とはずがたり

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新型コロナウイルスワクチンBNT162b2の安全性、有効性

2020-12-12 23:14:52 | 新型コロナウイルス(治療)
Pfeizer社が開発中のSERS-CoV-2に対するmRNAワクチンBNT162b2の安全性、有効性についての結果が発表されました。すでにニュースなどで皆さんご存知のことと思いますが、95%という驚くほど高い有効性です。New England Journal of Medicine誌に論文が発表されましたので、内容を詳細に見てみました。
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対象となったのは確定したCOVID-19感染の既往がない被検者36,523人、これに既往のある人を加えた40,137人です。投与はBNT162b2 30 µgあるいはプラセボを21日あけて2回筋注です。エンドポイントとしてはfirst primaryがA群、second primary end pointがB群における2回目投与後7日以降のCOVID-19発症です。またmajor secondary end pointは重症COVID-19発症に対する有効性です。ここでCOVID-19発症の定義はFDAのものを用いており、COVID-19の発症とは発熱、咳嗽、息切れなどの臨床症状のうち1つ以上を示し、ウイルス陽性というものです。有害事象としては2回目投与後7日までの局所、全身反応、および6カ月までの投与と関連・非関連の有害事象を検討しています。
152の医療機関から16歳以上の43,548人がランダム化(BNT162b2群21,720人、プラセボ群21,728人)されました。データのcut-offを行った10月9日までに2カ月以上の安全性データがとれたのは37,706人でした。このうち82.9%が白人で9.2%が黒人あるいはアフリカ系アメリカ人、アジア系は4.2%、Hispanic or Latinxが27.9%という内訳です。16-55歳が57.7%、55歳超が42.3%(中央値52歳)、BMI 30以上の肥満者が34.8%で、21%に何らかの併存症がありました。投与後局所反応の詳細なデータは8,183名の参加者で取られ、疼痛を訴えた参加者は多かったものの、7日以内にsevere painを訴えたのは1%未満でした。全身の投与後反応としては倦怠感や頭痛が多く、ワクチン群で頻度が高いという結果でした(ワクチン群でそれぞれ59%, 52%、プラセボ群で23%, 24%)。Severeな反応はワクチン投与群で倦怠感3.8%、頭痛2.0%、その他は2%未満でした。体温38度以上の熱発は若年ワクチン群で16%、高齢ワクチン群で11%に見られました。38.9度から40度の熱発が初回投与後7日以内にワクチン群の0.2%、プラセボ群の0.2%、2回目投与ではそれぞれ0.8%, 0.1%に見られました。有害事象は27% vs 12%、このうち投与に関連したものは21% vs 5%でした。ワクチン投与群の64例(0.3%)、プラセボ投与群の6例(<0.1%)にリンパ節腫脹が見られました。重篤な有害事象はほとんどなく、試験中断が必要だったケースもごくわずかでした。
有効性についてはご存知の通りで、確定した感染の既往のない36,523人のうち、2回目投与の7日目以降にCOVID-19を発症したものはワクチン群の8人、プラセボ群の162人で有効性は95%(95% CI, 90.3 to 97.6)の有効性、これに感染既往ありに人を含めると、ワクチン群で9人、プラセボ群で169人にCOVID-19発症と94.6%(95% CI, 89.9 to 97.3)の有効性を示しました。年齢、性別、人種、民族、肥満の有無、併存症で層別化しても同程度の有効性が見られました。1回目と2回目の投与間でワクチン群の39例、プラセボ群の82例にCOVID-19感染あり、ワクチンの有効性は52% (95% CI, 29.5 to 68.4)でした。このうち重症なCOVID-19を発症したのはワクチン群1例、プラセボ群9例でした。
ということで投与時反応はあるものの、うわさ通り有効性はかなり高そうです。今後有効性がどのくらい維持されるかのデータが示されるものと思います。
Polack et al., Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine.  N Engl J Med. 2020 Dec 10. doi: 10.1056/NEJMoa2034577.