送り出しの心座長
送り出しのかずま座長。岡山の専属の美容師さん作の鬘らしい。
演目:マリア観音
浅草の掏り集団。その中の18歳の少年(かなさん)は
お侍さん(心座長)の懐を狙い、見つかってしまう。
そのお侍さんは、少年を諭し、小遣いをやり見逃してやる。
帰りがけ、またそのお侍さんの印籠を掏る少年。
少年は母と二人暮らし。よくない仲間と付き合いがあると、
岡っ引きが母に知らせる。
帰宅した少年が、一両小判を持っているのでどうしたのかと母が尋ねると
お侍さんからもらったと、帰り際そのお侍さんから掏った印籠を見せる。
印籠で、そのお侍さんが誰だかわかると母がいい、顔色が変わる。
その印籠は、まさしく少年の父親のものだったからだ。
その昔、母が芸者をしていたころお侍さんと知り合った。
お侍さんは家を捨て、母と一緒に暮らして2年のうちに息子が生まれた。
お侍さんは父親がなくなり、一旦実家へ戻る。跡取り息子である。
母は、自分がいては好きな人の出世の邪魔になると、地方に身を隠したが
江戸にもどってきて現在に至る。
その話を聞いて、印籠の主にどうしても会いたくなった少年、印籠をもって
家を飛び出す。
一方、掏り仲間はリーダーを決めるため奉行所の侍の屋敷に忍び込み、
一番いいものを盗んできた者をリーダーにしようと相談する。
いざ、ふたを開けてみるとご禁制のマリア像を持ってきたものがいる。
奉行所の役人が隠れキリシタン。それをネタに自分達は
これからやりたい放題だと喜んでいる。
少年としては、何とかしてマリア像を返してもらいたい。
仲間は、絶対に返してはくれない、ならば力づくでも取り返さねば。
少年と仲間との戦い。結果、3人を殺めてしまう。
家に帰り、母に事情を話す。
少年は漸く手に入れたマリア像とともにお侍の屋敷に向かう。
3人も人を殺めてしまった息子、母は自ら命を絶つ。
お侍の屋敷に着き、事情を話す少年。
自分にのためにそこまでしてくれた少年、本来なら死罪という所であるが、
島流しにして、そのうち返してやると約束する。
明日、裁きにかけるのだが今夜は母と二人で屋敷に泊まれと温情。
そうこうするうち、岡っ引きがやってきて下町で命を絶った者がいると報告する。
少年の母だ。名前からすべてのことを知る侍。
次の日、裁きは死罪。身内とそうでない者の差別はできないというのが理由。
裁きが決定して、人がいなくなった隙に、少年は舌を噛み切る。
少年の父である奉行所の役人は、あの世で三人仲良く暮らそうと少年を抱きかかえたまま
切腹する。 幕
流石、春陽座というお芝居である。
小柄で細身のかなさんの少年役は全く違和感がない。
殺陣も軽やか、この方はほんとに芸達者。
春陽座のお芝居で血糊を使われるのは珍しい。
少年の口から流れる血、白い衣装が血で染まる痛々しさは何ともやりきれない。
朝日劇場は舞踊ショーに至ってまでも撮影禁止なので、皆送り出しの時に写真をとらせて頂く。
シャッターチャンスは一度きり、ピンボケでも我慢、我慢。
たまには、他の劇場のようにゆったりと役者さんと話したいですわ~