ブリットの休日

大好きな映画や小説の感想や日々の他愛ない話と、
聴神経腫瘍と診断された私の治療記録。

『猫侍』

2015年04月18日 | TV(ドラマ)

 日曜の朝、だらだらと過ごしたいところだけど、6時にしっかりと起き毎回見ていたドラマがある。

それが『猫侍』だった。

その『猫侍』がなんとこの4月からシーズン2がスターとしてるってんだから、やっぱり好評だったんだねえ。

私はまあテレビとかで可愛い猫を見ても、「ああ、可愛いなあ」ぐらいのテンションである。

そんな猫大好きっていうほどでもない私が、どういう訳かこのドラマは毎回欠かさずに見ていた。

 加賀藩の剣術指南役を務めていた程の剣豪である斑目久太郎(北村一輝)はリストラにあい、職探しに単身江戸にやってくる。

ただ剣術以外はとりえがないことに加え、顔は怖いし口下手ということで職にもつけず、貧乏な浪人生活を送っていた。

そこへひょうんなことから猫を斬ってほしいという依頼が持ちかけられる。お金のために一旦は猫を斬ろうとするが、斬れずに依頼人に内緒でその猫を家に持って帰ってしまう。思いかけず猫との生活が始まる。

黙って持って帰っちゃたことで、いろいろと事件が起こるんだけど、とりたててストーリーを追うというドラマではなく、ひたすら不器用な侍と猫ちゃんの関係を温かい眼差しで見つめていくって感じのドラマなのだ。

なんと癒し系時代劇なる新しいジャンルを確立している。

どんな時代劇だっちゅう話だが、ちょいちょい挟んでくる、玉之丞という猫のアップを見つめている自分の顔が緩んでるって自覚があるほど、この猫が可愛いのだ。

「わっ、私は猫が好きだったのか・・・」なんて、久太郎の真似をして喋ってしまうほど、癒されてる自分がいる。

 ただ、このドラマに登場する玉之丞を演じる?猫が、実は3匹いるということを知り驚いてしまった。

なんだか時々体が大きいな、なんて感じたことはあったが、まさか3匹を使い分けていたとは・・・、一生の不覚。

私の猫好きも大したことないというところだろう。

 さてシーズン2だが、第2話まで見た感想だけど、こりゃあいけませんぜえ、だんなあ。

なんか面白くしよう、笑わせようという余計な演出が入って、なんだか違う方向へ行っちゃってる気がする。

そんなくだらない笑いを求めてんじゃないんだよなあ。

オープニングの歌も騒々しくっていけねえ。

まあまだ始まったばかりだけど、どうなることやら。


新庄村の「がいせん桜」を観に行く

2015年04月15日 | おでかけ

 

 急に一日休みが取れ、さて今日は何をしようかと考えた。

そういえばどこかまだ桜が咲いてるとこはないかなあ、なんてダメもとで調べてみると、なんと今満開だという場所を発見。

そこが新庄村のがいせん桜。

なんでも旧出雲街道の宿場として栄えた新庄宿の街道の両側に、日露戦争の戦勝を記念して桜が植えられたとのこと。

天気もあまりよくなく、通勤途中などで目に入る桜の木の様子から、ネットでは満開とか書いてるけど、多分もう散ってるだろうなあなんて思いながらも、とりあえずあまり期待せず出かけることにする。

 車で走ること約2時間余り、近づいてくると、平日だがたくさんの車が駐車しているのが遠目でも見えてくる。

こんな遠くまで、やっぱりみんな来ちゃうんだよねえ、なんてぼやきながら、その駐車場に車を停める。

そしてその並んだ車の奥で、桜色に染まった通りに向かって歩き出す。

来る途中雨がぽつぽつと降ってたりしていたが、どうやら大丈夫のようだ。たくさんの人並みの両側に、さすがに散り始めのようだが、見事な桜並木が広がる。

やっぱり私も日本人だわ、なんてワクワクしながら桜の木を見上げ、高ぶる気持ちを抑え、ゆっくりゆっくりと歩いていく。

予想以上の人の群れに、これは土日だったらえらいことになってただろうな、なんてやっぱりどこへ行くにも平日に限ると、今日休めたことに感謝する。

齢を重ねるにつれ、わざわざ人ごみの中に行くことはないだろうという心の声に、抗いがたくなってきている私は、とにかく土日は出不精である。

 通りの真ん中あたりにある、昔脇本陣として使われていた木代邸の中を探索する。

土間を入ってすぐ右手に、チラシみたいなものを並べたテーブルの奥に座っていたおじいちゃんに、「勝手に入っちゃっていいんですか」と声を掛けると、「あっ、いいですよ、部屋に上がってもいいですよ」と答えてくれた。

見ると左手に広い畳部屋があり、みんな遠慮しているらしく誰も部屋には上がっていなかったが、ここは許可をいただいたんだからと、靴を脱ぎ上がりこむ。

黒光りする天井の梁、頭をぶつけてしまいそうな低い鴨居、囲炉裏のある座敷や風呂場を見てまわり、昔の大名行列で本陣に入れない侍たちが、ここで休んでいたんだろうなあ、なんて思いを馳せさせる面影は、歴史好きに至福のひとときを与えてくれた。

帰りの車の中、頭の中はなぜかずっと「猫侍」のテーマソングが流れていた。

テレビの見過ぎだろう(^^;)


三浦しをん『木暮荘物語』あらすじと感想

2015年04月05日 | 本(小説)

 「その女アレックス」で随分気分をブルーにさせられたので、今回は楽しい小説をと思い、三浦しをんの『木暮荘物語』を読む。

おんぼろアパートに暮らす住人たちのほのぼのした物語を期待してというか、ありがちな話なので軽い気持ちで読めるかなあ、なんて特に何も考えずに選んでみた。

三浦しをんさんなら、まだ「まほろ駅前多田便利軒」とか「舟を編む」とか読んでないので、こっちの方を読めばよかったんだど、とにかく「アレックス」のダメージが大きく、ページ数も少ないのを読みたかった(^^;)

 小田急線の世田谷代田駅から井の頭線の新代田駅方向へ歩いて5分ほどの住宅地に建つ、木造二階建ての古ぼけたアパート「木暮荘」。

ある日曜の昼下がり、203号室の坂田繭の部屋に来客を告げるブザーが鳴る。

彼氏と部屋でごろごろとしながらおしゃべりをしていた繭は、慌てて部屋着を身に付け、玄関のドアを開ける。

そこには元彼の並木がにこにこして立っていた・・・。

 アパートの住人の話がオムニバス形式で語られるんだけど、いきなり三角関係の話だったので、「アレックス」の後にいきなりこんなぬるい話かとちょっとがっかりしてしまう。

しかも繭はその関係がまんざらでもなく、現在交際している伊藤も特に怒るわけでもなく、並木は全くお構いなしで、挙句の果てに川の字になって寝るという暮らしになってしまう。

なんだかちょっと気持ち悪い。

続いての話は、木暮荘の大家である木暮である。

ここから俄然面白くなる。70を過ぎたおじいちゃんなのだが、病気で入院している友人のもとに見舞いに行ったとき、友人から「かあちゃんにセックスを断られた」と聞き、友人がそのまま亡くなったのを機に、激しい性欲に目覚めてしまうという話。

この話が抜群に面白い。その後も住人たちやかかわる人たちのほぼ下ネタがらみの話が続く。

中には天井に空いた穴から、ずっと女子大生の部屋を覗き見してるという、ほとんど変態のサラリーマンの話まである。

なるほど、今回はそういうお話か。

愛とつながりに翻弄される住人達。人とかかわりを持つことで生活が一変してしまう可笑しさと楽しさ。

そして人とつながるということの意味を、ヘンテコな住人達が語りかけてくる。

粘膜と粘膜をこすりあわせる行為と愛情は、別の感情ではないのか。

そんなとんでもな問いかけを、思いがけず恥かしげもなくストレートに突いてくる。

作品の空気感はハートフルっぽいけど、なんとも内容は生々しい。

少々かけ離れた世界に終始心はもやもやしたまま。奇妙な作品である。

 ただ登場人物たちを見ていると、本能が求めるものと心が欲するものとのギャップが人生を面白くし、そのギャップを克服することで人生は前に進めるんだなあ、なんてことを感じてしまった。

人生を楽しく生きるコツがここに描かれている・・・、かも(^^)


ピエール・ルメートル『その女アレックス』あらすじと感想

2015年04月04日 | 本(小説)

 “驚愕、逆転、慟哭、そして感動”

最近はハートフル系ばかりを読んでいたので、たまにはミステリーをと思い、Amazonランキングをみて選んだのが、ピエール・ルメートルの『その女アレックス』だった。

この作品30万部突破のベストセラーなんだけど、その紹介文がまたすごいのだ。

「このミステリーがすごい」や「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい」などなどいろんなミステリー部門の第一位となっていて、もろもろ合わせて史上初の6冠達成!だって。

どんだけ凄いんだっていうのでさっそく読んでみた。

 ヴォージラール通りのレストラン「モン=トネール」での食事を終えたアレックスは、ちょうどバス停にバスが止まったのを見つけ、足早に向かったが、不意に気が変わり、アパルトマンまで歩いて帰ることにする。

数メートル先で歩道に片輪を乗り上げて止まっている白いバンがいたので、アレックスは建物に身を寄せて通り抜けようとした瞬間、後ろから男に殴り倒され、あっという間に手足を縛られ車の中に放り込まれてしまう・・・。

 ここずっと癒し系をよって読んでいたせいなのか、とにかく文面があまりにも刺激的を通り越して残虐であり、読み終わった後はただやっと終わったという安心感、やっとほっと一息つけたという安らぎみたいなものを感じた。

内容については、文庫本の帯に「101ページ以降の展開は、誰にも話さないでください」、なんて書かれるので、とりあえずそこまでのあらすじ。

 拉致されたアレックスはある建物の冷たく暗い部屋で、狭い木の檻の中に裸で監禁されてしまうんだけど、この100ページほどのページ数を割いて語られるのは、ほぼその檻の中でもだえ苦しむアレックスの生々しい描写。

いつまで続くんだとうんざりするぐらいねちねちと語られていくだけで、早く次の展開に移ってほしいっていうストレスに、なかなかページが進まない。

そしてこの物語にはもう一人メインとなる刑事が登場するんだけど、数年前ある事件で妻を殺されていて、現場に復帰できずにいたカミーユという刑事の捜査状況が、アレックスの監禁のシーンと並行して語られていく。

そして何しろ驚愕と感動のストーリーだと、かなりハードルが挙げられた状態を故意に提供してくるので、101ページ以降は当然予想を遥かに超えた衝撃の展開が待ち受けている。

なにより本の帯にはもう一文、“その女が、世界を震撼させる”と、監禁されている女になんで震撼させられるのかという謎が、大きく立ちはだかる。

 徐々に解き明かされる真実は、最後まで読み進める原動力として、激しく読者を刺激し続けるが、ただ読み進めていくたびに味わされる、人間という生き物の中に脈打ち続ける、吐き気すら催す醜悪な血の味は、繰り返し気分を滅入らしていく。

これを面白い小説だと言えるのかわからないが、よくこんなえげつない話を作り出したものだと、作者の頭の中に広がる闇の世界にこそ驚愕させられる。

唯一の救いは、カミーユを部下としてサポートしていく、どこまでも誠実なルイと、どこまでも人間臭いアルマンの姿だけだった。

改めて文庫本のジャケットのイラストを見ると、よくこんな本を読んだなと自分に驚いてしまう。

人間平穏な生活が続くと、不意に刺激的な何かを欲するというか、血が求めてしまうんだなと、ふと考えてしまい、なんだかぞっとしてしまった。

 さあ、次は楽しい本を読もう!