少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

〈磯貝探偵事務所〉からの御挨拶

2022-11-05 07:00:00 | 読書ブログ
〈磯貝探偵事務所〉からの御挨拶(小路幸也/光文社)

図書館で装丁とタイトルがちょっと気になって借りてみた本。

読みだすと、謎の提示と解明のための手順が、過不足のない端正な文章で軽快に進められる、その心地よさに魅せられた。元刑事の探偵と大学生の助手という2つの視点からの叙述が交互に現れるが、その趣向が物語の展開に生かされているのもよかった。

作中でしばしば1年前の火災についての言及があるが、そのてん末は、前作『〈銀の鰊亭〉の御挨拶』で描かれていることがわかる。つまりこの本はシリーズ物で、私は読む順番を間違えたらしい。

しかし、こちらを先に読んでも特段の支障はなかった、と思う。すぐに前作も読んだが、やはりこちらを紹介することにした。読後感が、こちらのほうが少しよかったかな。

2つの作品に共通するのは、すべての状況を理解したうえで、つきつめて考えていくと、必然的にこういう結論にいたる、というタイプの謎解きであること。すべての状況、というのは、証拠や動機やアリバイだけではなく、探偵役や容疑者の人間関係や性格なども含むので、事件が解決してすべてよし、ではなく、主人公たちもその余波を大きく受けることになる。

だからシリーズ化は難しかろうと思うのだが、2冊出たということは、3冊目を期待してもよいのだろうか。