とはずがたり

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TACANは機械刺激に対する痛み感覚に関与するイオンチャネルである

2020-03-13 13:00:40 | 疼痛
機械的刺激の感知機構は様々な生理機能に関与します。触覚や痛覚はもちろん、聴覚にも機械的刺激感知が重要です。この感知はマイクロからミリ秒で生じる速やかな過程であるため、何らかのイオンチャネル(mechanosensitive ion channel, MSC)が関与すると考えられています。実際に近年触覚、聴覚、自己受容感覚(proprioception)に関与するMSCが同定されています。本論文はこれまで明らかではなかった、痛覚のMSCを同定したという内容です。
著者らは平滑筋の機械刺激感知に関与する膜タンパクの候補リストから、機能の不明な膜貫通タンパクとしてTACAN(TMEM120A)に着目しました。TACANは6回膜貫通型のタンパクで、様々な臓器に発現しているとともに、後根神経節や非ペプチド性侵害受容器にも発現していることがわかりました。CHO細胞における発現誘導やin vitro再構成系など様々な状況証拠からTACANが侵害受容器のMSCである可能性が示唆されました。そこでタモキシフェン誘導性に非ペプチド性侵害受容器でTACANを欠損させるマウスを作成したところ、このマウスでは機械的刺激による疼痛感知が低下していました。以上の結果から著者らはTACANが疼痛刺激に対するMSCの有力候補であると結論付けています。
これまでに報告されている痛覚MSCとしてはPiezo2がありますが(Murphy et al., Sci Transl Med. 2018 Oct 10;10(462))、Piezo2に関しては痛覚ではなく、触覚に関与する可能性もあるようです(Zhang et al., Cell Rep. 2019; 26: 1419-1431.e4)。今後これらのチャネルの役割がさらに解明されれば新たな疼痛治療戦略の開発につながるかもしれません。 
Cell. 2020 Mar 5;180(5):956-967.e17. doi: 10.1016/j.cell.2020.01.033. Epub 2020 Feb 20.
TACAN Is an Ion Channel Involved in Sensing Mechanical Pain.