十六夜の SORA から 夢が降ってくる

いつも全快で 愛と笑い 届けます
 ☆You'll never walk alone☆
~ RYO,IWAI ~

コバルトブルーの女神 第二章 Summer breeze3

2015-03-25 01:09:42 | SORAからの贈り物☆日記☆

22回目のコールで電話に出た海は、何時もと変わらない声で
何時もと違う『おはよう』を言った
毎朝の電話は3コール以上鳴らした事が無かったから
昨日の夜の桜と出会ってからの海の様子が気にかかった

予約していた店に着くと、海は桜の手を取って
『久しぶりだね』
まるで皆に聞かせたい様な大きな声で言うと、
『トイレ一緒に行こう』とひきつった(様に見えた)顔で、俺の視野から消えた
直ぐに追いかけたかったけど、ずっとうちのバンドを応援してくれている
ファンの子から、ライブの話と海の話(こっちの方が多かったな)を
矢継ぎ早に質問され、それどころでは無かった

暫くして、ふと背面のテーブルに目をやると、にこにこ顔で手を振る
海と、ベースの拓也がコロナビールを飲んでいた
“なんでもなかったのかな”
笑顔で手を振り返す俺をファンの子達に責められて、気がついたら
あっと言う間に2時間が経過し、解散となった
何時もの様にライブの後は、璃紅のキャラバンで皆ワイワイしながら
送って貰う為、早い順番で海が降りてしまい、あまり話せないまま
『バイバイ 今日は疲れたから明日の朝ね 光、おやすみ』
『おやすみ』
家に帰ってベッドに横になって何度も電話を見つめたけど、なんとなく
電話を掛ける勇気が無かった
勇気?俺は何を恐れているのだろう
店から気になっていたもう一つの理由 桜が直ぐに帰ってしまった事
二人はどんな知り合いなんだろう?

『おはよう 良く眠れた?』
いつもなら、一日の予定の話で直ぐに盛り上がるのに、とても静かに聞いた
『昨日、なんだか凄く疲れちゃって 初めてだったから一人で興奮しちゃったのかな』
どこか元気の無い声に聞こえる 気のせいなのか
『あのさ・・・あのぉ・・・そっ そうだ 俺って意外とモテルだろ』
何言ってんだ・・・俺

『桜ね 中学の時に少しだけ居た施設で一緒だったんだよ 懐かしかったな それだけだよ』
『そ そうなんだ 別に気にしてなかったけど・・・』
施設?なんの話???

何も聞き出せないまま、何も言えないまま
言葉を繋ぐってこんなにも もどかしくて難しいものだったかな
弱かった頃の自分に戻ってしまうのではないか
言いようの無い不安が胸を支配して行く
その時、海が電話の向こうで突然言い出した言葉の意味が理解出来ず、
聞き返してから後悔した
『ごめん、声小さかったかな 恥ずかしくて、今から光の所に行って良い?光の横で眠りたいの』

まったく俺は最低人間だ
言葉が見つからないだけじゃなく、張り裂けそうな胸がやっとの想いで
答えた台詞が『どうして?』
最低だ
でも何で口が勝手に開くんだろう
俺は何を言ってるんだ
『いや、あの えっと 何言って・・・』
戸惑う俺の言葉を小さな声が打ち消す
『光の彼女になりたい ちゃんと彼女になりたい 今が良いの、だから今から行くね』

究極のあほ面のまま、はっと気がついたら怒った様に受話器から聞こえる
“ぷーっぷーっぷーっぷー”
海が来る 今から?

昨日の夜から不安だった想いは何処かに消えていて、海が今から来る事の理由を探す為の
頭の中の探索隊は、ベッドに腰掛けたまま、何も出来ずに時を過ごしていた

二人の間に起こる今からの出来事
何が始まるのか
それとも何かが変わるのか
それとも何かが・・・何かが終わるのか?

あまり効かないクーラーの風が、いつもより冷たく感じていた




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