少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

白銀の巫女

2021-08-07 06:00:00 | 読書ブログ
白銀の巫女(乾石智子/創元推理文庫)

5月下旬に紹介した『赤銅の魔女』に続く「紐結びの魔導士Ⅱ」。

前作では、いわゆる旅の仲間が紹介されつつ、物語の大きなテーマが提示される。

旅の仲間は、まず、隣国からの軍の侵入によって館を捨てて西に逃げる紐結びの魔導士の一行3人。軍の魔導士が、館に埋葬された邪悪な魂を呼び覚まして主人公を襲わせる。「拝月教」の巫女で幻視の力を持つ女性(この人が白銀の巫女)が、予知した災厄を防ぐため、主人公に加勢する。逃げていった先の村には星読みの少女(この人が赤銅の魔女)がいて、古い予言を読み解こうとしており、成り行きから行動を共にすることになる。それに、村の若者(抜けない剣を抜いてしまう役回り)や、ウィダチス(動物に変化する魔法)の魔導士らが加わる。

大きなテーマは、まず、主人公を襲う邪悪な魂の顛末。これが前座で、真打ちは、千五百年前にかけられた、魔女の呪い。

この作品では、一行は魔女の呪いの真相を探りつつ、軍との戦いにも対処する。主人公は、赤銅の魔女とともに、邪悪な魂との対決の場に飛び込んでいく。一方、白銀の巫女は、途中からある意図をもって別行動をとる。

物語は主人公の一人称で語られるが、白銀の巫女の視点から三人称で語られる部分もあり、彼女の真意は、この巻では隠されている。ともかくすべては最終章で、ということだ。

この作品の最大の魅力は、さまざまな魔法使いがそれぞれの闇を抱えながら、生きいきと暮らしている作品世界そのものにあるから、このくらいの内容の紹介は大丈夫かなと思っているが、ネタバレと感じたとしたら、ごめんなさい。