サトシアキラの湾岸爆走日記(自転車でね♪)改

一言:ここは俺が引き受けるから、早くクリスマスを……!

R・U・R・I・第1話 「Legacy Of Father's Friend」

2005-12-30 01:14:36 | 俺小説
ピンポーン!
 チャイムが鳴ったにもかかわらず、俺はベッドに寝転がったままだった。何故って、面倒臭いからに決まってる。
 俺の家を尋ねてくる人間など、新聞勧誘員ぐらいしかいない。窓から外を見ると、空はそろそろ夕焼けに染まってくる時間帯だった。腹も減ったし、流石に起きようか…と一応は考える。だが、休みで怠けた身体は、布団の中の惰眠を至福としているらしく、一向に動く気配をみせない。こうなるともう、思考と身体がバラバラになってしまったとしか思えない。
ぴんぽーん!
ぴんぽーん!
ぴんぽーん!
 招かれざる客は、チャイムを連打しやがってくれている。ああ、ウルサイ!とにかく俺はただ、春休みの惰眠を貪っていたいだけなんだ!!だから何もしたくないんだ!
実際には、それほど連続して鳴ってはいないチャイムだが、寝起きの頭は、どんな些細な事柄もネガティヴな思想に変えてしまうものらしい。
ぴんぽーん!
ぴんぽーん!
ぴんぽーん!
 ああ、解ったよ、出ていってやるよ。そのかわり、くだらない用事だったら、見なさいよ、地獄を。俺は、尻を掻きながら階段を下りていった。玄関に出るまで、チャイムは止んでいた。
「あいよ、どちらさん?」
 俺はドアを思いっきり不機嫌に開け放った。と、そこには・・・。一人の女の子が立っていた。うわ、色白でキレイなコだなあ。そんじょそこらのアイドルじゃあ、百人寄せ集めたって太刀打ちできそうもないぞ。髪は、腰くらいまでありそうなサラサラなのを、左右ともこめかみの上あたりでゴムでまとめてある。二本の触角みたいと言えば、分かってもらえるだろうか。今では、ツインテールなる呼び名もあるそうな。背は、175Cmの俺よりもかなり低い。150Cm前後だろう。オマケに顔は小さい、足は長い。それはいい。問題は歳だ。子供っぽいといえば、小学生にも見えるし、ちょっと大人びても見える。12から15の間、といったところか。しばらく眺めていると、初めて彼女が口を開いた。
「亮太郎さんですね、初めまして。私、瑠璃といいます。これから宜しくお願いします」
 瑠璃さんなる美少女は、両手をひざの上に添え、深々と頭を下げた。それにつられ、ああこちらこそ。と、返事をしかけて、彼女の言葉の意味を頭の中でようやく咀嚼した。くれぐれも言っておくが、俺の頭の働きが特別鈍いわけじゃないからな。寝起きのせいだ、寝起きの。
 でも今、確かこれからって言ったよな?聞き流しそうになっていたが、妙にインパクトのある言葉の様な…
「ちょ、ちょっと待ってくれ。君は一体誰なんだ、それにこれからって?」
 彼女の呼吸が一瞬、止まった。
「話、聞いていないんですか?」
「話?」
「はい。おじさまから」
 そんな!!親父は最近、電話も滅多によこしていない。…だが待てよ、確か親父からの手紙があったよな。どうせ、下らない話だと思って、読まずにほっぽっといたんだっけ。俺は、瑠璃というコを置き去りにして、二階の俺の部屋に駆け上がった。そして、雑誌の下に埋もれていた、親父の手紙を発掘して、呆然となる。今すぐ読もうとして、階下で彼女を待たせているのに気が付き、とりあえず下に下りて行った。

 こ、こんなことがあっていいのだろうか?!

 三月の二十日午前頃、瑠璃がそっちに行くから、面倒見てやれ。もっとも、お前の方が面倒を見てもらうと言ったほうが正しいだろうがな。P.S.…ちなみに、瑠璃はお前の妹になった子だからな!!早合点して鬼畜を致さない様に。

 あまりの手紙の内容に、卒倒を抑え込むのは難しかった。お、親父めええええ!!こんな舌っ足らずの手紙一つで俺を納得させようというのか!!しかも、余計な最後の一文まで加えやがって!!
「解っていただけましたか?」
「駄っ目だあ!!この手紙じゃ何もわからーん」
「きゃっ!すいません!」
 俺の剣幕があまりにも強すぎたか、彼女は身を竦ませた。
「あ…ごめん。それよりも、これを見てみなよ。これじゃあ、さっぱり解らん!」
 俺は瑠璃というコに、この舌っ足らずな手紙を見せた。

 一通り目を通した後…大きな溜息を一つ。流石に呆れているようだ。
「まあ、親父の知り合いなのは解ったよ。上がって、お茶でもいれるから」
「はい」
 俺は、重そうな荷物を持ってあげた。
 さて、改めて話を聞いてみると、名を
「岩戸 瑠璃といいます。中三になります」
 なんでも、親父の研究仲間の娘さんだということだ。世間から見れば、間違いなく高名な考古学者であるらしい親父も、男としては甚だ節操無い事極まりなく、大学の教え子だった母との間にできたのが俺っていうわけだ。海外を飛び回って家を留守にする事が多いのに、俺はほったらかし。しかも母親とは既に戸籍上他人。顔さえ覚えちゃいないから、そうなったのは物心つく前だろう。だから小学生まではじいちゃんの田舎で育てられた。大方、同じ様な境遇の考古学者の子供同志、一緒に住まわせてしまえば面倒がかからないで楽だとでも思ったんだろう。親達のエゴで、瑠璃さんは転校する羽目になったのだ、友人のいる土地を離れて。全く、しゃーねえな。
「なあ、ほんとにここに住むのか?」
「他に、行くところがありません。やっぱり、迷惑ですか?」
「いや、そうじゃなくて。俺と二人暮しになるわけだろ?色々と…戸惑うこともあるかも知れない。君は、それでもいいの?」
「良くても良くなくても、私にはもう帰る所が無いんです。お父さんは、死にました。お母さんは、最初からいません」 もう、俺は何も言えなかった。
「お願いです。掃除でも洗濯でもなんでもします」
 見る見るうちに、大きな瞳が潤んでくる。
「もう、ひとりぼっちはイヤなんです。だから、ここに置いてください。お願いします!」
 ここまで言われて、人間ならばどうして彼女を邪険に扱うことができようか。
「お、おい!まいったな、泣かないで」
 瑠璃さんは、ひっくひっくとしゃくりあげていた。俺は、彼女が話をできる状態に戻るまで待ってあげた。
「ごめんなさい、これじゃあ脅迫ですね」
 いいんだけど、さ。
「解ったよ、いいよ。お互い、助け合っていこう。これからよろしくな」
 瑠璃さんは、涙で濡れた顔を上げた。こんな可愛い子に、もう二度と悲しい顔をさせたくない。
「本当ですか?」
「ああ、」
「ありがとうございます!!ありがとうございます!!」
 ぶんぶんっ!!と頭突きをするかの如く、瑠璃さんは激しく頭を下げる。
「あわわ、礼はいいから。それより、これから暮していくに当たって、色いろと決めておかないとな」
「はい!!」
 果して、瑠璃さんには掃除と洗濯を任せることにした。彼女にも学校があるんだから、自分の分だけやればいいって言ったのに…彼女ときたら、この家に置いてもらうんだから、と首を頑として縦にふらなかった。お父さんのを洗ってましたから、という言葉で、俺は観念した。汚れモノを見たり触って欲しくないという俺の心理が、彼女にはバレバレだったらしい。中年と若者の差っていうものがあるんだけどな。それに、瑠璃さんを利用してるような気もするし、ま、いいか。
 食事番も私がって言ってくれたんだけど、俺は料理好きだから、交代制にした。いろいろな仕事の当番を決めた後、俺達はしばらくの間身の上話をした。
 瑠璃さんの父親である岩戸光央(みつお)教授は、親父の若いときからの相棒であったらしい。しかし、研究で南米に赴いた時、歯車は狂った。ケチな追いはぎに撃たれ、亡くなる。ちょっとしたボディランゲージのミスだったそうだ。親父は命からがら脱出し、瑠璃さんに事を伝える。それは、親父にも瑠璃さんにも辛かったであろうことは想像に堅くない。親父には相棒の死という現実の確認。瑠璃さんにはたった一人の父親の死。そして、親父は瑠璃さんを自分の娘として迎え、俺に託す。俺は、浅はかな…まとめて面倒を見たほうが都合がいいどうたらこうたらという、自分の朝はかな想像を恥じた。
 なるべく彼女の役に立ってあげたい。瑠璃さんの話を聞いている内に、自然とそう思うようになっていた。知り合ってまだ数時間しか経っていないのに、お互いの性格もまだ理解していないというのに、だ。しかし、彼女に感じる…今にも壊れてしまいそうな儚げない雰囲気が、俺の決意を確かなものにしていった。
 家では、喋る相手もいなかったんだろう、瑠璃さんはやや無口だ。こちらが話題を振らなければ、自分からは滅多に言葉を発しない。さっきの身の上話だって、ようやくそこまで聞き出したんだ。無口以外にも、ぜんっぜん笑わないで、寂しげな貌(かお)ばかりだ。
((守ってあげたい。))
 なるべく彼女の役に立ってあげたい。瑠璃さんの話を聞いている内に、自然とそう思うようになっていた。知り合ってまだ数時間しか経っていないのに、お互いの性格もまだ理解していないというのに、だ。しかし、彼女に感じる…目に見えるのに触れられない幻のような…儚げな雰囲気が、俺の決意を確かなものにしていった。
「そう言えば、中学は何処に通うの?私立?」
「いえ、ここの近所の東和吉中学校っていう所らしいです」
 そこは、俺の中学時代の母校だ。偏差値が低く、学校が荒れているっていう、根も葉もない噂が蔓延る公立校で、そのくだらない噂を真に受け、わざわざ他の中学に入学させる例もあるらしい。
「らしいです言う事は、場所も知らないんだろう?」
「はい」
「じゃあ、明日にでも場所案内するよ。俺の通ってた中学校だ」
「すいません、色いろと」
「気にすんなよ、そんな事」
 瑠璃さんは、非常に礼儀正しい。言葉づかいもいいから、初対面でも好感が持てる。今どきのコには珍しいタイプだろう。こうして色々と会話を交わしていると、日本人の模範として、世界中どこに出してもおかしくないと思われる、気品と知性を窺い知ることができる。
「あー、もう七時か。腹減ったなあ、今日は外に飯を食いにいこう。当番は明日からでいいよね?」
「はい!」


「あの・・・」
「ん?」
 玄関を出るときに、
「何て、呼んだらいいんですか?」
 瑠璃さんは、俺をおずおずと見上げて、躊躇いがちに聞いてきた。
「え、べつに瑠璃さんが好きなふうでいい」
「そうですか、あの・・・」
 なんか、顔を赤らめてもじもじしてる。そう言えば、瑠璃さんの人間らしい(泣き顔以外の)表情、初めて見たぞ。とってもラヴリーだぜ。
「その・・・。お、お兄ちゃんって、呼んでも、いいですか?」
「えっ?」
「その、私、昔から一人で寂しくって、ずーーっと優しくて頼りになるお兄ちゃんがいてくれたらいいなーーって・・・。だから、(ゴニョゴニョ)」
 最後の方は聞き取れなかったが、俺を頼りにしてくれているのは間違いなさそうだ。それに、歳相応の表情をしてくれたのも嬉しかった。
「いいよ」
「よかった・・・」
 瑠璃さんは、ほっと胸をなでおろした。そんなに勇気の要ることだったのだろうか。
「じゃあ俺も、瑠璃、って呼んでいい?」
「はい!もちろんです、私のお兄ちゃんですから」
「もひとつ。兄妹なんだから、俺の前で敬語は無しにしようぜ」
「はい、あ、うん」
「よろしい。さ、いこうか」
 そんな訳で、俺達の同居一日目は終ったのであった。



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