少し偏った読書日記

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科学者になりたい君へ

2021-07-17 00:00:00 | 読書ブログ
科学者になりたい君へ(佐藤勝彦/河出書房新社)

著者は、宇宙物理学者。この人と米国のアラン・グースが、インフレーション理論の提唱者とされている。(共同研究ではなく、それぞれ独立に。)

インフレーション理論は、初期の宇宙が指数関数的に急膨張した、という理論。ビッグバン宇宙論の矛盾の多くを解消できることと、宇宙マイクロ波の観測結果から、まず間違いないと考えられているが、ノーベル賞をもらえる見込みはない。2020年には、ようやくブラックホールが受賞対象となったが、ペンローズ氏とともに特異点定理を発見したスティーブン・ホーキング博士は間に合わなかった。著者が存命中に、インフレーション理論が実証される見込みはないだろう。

この本は、世界的な宇宙物理学者として活躍した著者が、自らの生涯を振り返りつつ、科学者を目指す若い人へのメッセージを綴ったもの。読書感想文コンクールの課題図書にもなっている。

この人には多くの著作があるが、読みごたえがあるのは、『宇宙はわれわれの宇宙だけではなかった』で、インフレーションの過程では必然的に、無数のこども宇宙が発生することを解説している。最先端物理学では、いくつものバージョンの多元宇宙論が提唱されているが、そのはしりである。

で、最後に付け加えると、この人は香川県出身で、県人としては、空海に並ぶくらい、すごい人ではないかと思う。


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