硯水亭歳時記

千年前の日本 千年後の日本 つなぐのはあなた

      『脱原発』というシングルイシューの罠

2014年01月30日 | 時事問題

フィンランドのオルキルオトにある核ゴミ最終処分場 オンカロ内部図

 

 

      『脱原発』というシングルイシューの罠

 

 

 小泉元総理がフィンランドのオンカロ核処分場を見て来たと言って大はしゃぎ。まるで、スッカラカンの菅元首相と同類で致命的に幼稚である。「再稼働すると言ったって、最終処分場が見つからないんでしょ。だったら直ぐゼロにしたほうがいい」などと声高に言い、細川元総理を担いで、シングルイシューで都知事選挙を戦っている。またか、あの郵政民営化選挙と同じかと、私は冷やか見聞きしているが。そもそも、高レベル放射性廃棄物などの最終処分事業を進めるNUMO(原子力発電環境整備機構)が、2000年6月に出来、翌年小泉氏は総理になったのだった。だが小泉氏の首相在任期間5年半もの間、処分場の設置について何一つ試行すらして来なかったではないか。今頃になって、何をか況やである。私だって、化石燃料以外にいい方法がないものか、この福島原発事故以来考えに考えたものである。津波や地震は数年で、乗り越えて行けるような気がするが、原子力の事故は、短期間では全く見通せないからであり、人が人でコントロール出来ないものは経済的にも倫理的にも手を染めるべきではないと思ったからである。だが待てよ、もしかして私も感情論に陥っていないかと冷静に考え、様々な事象や学問や、現在政府が進めている政策など、あらゆるものを見たり読んだりして、あれこれと熟考する癖が、何時の間にかついてしまったようだ。この小論はその検証過程であり、最終結論ではないが、我が国家のチッチャイ元宰相に反発し、少しでも勉強し続けたい意思から書き起こしたのである。

 先ず直ちにゼロには出来るかというと、どうもそうではないようだ。スイスやドイツがやろうとしているゼロ戦略は原発の半分を稼働して発電しつつ止めようとしている。再びオイルショックが来るとも限らない。そんな危険な事態を避けようという試みで、原子炉を動かしながら、原子力を含む幾つかのオプションを持っていなければならないと言うことだろう。世界標準では、原発を起動し、15年かけてやめる方策が一般的で、即廃止というのはあり得ないオプションであるということである。例え即刻廃止しても稼働しながら冷却し、長い時間をかけて廃止しなければならないからだ。またウクライナではチェルノブイリ事故以降、原発を一切止めた結果、冬の寒さで多くの死者を出した。経済もボロボロになり、仕方なくチェルノブイリ3号機を含め、15機すべてを再稼働し、エネルギーの約半分を賄っている。ウクライナ方式に学ぶのか、スイス・ドイツ方式に学ぶのか、思慮の要るところだろう。更に死亡リスクを見ると、テラワット/h当たりの死亡数は原子力においては極端に少ないのである。(日本では過去50年稼働では事故による死者はゼロ)。石油が40人、石炭がそれより若干低く、原子力は1人以下である。化石燃料のせいで、CO2が極端に悪くなり、地球環境を悪化させている。アフリカまで雪が降り、現在アメリカ南部が豪雪に見舞われている。インドのサイクロンも、先日起きたフィリピンの大型台風も、今後益々常態化して行くだろう。日本もここ数年で、気象異常化が起きている。海水の温度が2度上がると、台風の猛威は2倍になるのが通説であり、北海道の海も、近年磯焼けが酷いと言われている。こんなに環境が悪化していても、火力発電で化石燃料を使い続けるのだろうか。中国から飛来するPM2,5だって、劣悪な品質の化石燃料である石炭を、企業も一般家庭も使い続けているからである。9,11以後、本来は自動車事故が圧倒的に多いにも関わらず、飛行機に搭乗するのを避けているのと同じではないか。経済的なことはここでは言いたくないが、LPGの輸入コストだけで、昨年、日本は膨大な輸入赤字を出している。太陽光発電だって、固定価格買取制度の下で、驚くほどすっ高いのだから、利用者には利益の恩恵が殆どないと言ってもいい。利するのは、メガソーラー業者やその関連業者だけではないのか。全く理に適っていないことこの上ない。こういうことでは、ずっと化石燃料を使い続けて行くほうがよっぽど無理があると言わざるを得ないではなかろうか。

 即時原発阻止問題は代替案も示すことがなく、技術的にも即時止めることが出来ない技術的現実も見ていないようだ。如何にも大衆受けを狙った無いもの強請りをしてるとしか思えないし幼稚さである。菅元首相は原発事故を対処不可能な事象と言った。だが事故の最中に、「オレは東京工業大学出身で、原発は専門家だ」と嘯いていたのが、何故Speediを即刻公表しなかったのか理解に苦しむ。こうした事故こそ国内はおろか国際的にもすべて公表し、世界中に知らせるのが当然の責務に相違ない。あろうことか、現場の亡き吉田所長が死にもの狂いで頑張っていた貴重なあの時間に、わざわざ空白の数時間を費やさせ、事故の視察を強行したのが、どうしても理解出来ない。しかもその時間帯の記録はすべて破棄され、貴重な検証資料する術がないではないか。そう考えると、まさにあの水素爆発こそ菅直人のせいだったと、私は今でも信じている。要するに、事後に至っては如何に対処可能なことを考えるか、それが専門家の責務であり、政府の責任であろう。イラ菅で、激情に走り、無関係の方まで原発事故の委員に数多く招聘し、一体何が出来たのだろう。小泉さんも無責任である。統治者時代、全く何もしないで、閑居老人になってから、突然脱原発を言い出した。それも単純で、フィンランドの最終処分場を見てきたからという理由で、日本には最終処分場がない以上、稼働させるべきではないと主張する。この間、町屋で行われた細川陣営の街頭演説会に行って、演説を聞いて私は確信した。細川さんは高齢者福祉や児童保育所問題についても演説していたが、その後登壇した小泉さんは脱原発一本槍で、例の調子で獅子奮迅の激烈演説をしていた。阿呆かいなと聞いて呆れた。先ず第一この人には原子力の実態と正体を殆ど知らないという決定的な幼稚さが分かったのである。「核のゴミの地下深層処分が出来ないから原発は駄目だ」という非科学的情念ばっかりで、呆れてモノが言えなかった。日本の放射性廃棄物はフランスで処理され、青森県六ヶ所村で受け入れ、冷却している現状だが、廃棄物をガラスに溶かし込んで、その固化体をステンレス容器に入れ、密封してから並べられている。40年間冷却後埋設される計画である。放射性物質には半減期があり、40年経てば、放射線も発熱量も1000分1程度になり、安全に埋められる可能性をほぼ否定しない。原発を直ぐにゼロにしないと、高レベル放射性廃棄物がトイレに詰まるが如く、ただただ危ういとされる科学的根拠が極めて薄いように思われてならない。原発稼働している世界各国の同等の課題なのである。

 「放射性廃棄物は10万年の保管が必要だ」と、声高に小泉さんは言うけれど、これも違うように考えられる。ガラス固化体にすれば、10万年保管出来る根拠にしているようだが、日本には既に10万年保管する技術力があることを知らないのではないか。つまり3000年もすれば、放射能度の強度は100万分の1程度、つまり人間が手で握れる鉱石の10倍程度に落ちることなどを殆ど知らない結果ではなかろうか。半減期を知らないまま不安を煽っているとしか考えられないのだ。福島第一原発だって、動かしながらでないと廃炉に出来ない現実を直視していないから、そんな浅知恵で、アレコレ口角泡を飛ばしても、まず説得力がないわけである。

 イギリスでは核廃棄物について、社会学者も参画し、長大な超時空の議論になっているが、これが本来持つべき姿ではなかろうか。何をするにも、人間の後には必ずゴミが出る。まして放射性廃棄物となったら、聊か厄介で、後年の研究者や廃棄物処理者に対して、実証的に継承して行かなければならない。社会心理や世代間倫理が必要になってくるからである。そこで原発発祥国のイギリスでは散々苦労をした末に、コントロールされたリスク管理がどうやら出来つつあるようである。イギリスでもフィンランドでも確かに最終処分場を作ろうとしているが、地震大国の日本では無理だというのは早計であろうし無礼でもあろう。10万年も貯蔵出来ないなどという恐怖心を煽ることこそが実に困ったものである。産業界で生み出される核より毒性の強いゴミは無視されているが、そういう事実にも着目しなければならないはずである。ネプツニウムアメリシウムなどのことだが、放射性廃棄物より遥かに半減期が長いものである。そんなゴミも、プルトニウムと同時に燃やせば燃料となり得るが、危険物として廃棄されれば、直ぐに恐怖のゴミになるだろう。

 フィンランドのオンカロは前処理の研究施設の頭文字をとった名称で、深層処分場の意味ではない。従ってプルトニウムも廃棄物の対象になっているが、果たしてそこまででいいのだろうか。放射性物質の最後に残るプルトニウムを、モック処理し、もう一度燃料にすれば、核より重い毒性の強いゴミ処理も同時に処理することが可能である。ハイそこまでよとばかり、放射性物質に対する研究者すら育てる環境がなくなったら、それこそ無責任の極みであろう。10万年続くか、100万年続くかは別にして、核に対して真摯な研究者を産んで行く責任があると思う。考えてください。オイルショックの時、省エネと新エネルギー開発を進めるために、サンシャイン計画とかムーンライト計画とかあったけれど、そして懸賞金までかけられたが、それに対する知恵者は全く出て来なかった。反核運動の方々にも責任があると思えてならないわけである。

 『脱原発』とは聞こえがいいが、少なくとも放射性物質や核処理問題など、大いに研究し、継続的な議論の伯仲が本当である。細川氏が脱原発と言うのなら、都内のあるパチンコ屋はすべて撤廃とか、地下鉄や新幹線を半減するとか、もっと具体的なことを言うべきことである。ただ言えばいいのではない。まして東京のGDPはメキシコや韓国の国家GDPに匹敵し、巨大な責任があるのである。東京オリンピック・パラリンピック問題や、首都圏直下型地震対策や防災・減災など、中小企業のバックアップや、景気浮揚策や、子育て支援や、最も遅れている駅近の保育所の確保や、急速に始まった高齢化など、打つべき対策は多岐にわたる。他県に原発をやらせて、都府に、小型にして安全にした放射性廃棄物を小型化して、東京で処理するぐらいの研究と覚悟が必要である。

 私たちの仲間は、GREAT FOREST WALL PROJECT つまりー瓦礫を生かすー森の長城プロジェクトとして、震災当初から活動してきたが、飽く迄も宮脇昭教授に真摯に向き合うためだけであった。それが一年以上してから、各界の偉い人が入って来て現在に至ってはいるが、私たちのグループもどうかと言われ、仕方なく顧問の一人に名を連ねているものの、ここまでしなければならないのかと、実は非常に不満なのである。無論各自治体などとの交渉もあり、それ相応の対応が必要であるからだろう。だがここの理事長が都知事選に絡むなど思ってもいなかった。湯河原で発信し続ければいいのだが、細川氏が拒否し続けたお陰で、公開討論会や共同記者会見は全く行われなくなり、極めて異常な選挙である。東京佐川急便から一億円借り入れ問題が発覚したのを機に、僅か九ヶ月で政権を投げ出した細川氏がまたもや説明責任が充分ではなく、殿!ご乱心の上、またもや逃げたと思われても仕方がないわけである。自慢ではないが、外様大名より、幕閣旗本のほうが遥かに上位なのである。殿などと呼ばれて可笑しいのではないか。バカモ~~~ン!!小泉劇場によれば(定年73歳なはず)、殿76歳になってからのヨイショのオンブなど、殿ぉ~~!情けなや。小泉氏だって、なんで自分で出なかったのか!73歳以上の自民党議員を、あの時は平気でぶった切ったではないか。無責任もいいところである。だが冷静な都民が多いことも承知して欲しいものである。

 無論私は原発容認派でもなく、脱原発派でもない。結論を出す状態には、勉強することが多く、未だ結論に至っていないことだけを明記したかっただけである。だってこの問題は或る意味では国際問題でもあるからだ。私もそうだが、誰もが不勉強もいいところである。東京から国政を変えるなどとほざいて、東京都知事選挙を愚弄しているのではないかと危惧しているものである。シングル・イシュー・ポリティック(一つのフレーズだけで行う政治運動)での選挙は、政策より、寧ろ政局が中心になっているということである。教え子・安倍晋三総理に対し、脱原発を迫るのなら、小泉氏の方法は国政レベルですべきであり、これでは日本の総人口の二割を持つ都民に対し、甚だ無礼であろう。そこが今回の選挙の、耳障りのいい罠とも言えるわけで、恐らく他の泡沫候補と殆ど変りないように思えてならない。無念!!

 

(奇しくも、この記事をアップした直後、日テレで候補者四人の、初めての討論会があった。

やっぱり原発については皆不勉強であり、そこまで原発ゼロと言うのなら、戦前に戻すべきだとか、

何故はっきり言わないのだろうか。日本だけ脱原発であっても、周辺各国は寧ろ原発を推進し、

他国の事故も日本は全く無縁ではいられないことだからだ。U氏は脱原発、H氏も脱原発、

T氏は原発容認、M氏はバランス重視。東京が最大の需要地であったのに、無責任。

政治とカネの問題ではH氏が口火を切ったが、全く理解不能。10年間で返したとか別な記事が。

U氏は都知事になった暁には百条委員会を立ち上げ、猪瀬氏を徹底的にやり玉にあげるとか。

現在進行中だから、予見を交えずに、検察当局に任せるべきと、T氏とM氏。

東京に東北も巻き込んで五輪主催(一都市主催が原則なのに)を主張する不埒な案も、

帯に短し襷に長しである。大いに不満である。今日ほど政治のパワーが必要なのに!

ただいいことが一つだけあった。四人の討論会で、誰が適格者なのか、息遣いや品位などで、

少しは判断出来そうな感じがした。それが大切なのであろう。今後も各局でやって欲しい。

但し今回のこの記事では、トノだけを論調したものではないことを断っておきたい。

脱原発でも、或る有名弁護士候補には決定的な未熟さがあり、如何にも左翼丸出し!

そもそも弁護士の資質と政治家の資質は全く違うものだと断言しておきたいのである。

民主党政権時代の枝野幸男を見れば、一目瞭然であろう)

 


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