ブリットの休日

大好きな映画や小説の感想や日々の他愛ない話と、
聴神経腫瘍と診断された私の治療記録。

首筋に何かが・・・

2014年06月10日 | 日記・エッセイ・コラム

 会社帰り、ほぼ満員の電車の中での出来事。

 発車時間ぎりぎり、なんとか電車に乗り込めた。

 車内はかなりの人で、ちょっとかき分けるようにして中に入り、自分のポジションを確保する。

 ホームまでちょっと走ったので、車内の人ごみの熱気も併せて、なんだか蒸し暑い。

 気を取り直して、先日買ったばかりの文庫本、太宰治の「津軽」を読む。

  しばらくすると、暑さのせいなのだろうか、首筋がなんだかムズムズしてくる。

 何か嫌な予感がしたので、首筋後ろを左手でシュッと払ってみる。

 目の前に何か黒い物体が、床に落ちるのが見えた。

 ちょうど入口ドアの溝のあたりに落ちた黒い物体が、見るとなにやらもぞもぞ動いている。

 んん?足が見える、む・・・虫だ。

体長約3cmぐらいの丸くて黒い虫だ。

 えええ!!まさかゴキブリか?いやいやコガネムシのように見えるがよくわからない。

 思わず小さく「マジか」と息で喋る。

 ずっと自分の首筋にこんな大きな虫がへばりついていたのかよ。

 シャツの襟でもない、肩でもない、首にじかについていたのかよ。

なんだか止まっていただろう首筋のあたりがチクチクしてくる。

おいおい、痒くなっちゃうんじゃないだろうな。

まさか卵を産み付けられちゃあいないだろね。

映画の見過ぎだろう。

首筋の違和感を感じつつも、床にもぞもぞと動く虫に目は釘付けだ。

私の目の前に立っていた女性も、その虫を目で追っているようだ。

っと、何を思ったのか、その虫が床を這って私の足元に近づいてくる。

慌てて足で虫を払いのける。

1mほど遠くへ床を滑って行った虫は、今度は別の近くにいた50歳くらいのおじさんの足元に近づき、なんと靴を上がり左足のズボンの裾から膝のあたりまで登っていく。

そこで初めておじさんは虫の存在に気が付いたらしく、右足でこそぎ落とそうとする。

 なんとここで落とされそうになった虫が飛んだ。

 ひざ上あたりの高さを飛行したので、ほとんどの人が気が付いていなかったが、飛んでいった方向の人ごみがざわつく。

「もっと遠くへ飛んで行け~! 」

みると周辺の人がみんな足元をキョロキョロしている。

さあ、どこに行っちゃったんでしょうねえ。

 しばらくすると何事もなかったように、車内は平穏な空間にかえる。

電車を降りた後も、首筋にみょう~な違和感を感じながら、私の真後ろに立っていた人は、私の首筋にじかに張り付いていた虫をどんな気持ちで眺めていたんだろうかと、考えてしまった。

「いやあ~、気持ちワル~」だろうか。

「おいおい、こっち飛んでくんなよ」だろうか。

それとも「こんな虫見たことないぜ」だろうか。

 まさか写真にとってブログにアップされてたりして。

 そんなことをいろいろ考えていたら、なんだか楽しくなってきて、歩きながら思わず笑ってしまった。