ひとせのとびとび日記

仁瀬由深の個人ページです。

演者の道 ステップ11

2012年11月16日 22時05分51秒 | Weblog
こんばんは。
手はなまこが切れないくらい温かいのに、万年冷え性の私。
こたつを出してしまいました。
お尻に根っこを生やそう。日本文化ばんざい。

さて、ステップを進めたいと思います。

前回は「私は誰?」の補足と、「今はいつ?」を進めました。

今回も左脳編です。
スタニスラフスキーの質問は続きます。

「ここはどこ?」

こう質問が並ぶと記憶喪失キャラクターの定番の質問みたいですね(^^)
そうです。これは自分の知らない自分探しなのです。
冷静に正しくその姿と背景をスケッチしていきましょう。

スキャンにグレーゾーンがあれば自分の適当な「クセ芝居」で切り抜けなくてはいけなくなります。
言葉を憚らず言います。「クセ芝居」は「クソ芝居」です。
長い劇団仲間と馴れ合っていると、これを指摘できずにずるずると三流芝居を続けていることもあるでしょう。
クセが100パーセント悪いわけではありません。経験が浅ければそうなっていくことも致し方ない場合もあるでしょう。
ですが、「これ(クセ)でいっか」というもの作りに対する姿勢は「クソ」です。
クセと闘わなければ、成長も無い、新しいものも生まれない、つまらない演者になりはてていきます。
そしていつか仲間に飽きられ大事にされないので新しい仲間を探すようになり、お客様に飽きられ動員できなくなり、、、、そして自分も飽きたとき、そっと「才能の限界だ」と感じて、生活の苦しさにも追われる中で、夢をあきらめていくことになります。

なので!ひとせは癖は現場で容赦なく見つけてゴミ箱ポイです。
常に「今」「どう感じるか」に誠実に正直であればクセなんかなくなるのです!
舞台上で、またカメラが回り始めたとき、「必死に今、役を生きる」ことをすれば飽きられることは一切ありません!自分が飽きることもありません!そんな心のすき間はありません!

あ。グレーゾーンの話からかなり脱線してしまいました。

「ここはどこ?」については「今はいつ?」と同じで資料が必要です。
図書館に行きましょう。大いにぐぐりましょう。
また、資金や時間が自分の耐えうるものなら足を運びましょう。

国、県、町、施設、、、描かれているものについては全て知っておきましょう。

一流ホテル一幕ものであればオークラに行って見ましょう。
同じ宿泊施設でも渋谷の坂の上あたりのピンクなもの、片田舎の民宿、別荘、さまざまですね。
小屋入りしてからセットを見て、「ああ、こんな感じなのか」と初めて知るのでは遅いです。甘いです。
理想を言えば、演者の振る舞いでそこがどこなのか観ている者が分かってくるぐらいが望ましいです。演者が見ている空間、信じている空間をお客様も共に過ごすのです。
15年~20年くらい前までは裸舞台もたくさん試されていて、それが成立しているところも多かったです。
より演者の人間的感情にクローズアップするための裸舞台がいつの間にか「制作費ビンボー」の象徴のようになってしまったのは残念なことです。


さて、また脱線してしまいました。

質問を続けます。

質問は最も重要なものになってきます。

「私は、何を欲しているか?」

これは、役の劇的欲求(ストーリー上の要求)です。
これが無くてはその役に登場理由がなくなります。

「自分は何が欲しいのか?」
「なぜそれが欲しいのか?」
「それを手に入れるためにどんな障害があるのか?(障害となる人物はいるか?)」
「私はそれを手に入れるためにどんなことをするのか?」

この4つの質問はストーリーを(その役の)主観的に捉える大きな手段になります。

童話の桃太郎で言えば、上の質問はそれぞれ、
「自分は何が欲しいのか?」→「村の平和を欲していて」
「なぜそれが欲しいのか?」→「悪いことが許せなくて」
「それを手に入れるためにどんな障害があるのか?(障害となる人物はいるか?)」→「鬼が島の鬼を退治しなくてはいけなくて」
「私はそれを手に入れるためにどんなことをするのか?」→「キビ団子をエサに仲間を増やして、鬼退治に行く」

となるのですね。

脚色される場合はこの劇的欲求にまつわる部分をそれぞれ膨らませるとおもしろくなりますね(^^)

次のステップはまた質問を重ねます。
本日はここまでで~。(^^)

演者の道 ステップ10

2012年11月09日 22時40分12秒 | Weblog
こんばんは。
またまた「とびとび」になってまいりました。(^^;)
すみません。でも、粘り強く続けていくつもりですので、お許しを。

さて。。内容も濃いので、実践しながらだと読むほうもけっこう大変な気がします。

前回のカラーボールまでは分かっていただけたかなあ。。。
また折に触れて説明していきたいと思います。

さて、今回は左脳編に戻りましょう。

ステップ7で書き出した「私は誰?」の性格にまつわる部分をステップ8で「内側の(本当の)性格」「外側(本人が周囲にそう見せている)性格」とに立て分けてもらいました。ステップ9では、その内外に渡る性格を冷静に見つめながら、その性格に色をつけるとしたら何色か?を考えつつ、実際にその性格の色をエネルギーボールに入れて遊ぶ展開まで進めてきました。

もう一歩踏み込んで、ステップ7の「私は誰?」を深めましょう。
メソッドで重要視されるのは実は性格だけではありません。

「職業」です。
職業が性格や生活習慣、歩き方をはじめその人物の動きにまで、影響する部分は多大です。
自分の役の職業について調べましょう。可能であれば体験することもいいかもしれません。実際に取材してみてもいいかもしれません。
たとえば、コンピュータープログラムにまつわる仕事の場合、「目が悪い」「肩が凝る」
「小声」などなどエトセトラ。
工事現場にまつわる仕事であれば「(危険が伴うため)声が大きい」「筋肉がある程度ある」などなど。
女性でもフライトアテンダーと看護師では歩き方も空気も違います。
その人物の職業については深く調べましょう。無職も職業です。

台本上職業が書かれていない場合、苦戦を予想しましょう。

質問を進めます。

「今はいつ?」

年代は?時代背景は?季節は?朝?昼?夜?
ト書き上に書かれていると思います。

舞台の場合、演出家によっては、演出家が決めたり、わざと演出上ト書きと違う時間や時代を設定する場合があります。蜷川マクベスのように・・・
台本上では正確にどのような設定で書かれているか掴んでおきましょう。そうすれば、演出家がどういう面白さを狙って違う設定にするのか、感性の足並みをそろえる取っ掛かりになります。

また、映像の場合は時系列をはっきりと掴んでおくことで、迷子にならずにすみます。

役作りの手助けになることもあるでしょう。職業にからめて見れば、仕事前なのか、仕事後なのか、また起床後どのくらいの時間かが大きく役に影響する場合もあります。

歴史ものであれば、背景を調べなければなりません。これは舞台の場合は出演者が情報を集めあってさらに演出家とも共有するべきでしょう。演出家や指導者は演者たちよりもより深く時代背景を知っていなくてはいけません。
特に大きく知りたいのはその時代の人間同士の距離感。たとえば、恋人同士はどのくらいの距離に立つか。親子は?友人同士は?(←これは時代や国を超えて共通してるかもしれません)

着るものはどんなものか。生活習慣はどうなっているか。(これは別の質問「ここはどこ?」にも絡んできます)禁忌や喜ばれるものは?
さまざまな情報でその時代の空気そのものを吸っていきましょう。
最近はわざと現代風にしている時代劇も多いですが、そろそろその描き方も古びてきて、
また骨太な時代物が好まれる波が来る気がします。(ひとせ個人の考えですが)

さて、今日はここまでにしたいと思います。
次回は再び左脳編で質問を進めていきます~。


演者の道 ステップ9

2012年11月02日 22時16分37秒 | Weblog
こんばんは。家族サービスと社会活動的母業に勤しんでおりました。
気合を入れて臨んだディズニーハロウィンは意外と仮装が少なく、ちょっぴり期待はずれ・・・みんな仮装してるぐらいに思ってました。(ていうか、仮装がマナー?くらいに・・・)
そんな中、女装プリンセスだけはちょっと、、む~ん(><;)オエ。
ミッキーのチュウをもらって口直し。

さて!気を取り直して、演者の道その9、「カラーボール」です!

さあ、この「カラーボール」、ひとせのレッスンや演出を受けたことのある俳優さんは耳にタコができるくらい本番まで何度も言われます。
基本から応用まで使い続けるカラーボール、ぜひ体得してもらいたいのです。
そして、指導者はカラーボールを深く理解し、ぜひ活用してください。
役の研究段階でこのカラーボールを演者に掴ませることができれば、理屈っぽい演者の口を封じ、意思疎通の難しい演者と思う以上の共通イメージを持つことが出来ます。

今日は、右脳編です。

実験、体感から始めましょう。
ウォーキングからエネルギーボールを作るところまでは今まで通りです。ついでにエネルギー遊びをいくつかやりましょう。一つ新しい遊びも紹介しておきます。

自分の心の中に決めたメンバーを、指導者が手をたたくのをきっかけに、「立ち止まって、見る。」指導者が解除の指示を出すまで、対象を変えず、見続けます。どんどん視線を送り続けます。相手が、自分の視線で振り向くくらい、強烈な視線を送りましょう。
また、自分は今どの辺りから、また、何人から見られているのか、「見られる視線」を感じながら視線を送り続けましょう。
「見る」という行動は「自分が選んで起こす行動」です。
実際の台本のストーリー上でも、全ての登場人物はある「動機」にしたがって登場し、行動します。一見のらくらして何の目的も無いように描かれていても、必ず理由があってそこにやってきて、物語に絡んでいるはずです。また、台本はそう描かれていなければいけません。
その役の「目的」です。おっと。思いもかけず、スタニスラフスキー9つの質問のうちの一つが出てきてしまいました。
「私は何を欲しているか?」
それを明確に見つけ出すのは左脳のレッスンで行います。
この「見る」遊びは、自分が強烈な欲望(「見たい」という気持ち)を持って行動(見る)を起こした場合、自分の中でどんな変化が起きるのか、体はどう動きたくなるのか、気持ちはどうなるのか、また相手にどういう影響を与えるのか、単純な形で体現しながら疑似体験していくものです。

さあ、見て。見て。これ以上、見れないところまで見続ける。
指導者は演じ手たちのここまでの高まりを認めたら「見る」行動を解除し、ニュートラルウォーキングに戻します。
ニュートラルウォーキング→見る→ニュートラルウォーキング→見る・・・
これを何度か繰り返したら、今度は「見る(look)」が高まったところで、「ムーヴ」を入れてみましょう。ムーヴとは、実際に自分の中に起きた感情のままに動いてみることです。相手に対してどうしたくなるのか。
注意点は二つ、1.触ってはいけない、2.しゃべってはいけない。
さあ、演じ手はどう動くでしょうか。
面白いことに、ブレイクまでの時差はあれど、今までどの稽古場でもみんな同じような行動をとり始めます(^^)そして笑いが稽古場にあふれます。

さて、遊びが充分演じ手の柔軟性を引き出したら、「カラーボール」に入ります。
ルールは簡単です。エネルギーボールに色を入れるだけです。
最初は「赤」「青」「黄」と、違いを感じやすい原色がいいでしょう。
指導者の指示で、色を入れてみましょう。
このとき、エネルギーボールと一緒で、頭で考えず、「感じる」ことが大事です。
ある、と感じるエネルギーボールを「赤い」と感じたとき、自分の中にどんな変化が起きるか。ムーヴメント。(指導者が演じ手に「ムーヴメント」と声かけするときは、「自分の中の変化を感じて」という意味だと統一しておきましょう)

指導者は、ニュートラルなエネルギーボールで歩いている演じ手に明らかな変化を見て取ることができるでしょう。
一つの色を終わらせるときは、一度ニュートラルに戻してから次の色を指示します。
慣れてきたら、色から色へ移ってみましょう。
演じ手は色が変わるたびに、エネルギーを消耗することに気付くでしょう。
誠実に指導者の指示に従い、ムーヴメントしているからです。

さて、このカラーボール、「見る(look)ゲーム」と一緒で、そのうち、自分の好きな色を自分で決めて歩かせ、お互い演じ手同士で色当てゲームができるようになります。
そこまで稽古が進めば、演じ手は「俳優がその時何を感じているかが演技の上で一番大事なものである」ということを身を持って知ることになっていることでしょう。
それは仲間だから分かるのではないのです。
お客様は、全てを観て取るのです。

このカラーボールは前回までやってきた性格部分と合致させて使います。
前回、「内外」をどう捉えるかというところまでは説明していませんでした。

さあ、ここから左脳作業です。

たとえば・・・
内→恥ずかしがりや
外→怒りんぼう
に見せている人の場合。

すご~く冷静にこの人はどういう人なのでしょう。
実際にはもっと他の内外が沢山出ています。
指導者は自分の考えや答えをすぐに与えずに、「これは何だろう?」「どういう人なんだろう?」とクエスチョンを投げ、俳優自身が答えを出すのを待ちましょう。

え~、クッキング番組のようにここは先にクエスチョンして、答えを出したとして、「ひねくれモノ」と答えが出たとしましょう。
ひねくれものを演じやすい色は何でしょう?このソースだけではまだ色は決められませんね。たとえば、他にも「クールに見せている」「切れ者」などあったとして。
この役を「青」と決めてやってみたらどうでしょう?

クールで頭の良いひねくれものを青いカラーボールを持って演じる。

クールで青いヤツが、恥ずかしい時ほど怒っているように見せる。

役にふくらみが出てきました。指導者もダメ出しをしやすくなります。
恥ずかしがって怒るとき、その怒り方も青と赤では違います。
ここまでウォーキングなどメソッド稽古をしてきて、ムーヴメントの練習をしていても
青い怒り方が出来ず、何度も同じダメだしをしなくてはいけない場合、
その俳優は「クセで演じている」か、「自分の先入観で演じている」かでしょう。
紋切り型で演じようとしているものは止めさせなければいけません。
紋きりは臆病な演じ手の専売特許です。
泳げる人の浮き輪は外しましょう。おぼれるかもとおびえているのは本人だけです。
また、泳げることを知って喜び感動するのも本人です。

さて。この「カラーボール」、掴むまでが大変です。また、展開もあります。
色は曖昧な中間色はのぞましくありません。
くっきりとした色がよいでしょう。
くっきりした色をつかめるまで役を読み深めましょう。書き出しながら。脱線はいけません。想像もいけません。本の上で書かれている情報だけで、考えましょう。
指導者も共に頭をひねって、つきつめていきましょう。
これは、読み合わせの段階でやる作業です。

さあ、がんばっていきましょう。
まだステップは始まったばかりです。

では、今日はここまで♪