サトシアキラの湾岸爆走日記(自転車でね♪)改

一言:ここは俺が引き受けるから、早くクリスマスを……!

R・U・R・I・第2話 Hill Climb

2005-12-30 11:11:55 | 俺小説
こんこん、こんこん。
 俺の部屋のドアをノックしてんの、誰だ?親父が帰ってきたのか?それにしちゃあ音が小さいな。親父のは
ドンドン!!ドンドン!!
 だもんな。あれは、一日の活力が削がれるような気がするのでやめてもらいたいのだが。今日のはなんだか穏やかな気分にしてくれる。こんこん。
「あの、おにいちゃん?」
 まだ、頭が起きてない。今確か、可憐な、男やもめには似つかわしくない声が。
「おにいちゃん、朝御飯、できてるんだけど」
 目が覚めた。そうだ瑠璃さん、じゃなかった瑠璃だ。食事番は、今日から交代でやるんだ。時計を見ると、短針は7を、長針は12を回った所だった。うげげ、休み中なのに早い。岩戸教授は家にほとんどいなかったろうから、瑠璃一人できちんと時間どうりに起床してたんだろう。俺はと言うと、まあ、普通は遅刻王になるよな。
「おにいちゃん?入るよ」
 瑠璃は、若い男の「朝の事情」を一切考慮に入れない発言をしなすった。
「わわわ、い、今はワイルドリーなんだよ、棒がっ!!」
「なあに?どういうこと?」
 瑠璃は無慈悲にも、部屋に踏み込んできた。うわっ!お約束の展開じゃないか!ちゃんと返事をしなかった俺も悪いが。きっと、めざとくテントを見つけてきゃーーー!!!なんて言うぞ。これが中年と若者の差だ。
「おにいちゃん!いつまで寝てるの?御飯冷めちゃうよ。早く下りてきてね」

 瑠璃はそれだけ言うと、部屋を出ていった。
 あり?ノーリアクションだ。でもこれじゃあ、まるで目撃されたかったみたいじゃないか、もう。
 着替えて台所へ行くと、テーブルの上には


 世界の朝食:日本


 と図鑑に載りそうな(メニュー:麦入り御飯/大根の葉の味噌汁/焼き鮭/焼き海苔/ホウレン草のおひたし/)5品が並んでいた。オウ、イッツビューリフォー!久しく見てないなあ、こういうの。前の彼女、マユミの時以来だな。あんときゃ、魚は焦げてるわ味噌汁は薄いわで、出来もしないのに、いかにも頑張って作った私の料理を食べて!私を誉めて!って目が物言ってたからな。何故そんな女とつき合ってたかというと、ただなんとなくとしか言いようがない。汚点だった。
「どうしたの?眺めてばっかりで食べないの?あ、顔洗ってきた?」
「ああ。じゃ、いただきます」
 俺はおもむろに味噌汁をすすった。大根の葉とは、渋い具のチョイスだ。味もグッド。俺の好みの濃さが分かっているかのようだ。次、焼き鮭。あれ?冷蔵庫に魚なんて入ってたかな?それは良しとして、焼き具合いも文句ナシ。その他の品も、文句なし。同じ自炊暮しをしていても、俺はこんなにパーフェクトな朝飯を食った事がない。もっとも、いつも朝はパン食だったけど。遅刻王だからな、俺は。ゆっくり調理してる時間も惜しいんだ。ほとんど毎朝、「食パンくわえて遅刻遅刻」を実践してたし。
 しばらくの間、黙々と朝食を採っている俺を、瑠璃は心配そうに見ていた。
「どうした?何か変なところでもあるのか?」
「ううん、そうじゃなくて、その、美味しい?」
 瑠璃は、自信無さげに尋ねる。
「ああ。かなりのもんだぜ。俺も料理には自信があるが、師匠って呼んでいいか?」
「大げさ、だと思う」
 もちろん冗談だけど。
「でも私、正直いって、そう言ってもらえるまで不安だったの。味が」
「え?こんなに美味いのに」
「お父さんは、たまに帰ってきても、次の朝早くには朝御飯食べずに出ていっちゃうし、かといって他に味を見てもらう人もいないし・・・。」
 そうか、結局食べるのは自分だけなんだ、美味いかどうか言ってくれる人もいない訳だ。ってことは、手料理を食べさせた男もいないって意味でもある。よしよし、悪い虫がついていなくて、お兄ちゃんは安心したぞ…って、何言ってるんだ俺は。
「うん、美味い、ウマイ」
「おにいちゃん、褒め過ぎ。どうせなら、もっと難しい料理の時に褒めて欲しいな」
「いや、大したもんだ。すぐにでもいいヨメさんになれるぜ」
 俺は、瑠璃が照れるのを承知でわざと言ってみた。すると、案の定・・・。
「や、やだ。そ、そんなこと、ないと思います」
 と、大層頬を赤くして、しどろもどろになりながら、自らも朝飯を食った。あはは、純情そうなコに効くと思ったんだ。ごめんな、からかっちゃって。
 しばらくして、俺は昨日の約束どうり、中学校までの通学路を案内することにした。俺の家から東和吉中学までは、徒歩15分程度だ。川べりの遊歩道をしばらく北に歩き、小高い岡が北東に見えてきたら、そこが東和吉中のある東和吉丘陵だ。後は、そこに向かって道ぞいに歩くだけだ。だけど、岡を上る事になる訳だから、夏なんかは結構しんどい。
「上までいってみるかい?」
 丘陵のふもとまで来てから聞いてみる。
「うん、そうする。実際に校門を見てみないと不安だから」
 俺達は、散歩がてらにゆっくりと、回りの景色を眺めながら、坂道を上っていった。この東和吉丘陵は、途中まで高級住宅街になっている。ある程度まで行くと、住宅街が途切れ、急に林が広がっていく。その林はもう、学校の敷地内だ。考えてみれば、ここまで来るのも、卒業以来だな。そりゃそうだ、用もないのにわざわざこんな山の上まで来る事ぁないもんな。校門まで来ると、鮮やかなピンクの桜が、八分で咲いていた。今年は開花が都合良く、どうやら公立校の入学式や始業式にピークを迎えそうだ。グラウンドからは、休み中だというのに、野球部らしき元気な声が、体育館からはバスケ部のボールの音が響いていた。
「瑠璃は前の学校で部活やってたのか?」
「うん、美術部」
 まあ、運動が得意な方には見えないよな。
「へえ、じゃあ、ここでも?」
「ううん、家がいろいろと忙しくなりそうだから。」
「いいんだぜ、そんなこと」
「いいの。もともと、好きで入部したわけじゃないし。」
 そう言われちゃあ、何も言えん。
「それにしても、本当に親父は転入の手続きしてあるのか?あの親父の事だから心配だぜ」
「大丈夫。おじさまが必要な書類と手続きを取って来てくれたから」
「そっか。俺、一度学校に挨拶に行った方がいいのかなあ?」
「どうして?」
「ほら、一応保護者は俺の親父だろ?それなのに、実際には俺と住んでる事になる訳だから、あらぬ噂が立つ前に、予め現場の保護者として挨拶した方がいいかなあ、と」
「そうか、そうかもね。じゃあおにいちゃんも学校があるから、始業式の前の日、入学式の日に二人で挨拶に行こうよ」
「よし。あ、制服どうすんだ?間に合うのか?」
「間に合うも何も、まだ採寸すらしてないの。前の制服を着ていくしかないみたい」
「そっか、みんなの視線が天然記念物扱いになるだろうけど、仕方ないか。まだ注文もしてないんだろ?じゃ、帰りに寄っていくか」
「うんっ!」
 そして俺達は、岡を下りた後、付近の学校の制服を扱っている店で瑠璃の寸法をとり、夕食の材料を買って家に帰った。瑠璃の制服、似合うだろうなあ。


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