少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

図書館島

2022-08-06 07:00:00 | 読書ブログ
図書館島(ソフィア・サマター/東京創元社)

久しぶりの本格ファンタジー。

原書は"A STRANGER IN OLONDRIA”で、内容も、オロンドリア帝国を旅する物語。だから、『図書館島』というタイトルも、それに合わせた装幀も、すこしずるいと思う。本好き、あるいは図書館好きは、つい、惹かれてしまう。

ついでにもうひとつ、苦言というよりは、読みたい人への警告。この物語のために作者が作った造語や、地名や人名などが多くて、なかなかペースがつかめない。(巻末に用語集がある。)こういうときは、筋がなかなか頭に入ってこなくても、ともかくページをめくることにしている。

辺境の島で育った少年は、異国の家庭教師を通じて書物になじみ外界にあこがれ、父の死後、帝都に旅立つ。途中で出会った不治の病の少女とのかかわりから、宗教的な争いに巻き込まれ、遠く世界を旅することになる。風変りではあるが、旅とロマンスの物語だと思えば、少しは見通しがよくなるかもしれない。物語の中に多くの詩や物語が埋め込まれており、世界幻想文学大賞や英国幻想文学大賞を受賞している、というのも、まあ、理解できなくはない。

夏は、こういう歯ごたえのある読書に向いている。確か15歳の夏、冷房のない部屋で、『カラマーゾフの兄弟』のページをめくり続けたことを覚えている。