少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

永遠のおでかけ

2021-05-01 07:00:00 | 読書ブログ
永遠のおでかけ(益田ミリ/毎日文庫)

この人も、短い期間で2冊目を紹介することになった。本屋で新しい文庫を見かけたものだから。

叔父さんが死んだ話から始まり、1年もたたないうちに父親の具合が急に悪くなる。やがて父を見送り、ふとした折に父を思い出して・・・

父親の死の前後を綴ったエッセーである。21章からなるが、気になるのはそれぞれの章が書かれた時期のこと。エッセーはよく、雑誌などに連載されたものが、ある程度まとまると単行本として出版される。もしこの本が、そのような形で現在進行形で書かれたものならば、そんな作業ができる人の頭の中はどうなっているのだろう、と思った。

(現在進行形のエッセーといえば思い出すのが、町田康氏の『猫にかまけて』に始まる猫エッセー。あまりに痛ましすぎて、2冊目まで読むのが精いっぱいだった。そういえば、この人もエッセーしか読んだことがない。)

文庫では、最後の1章だけ、少し遅れて書かれたこと以外は分からないので、調べてみると、文庫になる前の本は書きおろしで出版されていた。(しかし、筆者が現在進行形で書いていた可能性は否定できないが・・)

と、余計なことを書いたが、作品そのものは、この人の良質な部分がにじみ出ており、エッセーとしての代表作、と評されてもおかしくないと思う。