがあって、修理することが多いです。このバズは、両足を握ると内部の接点が入り、手の光線銃が光り、バズの頭の周囲のLEDチューブが光りながら回転するおもちゃです。


どうやら、力いっぱい握ったらしく、動く方の足(右脚)の骨が真っ二つです。しかも根元で・・・・ これかなり重傷です。


故障は、この折れた部品を直せばいいのですが、握る力がもろにかかる部分なので、接着では強度が足りません。


持ち主さんにはその旨を伝えたところ、動かなくてもよいのでせめて足だけでも繋げてほしいとの依頼でした。さてどうしたもんだかとドクターが集まり、アーでもない コーでもないと修理方法に花が咲いた????ところ、当て木か内部に金属の丸棒を埋め込む方法がよいのではとの結論に達し、当て木から行って強度が低いようならばさらに金属の丸棒を埋め込むことにしました。時間も限られているので二人で手分けして行うことになりました。

当て木には厚さ1mmの真鍮の板を使うことにしました。なんと真鍮の幅は部品の幅と測ったようにピッタリ。何となく幸先の良さを感じながら、穴位置を決めて、穴を開けてボルトナットとタッピングビスを使用して当て木の作成完了。


いやいや、思った以上に良くできました。強度もあるので、丸棒を埋め込むことはせずに、このままで組み込みました。ボルトや補強材が当たる部分は削ったりして調整し、スプリングを組み込むのに若干手こずりながらも完成しました。


二人がかりでも結構、修理に時間がかかり、おもちゃ病院の終了時間、ギリギリに仕上がりました。難しい修理をやり遂げたときの爽快感は格別です。この爽快感を求めておもちゃドクターは難題に挑戦しているのです(カッコつけすぎかな)。

修理に来たご両親や子供たちは、おもちゃが直った喜び、おもちゃドクターは修理がうまくいった爽快感で、一石二鳥。めでたしめでたし。