Sally's BLOG

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スリルに酔い、クルーニーに酔う(「フィクサー」)

2008-04-21 02:39:02 | 映画
裏切り裏切られ、騙し騙され、スリルに酔う、確かにそんな映画。
何が違うのか?
それは、登場人物内面の細やかな描かれ方。

ストーリーは、農薬薬害訴訟被告である製薬会社の弁護をしていた担当弁護士が、その会社の罪の内実を知り、原告側の為にその罪を告発しようとした矢先、変死を遂げる。そして、その弁護士と同じ法律事務所から、彼のしでかした、クライアントである製薬会社への背信行為を揉み消す為に送り込まれた「フィクサー(揉消し屋)」が、同僚でもあったその弁護士の変死原因を探るうち、事件の真相にたどり着き、そして・・・
と、「エリンブロコヴィッチ」の逆バージョン(被告側視点)と言えなくもないわけだが、ベースに描かれているのは「人間の葛藤」である。

キーパーソンとなるのは、製薬会社法務担当者カレン(ティルダ・スウィントン)、その製薬会社の弁護人アーサー(トム・ウィルキンソン)、そのアーサーの同僚であり、「揉消し屋(フィクサー)」として法律事務所の影の部分で動くマイケル(ジョージ・クルーニー)の3人。
被告である製薬会社の罪を知りながらも、6年にも及ぶ年月をその弁護人として費やし、訴訟を引き延ばし、原告を苦しめてきたことで、良心の呵責により精神のバランスを崩したアーサー。
同じく自分たちが犯した罪を知りながら、訴訟を有利に運ぶ為には、たとえ明きらかな犯罪を犯してでも社を守らねばならないと言う、任務の重圧に押し潰されんばかりのカレン。
フィクサーと言う役割に甘んじながら、その自分のやってきた仕事(生き方)に疑問を抱きつつも、這い出せなかったマイケル。
特に、トム・ウィルキンソン演ずるアーサーの鬼気迫る狂気ぶりは、半日たった今も思い出すだけで心拍数アップ間違いなしの名演技。
「彼なくして、この映画は成立しなかった」と言っても過言ではないはず。
この三者三様の「葛藤」を息苦しいまでに描いた前半部分、そしてブツ切れだった一つ一つのファクターが一気に繋がり、大きくうねりながらストーリーが流れだす後半部分。
アーサーの独白から唐突に始まり、後半へ突入するきっかけとなる事件が映し出された後、ストーリーはその4日前に遡るという、のっけから観客の意識を「引っ掴む」という構成。
そして観る者の心音に同期するような音楽の使い方。
まさに息つく暇もない、スリリングなエンターテインメント。
そう、確かにエンターテインメントだった、しかし、ソダーバーグ+クルーニーの「シリアナ」コンビだからか、脚本のトニー・ギルロイの力量か、しっかり「社会派」風味に仕上がってるあたりが、お見事!

あ、もう一つお見事!なことが・・・
それは邦題タイトル「フィクサー」(原題は主人公マイケルの名前「Michael Clayton」)。
コレは結末暴露になるので、文字反転します。
おそらく原題「Michael Clayton」だと、マイケル・クライトン(ジュラシックパークの原作者)とイメージが被る、ということもあったと思われるが、それとは別にマイケルの「その後」の暗喩でもあるだろう。
自分の良心であるとか、プライドであるとか、諸々を諦めて、「フィクサー=揉消し屋」として過ごした自分に後ろめたさを感じていた彼が、本来の自分の正義をもって悪を告発する「ディスクローザー」とでも言うべき役割を果たし、静かに立ち去る・・・
ある意味、「自分はこれでいいのか?」という葛藤を抱えるすべての人間へのメッセージなのかもしれない。

まだ、DVD出てないのでサントラジャケ写でご勘弁を↓

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
くるうにぃ (わたる)
2008-04-22 09:00:59
くるうにぃは演技力があるというよりむしろ 本人の存在意義というか そんな俳優になっていますね。いやむしろ くるぅにぃの存在意義ではなく 彼のかもしだす雰囲気の、意義。

いい映画みたいだ~
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わたるサマ (Sally)
2008-04-22 12:02:28
オーシャンズのDVDでクルーニーが、「この映画では、思い切り軽快な洒落男を演じて、作る映画はもっと社会的な問題を扱いたい」みたいな事言っちょりました。
出来上がりはどうあれ、そういう気合を持ったオトコが、真面目に取組んだ映画なんだろうなー、って思うんですヨ。
2時間ミッチリあるから、ベビー連れでは見に行けないかなー?
薄い脳みそで一生懸命見たから、映画終わる頃には気持ち悪くなってましたよ、ワタシ。
けど、クルーニー見に行ったのに、トムウィルキンソンにノックアウトされたんですけどね(汗)
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何をやっても (シウ)
2008-04-23 23:30:06
大好きなジョジクル様。
人気があるのに
つねにチャレンジしていく姿勢が素敵ですよね。
最初にあのシーンあり、
そして時間をさかのぼらせて、
長い裁判に対して、
短い期間の出来事として凝縮させている感じが
本当に伝わってきました。
皆にとって思いもよらない結末なんですよね。
ジョジクルさんの社会派作品にしては
わりと作りがストレートだったような気がします。
ちょっと言いたい事もあるけど
おおむね面白かったですね!
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シウさま (Sally)
2008-04-25 17:20:21
この映画って、突き抜けた軽さは無いけど、わかりやすく出来てて、見たあとの爽快感があるエンタでしたよね?
アル中やら、ギャンブル中毒やら、借金やら、躁うつ病やら、やいこしいディテールで、途中眠くなるやからが居るらしく、隣のオジサマはグーグーおやすみでした(笑)
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